オリンピックの野球競技 歴史

オリンピックの野球競技

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 14:54 UTC 版)

歴史

オリンピックにおける野球競技は、1904年セントルイス大会公開種目として実施されたのが初めてである。その後1912年ストックホルム大会1936年ベルリン大会1956年メルボルン大会1964年東京大会1984年ロサンゼルス大会1988年ソウル大会で公開種目として実施されている。なお、1952年ヘルシンキ大会では、野球が開催国・フィンランドで発展した競技であるペサパッロが公開種目として実施されている。

1992年バルセロナ大会では正式種目として採用され、以後2008年北京大会まで5大会連続で実施された。しかし、2012年ロンドン大会では、野球の世界的な普及率が低いこと、女性の同一競技がないことなどを理由としてソフトボールとともに正式種目から除外され[3](後述)、同様の理由で2016年リオデジャネイロ大会でも実施されなかった。2021年東京大会では正式種目にならないことはIOC理事会で決定したものの、開催都市が追加できる追加種目として実施されることがIOC総会で決定した。2024年パリ大会では再び除外されることが決定した一方[4][5][6]2028年ロサンゼルス大会では、開催都市提案の追加種目として開催が決まっている[7][8]

正式種目除外

夏季オリンピックの肥大化という現状にIOCは危機感を募らせ、2002年にオリンピックプログラム委員会が、近代五種競技とあわせ、環太平洋地域の特定地域以外では盛んに行われていない競技であるという理由で野球ソフトボールに対して正式種目からの除外を勧告、その動きを受けた日本野球機構はIOCのジャック・ロゲ会長宛てに嘆願書をIOCに送付した[9]。同年、メキシコで行われたIOCの総会では五輪競技としての存続を決める投票を実施したが、当時の28競技で除外された競技はひとつもなかった。

しかし、2005年7月8日にシンガポールで行われたIOCの総会で、現行の28競技を対象にジャック・ロゲ会長と欠席した理事3人を除く116人のIOC理事の投票で再び五輪競技としての存続を決める投票を実施。過半数の賛成票を集められなかった野球ソフトボール2012年ロンドンオリンピックからの除外が決定した。

その後、2006年2月のIOC総会でソフトボールと共にロンドンオリンピックでの正式種目復帰を求め再投票を実施するよう緊急動議が出されたが、「再投票を実施するか否か」という投票で過半数を獲得できずに、この時点でロンドンオリンピックでの除外が最終決定した。

ただ、日本ではプロとアマで構成されている全日本野球会議が「2016年の野球競技復活」を目標に掲げ、早稲田大学野球部(当時)の斎藤佑樹東北楽天ゴールデンイーグルス田中将大を起用したプロモーションビデオを製作して球場で流すなどの活動を行っていた[10]

しかし、2009年8月13日のIOC理事会では、理事15人の無記名投票の結果[11]、ソフトボールとともに落選が決定した。

2005年のIOCのレポートでは、国際野球連盟は野球が普及していない地域の人々に対して多くのアピールができたはずのなのに努力を怠っていたこと、組織としてこれからの具体的なプランを欠いていたこと、オリンピックの収入に高く依存している(56.9%)こと、過去のオリンピックや世界大会ではテレビ中継やテレビ報道する国が少なく、放映権も売れていないこと、役員に女性がいないこと、ドーピングの問題、MLB選手参加の問題、そして開催地の負担が大きくなりえること、以上のことが指摘されている[12]

復帰活動

野球の五輪復帰を目指す国際野球連盟は、以下の改善やアピールを行っている。

  • 除外の理由の一つとして女子種目の増加を目指すIOCの方針に反して女子種目が盛んでないことがあった野球が女子が盛んなソフトボールと競技および国際競技連盟を統合、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)[13]を結成し、男女のアンバランスを低減した
  • 統合した競技の名称を「ダイヤモンドスポーツ」とする案もあったが、2020年7月現在、実施されていない
  • 野球とソフトボールの会場共用
  • 開催期間を5日間もしくは6日間に短縮[14]
  • 準決勝以降のMLB選手の参加[1]
  • 7回制導入の検討[15]
  • WBCおよびWBC予選、IOC関連のイベントでの国際的アピール

国際野球連盟の収支健全化も課題であるが、失ったオリンピック収入分を期限付きではあるもののMLBが補い、またWBCの収入の一部を受け取っていたりと、今度は近年グローバル展開を推し進めるMLBからの援助や収入に依存するという形になりつつある。


  1. ^ a b 五輪野球に大リーガー出場案 IBAF、準決勝以降限定 朝日新聞デジタル - ウェブ魚拓
  2. ^ “大リーグの主力選手、五輪参加へ 28年ロス採用で世界連盟”. 共同通信. (2023年10月13日). https://nordot.app/1085532616694104737 2023年10月17日閲覧。 
  3. ^ 競技紹介:野球 - 日本オリンピック委員会(JOC)、2021年8月5日閲覧。
  4. ^ IOC Executive Board charts the course for future Olympic Games”. Olympic.org (2017年6月9日). 2019年8月25日閲覧。 “the Executive Board approved the overall composition of the sports programme for the Olympic Games 2024 to include all 28 sports on the programme of the Olympic Games Rio 2016.”
  5. ^ BREAKING, SKATEBOARDING, SPORT CLIMBING AND SURFING PROVISIONALLY INCLUDED ON PARIS 2024 OLYMPIC SPORTS PROGRAMME”. IOC (2019年6月25日). 2019年8月25日閲覧。 “After today’s vote by the IOC Session, no further sports can be put forward for inclusion on the sports programme of the Olympic Games Paris 2024.”
  6. ^ “野球・ソフトと空手、候補外=ブレイクダンス提案へ-24年パリ五輪正式種目追加:時事ドットコム” (日本語). 時事ドットコム. https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022101133 2019年2月21日閲覧。 
  7. ^ "IOC Session approves LA28's proposal for five additional sports" (Press release) (英語). International Olympic Committee. 16 October 2023. 2023年10月16日閲覧
  8. ^ Baseball and softball confirmed as part of Olympic Games Los Angeles 2028 sports programme” (英語). World Baseball Softball Confederation (2023年10月16日). 2023年10月16日閲覧。
  9. ^ 「野球機構、嘆願書を送付 3競技削減する提案で」共同通信
  10. ^ 「復活へマー君と佑ちゃんが初の競演 熱く語ります」毎日新聞 2009年3月18日
  11. ^ ソフトは最終投票で落選=IOC理事会 時事ドットコム(時事通信社) 2009年8月14日
  12. ^ OLYMPIC PROGRAMME COMMISSION REPORT TO THE 117TH IOC SESSION
  13. ^ 五輪復帰への統合団体 名称は「世界野球ソフトボール連盟」 スポニチ Sponichi Annex - ウェブ魚拓
  14. ^ 野球・ソフト:組織統合で五輪復帰へのチャンス 毎日jp(毎日新聞) - ウェブ魚拓
  15. ^ 7回制を検討 2020年五輪復帰へ試合時間短縮 MSN産経ニュース - ウェブ魚拓





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オリンピックの野球競技」の関連用語

オリンピックの野球競技のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



オリンピックの野球競技のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのオリンピックの野球競技 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS