エルサレム 人口

エルサレム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 09:40 UTC 版)

人口

エルサレムは19世紀後半よりユダヤ人の方がアラブ人よりも常に人口で上回っており、1949年にエルサレムが東西に分割されるとその傾向はさらに強まった。東エルサレムは経済の伸び悩んだヨルダン領にあった上、首都はアンマンに置かれてエルサレムの開発は進められず、人口は停滞した。一方、イスラエル側の西エルサレムは独立後すぐに首都が移され、イスラエルの政治の中心として大規模な開発が進められたため、人口が急増した。1967年に東エルサレムがイスラエルに占領されると多くのアラブ人がエルサレムから流出し、その差はさらに開いた。1967年にはユダヤ人はエルサレムの人口の74.6%を占め、アラブ人は25.4%に過ぎなかった。イスラエルは占領後旧ヨルダン領にあった28の地方自治体をエルサレムに統合したが、その地区にはユダヤ人の大規模入植地が建設され、多くのユダヤ人が流入した。しかしエルサレムのアラブ人の出生率は高く、ユダヤ人入植地の大量建設をもってしても人口比率を増やすことはできなかった。2007年には、エルサレムのアラブ人の割合は34%にまで伸び、ユダヤ人の比率は66%にまで落ちた。このままの人口推移が続けば、2035年にはエルサレムの人口比率はユダヤ人とアラブ人がほぼ同数になると考えられている[18]

また、エルサレムはユダヤ教の中心都市であるため、国内比率に比べてユダヤ教超正統派の占める割合が非常に高く、エルサレム人口の3分の1を占めており、なお増加中である。

首都問題

西エルサレムに建てられた外務省庁舎

エルサレムは、古くより三つの宗教の聖地として栄えたが、経済的には必ずしも重要な位置を占めてきたわけではない。そのためエルサレムを領土に収めた代々の国家のうち、エルサレムを首都としてきた国家はほとんどない。

古代のユダ王国や、十字軍国家であるエルサレム王国を除いては、エルサレムは一地方都市にとどまっていた。しかし宗教的には非常に重要な土地であり、イギリスの委任統治領時代に首都がおかれたこともあって、政治的重要性も増した。現在においても、エルサレムは、議会や首相府、中央省庁などがある政治と文化の中心であり、イスラエル最大の都市である。

しかし第二次世界大戦後、イスラエル建国・第一次中東戦争などによってパレスチナ問題が起こると、歴史的経緯により国家の正統性にも関わるエルサレムの領有問題も、にわかに浮上する。第一次中東戦争の休戦協定により、エルサレムが東西を分断された後、西エルサレムを占領したイスラエルは、1950年に議会でエルサレムを首都と宣言して、テルアビブの首都機能を西エルサレムに移転。その後、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが東西ともに占領し、1980年には、改めてイスラエル議会により、統一エルサレムはイスラエルの不可分・永遠の首都であると宣言するエルサレム基本法案を可決した。

イスラエルによる統一エルサレムの首都宣言に対し、国際連合安全保障理事会は「イスラエルの統一エルサレムの首都宣言は無効だとして破棄すべきものである」「エルサレムに外交使節を設立している国際連合加盟国は外交使節を、エルサレムから撤収させる」とする国際連合安全保障理事会決議478を可決し(アメリカ合衆国は拒否権を発動せずに棄権)、国際連合総会は東エルサレムの占領を非難し、その決定の無効を143対1(反対はイスラエルのみ、棄権は米国など4)で決議した。

1967年までは、13カ国の大使館が西エルサレムに置かれていたが、イスラエルによる東エルサレムの併合に抗議して、これらの国家も大使館を移転。一度は大使館を移転したものの、エルサレムに大使館を再び置いたコスタリカ(1982年から)とエルサルバドル(1984年から)も2006年に大使館を移転した。国連加盟各国は、イスラエル建国初期に首都機能があったテルアビブ大使館を集中して置いている[4][5]

1993年のオスロ合意では、エルサレムの最終的地位については、イスラエルとパレスチナが話し合って決めることとされた。

2009年欧州連合(EU)議長国のスウェーデンは、エルサレムをイスラエル、パレスチナ自治政府、両方の首都とするよう求める発議を行った。イスラエルはこれに反発し、EU加盟各国に抗議を行った。

アメリカ合衆国は、二大政党である民主党共和党は、党綱領でエルサレムをイスラエルの首都と認めており、1995年にアメリカ合衆国議会で、大使館のエルサレム移転を求めるエルサレム大使館法が可決・成立された。しかし、歴代のアメリカ合衆国大統領クリントンブッシュオバマ)は、大使館移転は中東和平実現の障害になるとの観点から、法律で認められた条項を根拠に半年ごとに実施を延期してきた。

2016年のアメリカ合衆国大統領選挙では「駐イスラエル大使館のエルサレム移転」を公約したドナルド・トランプが当選し[4][5]、2017年6月には前述の法案実施について半年延期したものの、同年12月6日には、エルサレムをイスラエルの首都と認定して、テルアビブにある大使館をエルサレムに移転する手続きを始めるよう指示したことを正式に表明した(エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認[19]。なおトランプは「エルサレムの最終的な地位については、イスラエルとパレスチナの当事者間で解決すべきで、米国は特定の立場を取らない」とした[20]

この決定の撤回を求める決議英語版が、2017年12月21日(日本時間22日未明)に開かれた国際連合総会で採択された(賛成128カ国、反対9カ国、棄権35カ国、欠席21カ国)[注釈 5]

2018年5月14日、アメリカ合衆国が駐イスラエル大使館を公式にエルサレムに移転した。これを受けてガザ地区とイスラエルの国境沿いでパレスチナ市民がデモを行い、イスラエル軍がパレスチナ市民61人を殺害した。2018年3月30日から5月19日現在までに、ガザ地区との国境において、118人のパレスチナ市民がイスラエル軍により殺害されている[22]

それぞれの態度(国連・EU・各国)

国連:1947年11月29日に合意された国連総会決議181「パレスチナ分割決議(パレスチナぶんかつけつぎ 、: United Nations Partition Plan for Palestine)」は、当時のパレスチナ問題を解決するために出された国連総会決議。この案は「経済同盟を伴う分割案(Plan of Partition with Economic Union)」と述べられ、イギリスの委任統治を終わらせアラブ人ユダヤ人の国家を創出し、エルサレムを特別な都市とすることとなっていた。1947年11月29日国際連合総会において、この案の採用と実施を勧告する決議が決議181号として採択された。

気候

エルサレムは地中海性気候に区分されており、冬に一定の降水があるが夏は日ざしが強く乾燥する。冬には1、2度の軽い降雪があるが、平均すると3、4年ごとにまとまったが降る。1月が1年で最も寒い月で、最も暑いのは7月と8月である。昼夜の寒暖差が大きいため、大抵は夏でさえ晩には涼しくなる。年平均降水量は590mm程度で、そのほとんどは10月から5月の間に降る。

エルサレム (1881–2007)の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
最高気温記録 °C°F 23.4
(74.1)
25.3
(77.5)
27.6
(81.7)
35.3
(95.5)
37.2
(99)
36.8
(98.2)
40.6
(105.1)
44.4
(111.9)
37.8
(100)
33.8
(92.8)
29.4
(84.9)
26
(79)
44.4
(111.9)
平均最高気温 °C°F 11.8
(53.2)
12.6
(54.7)
15.4
(59.7)
21.5
(70.7)
25.3
(77.5)
27.6
(81.7)
29.0
(84.2)
29.4
(84.9)
28.2
(82.8)
24.7
(76.5)
18.8
(65.8)
14.0
(57.2)
21.5
(70.7)
日平均気温 °C°F 9.1
(48.4)
9.5
(49.1)
11.9
(53.4)
17.1
(62.8)
20.5
(68.9)
22.7
(72.9)
24.2
(75.6)
24.5
(76.1)
23.4
(74.1)
20.7
(69.3)
15.6
(60.1)
11.2
(52.2)
17.5
(63.5)
平均最低気温 °C°F 6.4
(43.5)
6.4
(43.5)
8.4
(47.1)
12.6
(54.7)
15.7
(60.3)
17.8
(64)
19.4
(66.9)
19.5
(67.1)
18.6
(65.5)
16.6
(61.9)
12.3
(54.1)
8.4
(47.1)
13.5
(56.3)
最低気温記録 °C°F −6.7
(19.9)
−2.4
(27.7)
−0.3
(31.5)
0.8
(33.4)
7.6
(45.7)
11
(52)
14.6
(58.3)
15.5
(59.9)
13.2
(55.8)
9.8
(49.6)
1.8
(35.2)
0.2
(32.4)
−6.7
(19.9)
雨量 mm (inch) 133.2
(5.244)
118.3
(4.657)
92.7
(3.65)
24.5
(0.965)
3.2
(0.126)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0.3
(0.012)
15.4
(0.606)
60.8
(2.394)
105.7
(4.161)
554.1
(21.815)
平均降雨日数 12.9 11.7 9.6 4.4 1.3 0 0 0 0.3 3.6 7.3 10.9 62
湿度 72 69 63 58 41 44 52 57 58 56 61 69 58.3
平均月間日照時間 192.2 226.3 243.6 267.0 331.7 381.0 384.4 365.8 309.0 275.9 228.0 192.2 3,397.1
出典1:Israel Meteorological Service[23][24]
出典2:香港天文台より日照時間データ[25]

注釈

  1. ^ ジャ"ルー"サラム
  2. ^ (ヒエロ"ソ"リュマ)
  3. ^ イスラエルのネタニヤフ首相は「エルサレムは入植地ではない。我々の首都だ」との見解を示しており、入植地であること自体を認めていない[15]
  4. ^ イスラエル側は、パレスチナ人住居建設は当局の許可が必要と主張している。しかし実際にパレスチナ人の住居建設の許可が下りることは少なく、当局側は「不法」を取り締まっているというよりも、それを口実にパレスチナ人の住居を破壊している[17]
  5. ^ 反対にまわったのはアメリカの他はグアテマラホンジュラスイスラエルマーシャル諸島ミクロネシアナウルパラオトーゴであった[21]

出典

  1. ^ a b 総会、エルサレムの地位に関する国連決議の遵守をすべての国に要求”. 国連広報センター. 2024年4月30日閲覧。
  2. ^ Resolution 478 (1980)”. United Nation. 2024年5月1日閲覧。
  3. ^ معنى شرح تفسير كلمة (أورشليم)”. www.almougem.com. 2024年1月22日閲覧。
  4. ^ a b c d e f “米大使館、エルサレムに移るの?-ニュースを探るQ&A”. 時事通信. (2017年1月27日). http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012600552&g=use 2017年1月27日閲覧。 
  5. ^ a b c d e “米大使館のエルサレム移転、5月にも発表か 国際社会は警告”. CNN.co.jp. (2017年1月12日). http://www.cnn.co.jp/world/35094909.html 2017年1月27日閲覧。 
  6. ^ “イスラエル入植非難決議を採択 米が拒否権行使せず”. 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM24H0W_U6A221C1NNE000/ 2023年1月30日閲覧。 
  7. ^ “ガザでの衝突を受け、外務報道官談話”. Qnewニュース. (2018年5月15日). https://qnew-news.net/news/2018-5/2018051508.html 2018年7月11日閲覧。 
  8. ^ 国連総会、エルサレム巡り米非難決議 反対9・棄権35”. 日本経済新聞 (2017年12月22日). 2024年4月30日閲覧。
  9. ^ 臼杵陽 2009, p. 4-5.
  10. ^ Archeology of the Hebrew Bible”. www.pbs.org (2008年11月18日). 2023年11月5日閲覧。
  11. ^ Mazar, Amihai (1997-01). “Iron Age Chronology: A Reply to I. Finkelstein”. Levant 29 (1): 157–167. doi:10.1179/lev.1997.29.1.157. ISSN 0075-8914. http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1179/lev.1997.29.1.157. 
  12. ^ Mazar, Amihai (2005), Higham, Thomas; Levy, Thomas E., eds., The Debate over the Chronology of the Iron Age in the Southern Levant: Its history, the current situation, and a suggested resolution, Acumen Publishing, pp. 15–30, ISBN 978-1-84553-057-0, https://www.cambridge.org/core/books/bible-and-radiocarbon-dating/debate-over-the-chronology-of-the-iron-age-in-the-southern-levant-its-history-the-current-situation-and-a-suggested-resolution/7A7A08F6D7D48F5572D1D7777D649275 2023年10月22日閲覧。 
  13. ^ Kletter, Raz (2004). “Chronology and United Monarchy. A Methodological Review”. Zeitschrift des Deutschen Palästina-Vereins (1953-) 120 (1): 13–54. ISSN 0012-1169. https://www.jstor.org/stable/27931732. 
  14. ^ Finḳelshṭayn, Yiśraʾel; Silberman, Neil Asher (2002). The Bible unearthed: archaeology's new vision of ancient Israel and the origin of its sacred texts. New York: Free Press. ISBN 978-0-684-86912-4 
  15. ^ “「エルサレムは入植地ではなく首都」、イスラエル首相が言明”. AFPBB News. (2010年3月23日). https://www.afpbb.com/articles/-/2712203?pid=5527800 2020年7月8日閲覧。 
  16. ^ “バイデン米副大統領、中東和平交渉の進展を促す”. 世界日報. (2010年3月12日). オリジナルの2012年3月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120310160613/http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/100312-211053.html 2020年7月8日閲覧。 
  17. ^ “東エルサレムのパレスチナ人住居/イスラエルが破壊/和平交渉 再開の動き覆す/国際社会が非難”. しんぶん赤旗. (2010年7月15日). https://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-07-15/2010071507_01_1.html 2020年7月8日閲覧。 
  18. ^ “【図解】エルサレムの人口比率の変遷”. AFPBB News. (2007年11月26日). https://www.afpbb.com/articles/-/2317343?pid=2396522 2020年7月8日閲覧。 
  19. ^ “トランプ米大統領、エルサレムをイスラエル首都と正式認定”. ロイター. (2017年12月7日). https://jp.reuters.com/article/trump-jerusalem-1206-idJPKBN1E02Z5?il 2017年12月7日閲覧。 
  20. ^ “「エルサレムを首都に認定」トランプ氏が正式表明”. 日本経済新聞. (2017年12月7日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24356420X01C17A2000000/ 2019年5月19日閲覧。 
  21. ^ “米圧力、揺れた東欧や小国 エルサレム決議に棄権や欠席”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年12月23日). https://www.asahi.com/articles/ASKDQ6DJXKDQUHBI02N.html 2020年7月8日閲覧。 
  22. ^ “Gaza: Deux Palestiniens succombent à leurs blessures infligées lundi, nouveau bilan de 61 morts” (フランス語). 20 Minutes. (2018年5月19日). https://www.20minutes.fr/monde/2274059-20180519-gaza-deux-palestiniens-succombent-blessures-infligees-lundi-nouveau-bilan-61-morts 2018年5月21日閲覧。 
  23. ^ Long Term Climate Information for Israel” (2011年6月). 2012年5月4日閲覧。
  24. ^ Record Data in Israel”. 2012年5月4日閲覧。
  25. ^ Climatological Information for Jerusalem, Israel”. Hong Kong Observatory. 2012年5月4日閲覧。
  26. ^ 笈川博一 2010, p. 223.
  27. ^ 高橋正男 2003, p. 114.






エルサレムと同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「エルサレム」の関連用語

エルサレムのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



エルサレムのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのエルサレム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS