ces dとは? わかりやすく解説

シーイーエス‐ディー【CES-D】

読み方:しーいーえすでぃー

The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale米国国立精神保健研究所NIMH)が開発した抑うつ症状自己評価尺度

[補説] 過去1週間に「普段気にかからないことが気になった」「人並みのことはできると感じた」などの状態がどの程度持続したかという20の質問に対して、「まったくない」から「3日以上」までの4段階で回答し得点が高いほど抑うつ症状が強いと判定される


疫学研究用うつ病尺度

(ces d から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/22 21:34 UTC 版)

CES-D: Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)とは個人の抑うつの程度を評価するための自記式の抑うつ評価尺度である。1977年にLaurie Radloffにより開発された[1]。日本語訳は1985年に島悟らによって作成された[2]。現在CES-Dはうつ病の疫学調査、スクリーニング、治療の評価のために用いられている。比較的短時間で行うことができ(5分~10分)、診療報酬も認められているので(2025年現在で保険点数80点)日本の臨床現場でよく利用されている。CES-Dの検査対象は中学生以上である。

項目と選択肢 

CES-Dは抑うつ症状16項目とポジティブ感情4項目の総計20項目からなる抑うつ尺度である(詳しくは下記の表参照)。被験者は過去1週間に、これらの症状がどの程度あったかを、4つの選択肢、「ほとんどない(1日未満)」「少しある(1~2日)」「かなりある(3~4日)」「いつもある(5~7日)」から選択する。選択肢の得点は順に0点、1点、2点、3点となる。ポジティブ感情4項目は逆転項目なので得点が順に3点、2点、1点、0点となる。各項目の総スコアは0点から60点まで分布する。

得点と評価

欧米では総得点16点以上をうつ病スクリーニングのカットオフ値として推奨している論文が多く、16点以上で感度86%、特異度90%が報告されているが、論文によって感度と特異度のバラつきを認める[3]。日本人は欧米より点数が高いのでカットオフ値を19点にした方よいという報告がある[4]。(注意点を参照)

日本の一般人口におけるスコア

項目スコアの分布

2000年に厚生労働省CES-Dを用いたは保健福祉動向調査(対象32000人)を行った。これは日本で最初の抑うつ評価尺度を用いた一般人口に対する公的大規模調査であった。CES-Dの項目スコアの分布は下記の表のとおりとなった[5]。項目4,8、12、16はポジティブ感情であり逆転項目である。

日本人を対象とした過去一週間のCES-D項目スコアの分布(2000年)
項目 ほとんどない 1-2日 3-4日 5日-7日
1. 普段は何でもないことがわずらわしい 52.8% 34.2% 10.1% 3.0%
2. 食べたくない、食欲不振 71.9% 19.7% 6.7% 1.7%
3. 家族や友達からはげましもらっても気分が晴れない 72.3% 18.9% 5.8% 3.0%
4. 他の人と同じ程度には、能力があると思う 31.8% 19.4% 15.0% 30.8%
5. 物事に集中できない 53.7% 30.8% 11.5% 3.0%
6. ゆううつだ 52.8% 34.2% 10.1% 4.0%
7. 何をするにも面倒だ 47.1% 35.8% 11.2% 5.9%
8. これから先のことについて積極的に考えることができる 26.0% 31.1% 21.1% 21.7%
9. 過去のことについてくよくよ考える 55.6% 28.3% 11.6% 4.6%
10. 何か恐ろしい気持ちがする 80.7% 13.1% 4.2% 2.0%
11. なかなか眠れない 62.8% 23.1% 9.5% 4.6%
12. 生活について不満なく過ごせる 28.0% 32.2% 16.8% 23.0%
13. ふだんより口数が少ない、口が重い 66.7% 22.0% 7.7% 3.5%
14. 一人ぼっちでさびしい 78.1% 14.0% 5.0% 2.9%
15. 皆がよそよそしいと思う 81.5% 13.1% 3.7% 1.7%
16. 急に泣き出すことがある 91.5% 6.1% 1.7% 0.7%
17. 毎日が楽しい 18.3% 27.1% 27.0% 27.6%
18. 悲しいと感じる 74.0% 19.2% 4.8% 2.0%
19. 皆が自分をきらっていると感じる 82.6% 13.5% 2.7% 1.3%
20. 仕事(学業)が手につかない 72.5% 19.6% 5.1% 2.9%

抑うつ症状には頻度の高い症状もあればそうでない症状もある。例えば「6.ゆううつだ」という抑うつ気分を半数近くの人が週に1日以上認めている。一方「16.急に泣き出すことがある」という抑うつ症状の場合10%以下の人しか認めていない。

近年一般人口における抑うつ症状の分布は共通する数理モデルに近似することが報告された[6][7]。その一方でポジティブ感情の分布はそういった数理モデルに従わない[6]

下記のグラフは上記の表(日本人を対象とした過去一週間のCES-D抑うつ症状の頻度)の抑うつ症状の分布を線グラフにプロットしたものである。16項目の抑うつ症状の分布が共通するパターンを示している(矢印が示すようにすべてのグラフが「ほとんどない」と「少しある」の間の一点で交差し「少しある」から「いつもある」にかけて規則に従って収斂する)[7]

CES-D抑うつ症状の頻度の線グラフ

総スコアの分布

上記の保健福祉動向調査によるとCES-Dの総スコアの分布は下記の表のようになる。

日本人を対象としたCES-D総スコアの分布(2000年)
項目 0-5点 6-10点 11-15点 16-20点 21-25点 26-30点 31-35点 36-40点 41-45点 46-50点 51-55点 56-60点
頻度 14.9% 29.1% 28.2% 15.3% 8.7% 4.4% 2.3% 1.2% 0.5% 0.3% 0.1% 0.1%
累積頻度 14.9% 39.0% 67.1% 82.5% 91.2% 95.6% 97.9% 99.0% 99.6% 99.9% 99.9% 100%

欧米のうつ病のスクリーニングで使われるカットオフ値16点を用いた場合、人口の約33%が陽性となる。これは3人に1人の割合で陽性ということであり、スクリーニングとしての特異性が問題となる可能性がある。日本人に適していると言われているカットオフ値19点[4]を用いた場合、約20%が陽性となる。

注意点

ポジティブ感情項目に関する議論

CES-Dは抑うつ症状だけではなく、ポジティブ感情4項目を逆転項目として含んでいる。通常のうつ評価尺度はポジティブ感情項目を含まないのでその点は注意が必要である。CES-Dにポジティブ感情が加えられた理由は明らかでないが、CES-Dが作成された1970年代においてポジティブ感情の低下を測定することが抑うつのレベルを総合的に評価することにつながると認識されていた可能性がある。 しかしその後の心理学研究によってポジティブ感情と抑うつ気分は互いに独立した心理現象と考えられるようになった[8]。そういったこともあり近年作成された抑うつ評価尺度はポジティブ感情の項目を含まない。

日本人を対象とした適切なカットオフ値

欧米ではCES-Dのうつ病スクリーニングのカットオフ値として16点が推奨されることが多いが、日本人では19点が望ましいという報告がある[4]。なぜCES-Dではこういった議論が起きるかに関しては、前述のポジティブ感情の項目の影響が大きいと言われている[9]

日本人を対象にすると欧米人よりCES-D点数が高い傾向を認めるが、この違いの大半は抑うつ症状ではなく、ポジティブ感情のスコアの違いによると報告されている[9]。抑うつ症状に比べると、ポジティブ感情のスコアはその国の文化の影響を受けやすく、日本を含む東アジアでは欧米に比べてポジティブ感情のスコアが低い(CES-Dではポジティブ感情は逆転項目なので総スコアが高くなる)と報告されている[10]

関連項目

脚注

  1. Radloff, Lenore Sawyer (1977). “The CES-D Scale: A Self-Report Depression Scale for Research in the General Population”. Applied Psychological Measurement 1 (3): 385–401. doi:10.1177/014662167700100306. ISSN 0146-6216 2026年1月21日閲覧。.
  2. 島, ; 鹿野, 達男; 北村, 俊則; 浅井, 昌弘 (1985-06-15), 研究と報告 新しい抑うつ性自己評価尺度について, doi:10.11477/mf.1405203967
  3. Parikh, Rajesh M.; Eden, Dianne T.; Price, Thomas R.; Robinson, Robert G. (1989). “The Sensitivity and Specificity of the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale in Screening for Post-Stroke Depression”. The International Journal of Psychiatry in Medicine 18 (2): 169–181. doi:10.2190/BH75-EUYA-4FM1-J7QA. ISSN 0091-2174 2026年1月22日閲覧。.
  4. 1 2 3 Wada, Koji; Tanaka, Katsutoshi; Theriault, Gilles; Satoh, Toshihiko; Mimura, Masaru; Miyaoka, Hitoshi; Aizawa, Yoshiharu (2007). “Validity of the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale as a screening instrument of major depressive disorder among Japanese workers”. American Journal of Industrial Medicine 50 (1): 8–12. doi:10.1002/ajim.20403. ISSN 0271-3586 2026年1月22日閲覧。.
  5. 厚生労働省大臣官房統計情報部編『平成12年保健福祉動向調査』厚生統計協会、2000年。 ISSN 0915-1575
  6. 1 2 Tomitaka, Shinichiro; Kawasaki, Yohei; Furukawa, Toshiaki (2015). “A distribution model of the responses to each depressive symptom item in a general population: a cross-sectional study”. BMJ Open 5 (9): e008599. doi:10.1136/bmjopen-2015-008599. ISSN 2044-6055. PMC 4577953. PMID 26369801 2026年1月14日閲覧。.
  7. 1 2 冨高辰一郎『なぜ抑うつは指数分布に従うのか』2022年11月14日。 ISBN 978-4-7911-1104-6
  8. Diener, Ed; Emmons, Robert A. (1984). “The independence of positive and negative affect.”. Journal of Personality and Social Psychology 47 (5): 1105–1117. doi:10.1037/0022-3514.47.5.1105. ISSN 1939-1315 2026年1月22日閲覧。.
  9. 1 2 Iwata, Noboru; Turner, R.Jay; Lloyd, Donald A (2002). “Race/ethnicity and depressive symptoms in community-dwelling young adults: a differential item functioning analysis”. Psychiatry Research (Elsevier BV) 110 (3): 281–289. doi:10.1016/s0165-1781(02)00102-6. ISSN 0165-1781.
  10. Iwata, Noboru; Buka, Stephen (2002). “Race/ethnicity and depressive symptoms: a cross-cultural/ethnic comparison among university students in East Asia, North and South America”. Social Science & Medicine 55 (12): 2243–2252. doi:10.1016/S0277-9536(02)00003-5 2026年1月22日閲覧。.

参考文献

外部リンク



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