テトラトリコペプチドリピートとは? わかりやすく解説

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テトラトリコペプチドリピート

(TPRモチーフ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/08 04:55 UTC 版)

Tetratricopeptide repeat
識別子
略号 TPR_1
Pfam PF00515
Pfam clan CL0020
InterPro IPR001440
SCOP 1a17
SUPERFAMILY 1a17
CDD cd00189
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
PDB

1w3bB:89-122 1fchA:522-555 2fbnB:228-261 1p5qB:276-295 1qz2C:276-295 1ihgA:223-256 1iipA:223-256 1elwB:4-37 1wao2:28-61 1a17 :28-61 1elrA:225-258 2c2lC:27-60 1uzsA:114-147 1e96B:71-104 1hh8A:71-104

1wm5A:71-104 1kt0A:351-384 1kt1A:351-384
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テトラトリコペプチドリピート: tetratricopeptide repeat、略称: TPR)は、タンパク質中に存在する構造モチーフの1つである。34アミノ酸からなる配列のタンデムリピートから構成され、多様なタンパク質中に同定されている。リピートの数は3個から16個であり[1]、タンパク質間相互作用や、多タンパク質複合体の組み立てのための足場を形成する役割を果たしている。TPRはαヘリックス対の形状をとるリピート配列であり、通常は各リピートが互いに折りたたまれることで、TPRドメインと呼ばれる1本の線形のソレノイドドメインが形成される。こうしたドメインは、後期促進複合体(APC)のサブユニットであるCDC16英語版CDC23英語版CDC27英語版NADPHオキシダーゼのサブユニットであるp67phox英語版Hsp90結合型イムノフィリン英語版転写因子プロテインキナーゼRペルオキシソームマトリックスへのタンパク質取り込みの主要な受容体であるPEX5英語版ミトコンドリアへの取り込みタンパク質などに含まれている。

人工的に設計されたTRPモチーフ構造、PDB: 1NA0​。

構造

TPRモチーフとして最初に構造決定されたのは、PP5英語版タンパク質である。X線結晶構造解析によって決定された構造では、TPRモチーフが逆平行αヘリックスの対から構成されていることが示された[2]。PP5の構造にはタンデムに並んだ3つのTPRが含まれており、これら一連のTPRによってαヘリックスによるソレノイド構造が形成されていた。

TPRの典型的な構造では、最初のモチーフのヘリックスA、B、そして次のTPRのヘリックスA'との間で相互作用が行われている。こうした相互作用には多少の変化があるものの、一般的にはTPRモチーフの最初の2本のヘリックスはおよそ24°の角度でパッキングしている。TPRモチーフが3つ以上存在する場合には凹面と凸面を有する右巻き超らせん構造が形成され、その凹面がリガンド結合に関与していることが多い[1][3]

TPRモチーフに一般的にみられる特徴的な残基、PDB: 1NA3​をもとに作成。

配列の面では、TPRには小さな疎水性残基と大きな疎水性残基が混在しており、完全に不変な残基は存在しない。しかしながら、4番、7番、8番、11番、20番、24番、27番、32番などの残基は保存されていることが多く、これらの中でも8番、20番、24番、27番は保存性が高い。また、特定の残基が保存されているというよりは、小さな残基、大きな残基、芳香族残基といった選択性が存在する。小さな疎水性残基は主にモチーフ内のαヘリックス間相互作用を、大きな疎水性残基は主に隣接するモチーフ間での相互作用を担っている[1]

TPR含有タンパク質の例

Hop

アダプタータンパク質であるHopは、分子シャペロンHsp70とHsp90との結合を媒介している。Hopには3個のTPRドメインが存在し、そのそれぞれにペプチド結合特異性がみられる。TPR1ドメインはHsp70のC末端を認識することが知られており、TPR2はHsp90のC末端に結合する。Hsp70とHsp90はどちらもC末端はEEVDモチーフで終わり、TPRとの相互作用には静電的なものと疎水的なものの双方が関与している[1][4]

PEX5

PEX5英語版タンパク質は、ペルオキシソーム標的化配列の1つであるPTS1の受容体となっている。PEX5はTPRモチーフを介してこのシグナル配列と相互作用する。タンパク質のC末端に位置するPTS1との相互作用の大部分は、TPR1、2、3の凹面側表面で行われている[5]

p67phox

p67phox英語版は、微生物感染に応答してスーパーオキシドを産生するNADPHオキシダーゼ複合体に必要不可欠なサブユニットである。この複合体の組み立てに重要な段階の1つがRac GTPアーゼ英語版の結合であり、このサブユニットのTPRは結合のための足場として機能し、多タンパク質複合体の組み立てを媒介している[6]

出典

  1. ^ a b c d Blatch GL, Lässle M (Nov 1999). “The tetratricopeptide repeat: a structural motif mediating protein-protein interactions”. BioEssays 21 (11): 932–9. doi:10.1002/(SICI)1521-1878(199911)21:11<932::AID-BIES5>3.0.CO;2-N. PMID 10517866. 
  2. ^ Das AK, Cohen PW, Barford D (Mar 1998). “The structure of the tetratricopeptide repeats of protein phosphatase 5: implications for TPR-mediated protein-protein interactions”. The EMBO Journal 17 (5): 1192–9. doi:10.1093/emboj/17.5.1192. PMC 1170467. PMID 9482716. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1170467/. 
  3. ^ Wilson CG, Kajander T, Regan L (Jan 2005). “The crystal structure of NlpI. A prokaryotic tetratricopeptide repeat protein with a globular fold”. The FEBS Journal 272 (1): 166–79. doi:10.1111/j.1432-1033.2004.04397.x. PMID 15634341. 
  4. ^ Scheufler C, Brinker A, Bourenkov G, Pegoraro S, Moroder L, Bartunik H, Hartl FU, Moarefi I (Apr 2000). “Structure of TPR domain-peptide complexes: critical elements in the assembly of the Hsp70-Hsp90 multichaperone machine”. Cell 101 (2): 199–210. doi:10.1016/S0092-8674(00)80830-2. PMID 10786835. 
  5. ^ Gatto GJ, Geisbrecht BV, Gould SJ, Berg JM (Dec 2000). “Peroxisomal targeting signal-1 recognition by the TPR domains of human PEX5”. Nature Structural Biology 7 (12): 1091–5. doi:10.1038/81930. PMID 11101887. 
  6. ^ Lapouge K, Smith SJ, Walker PA, Gamblin SJ, Smerdon SJ, Rittinger K (Oct 2000). “Structure of the TPR domain of p67phox in complex with Rac.GTP”. Molecular Cell 6 (4): 899–907. doi:10.1016/S1097-2765(05)00091-2. PMID 11090627. 

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