共有知識
(Common knowledge (logic) から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/28 14:28 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動共有知識 (きょうゆうちしき、common knowledge) とは、エージェントの集団における特殊な知識のひとつ。エージェントの集団 G で p が共有知識であるとは、G に属するエージェント全員が p を知っていて、また「全員が p を知っている」ということを全員が知っていて、また「『全員が p を知っている』ということを全員が知っている」ということを全員が知っていて、というように際限なく続くときをいう[1]。
この概念が哲学の文献においてはじめて導入されたのは、デイヴィド・ルイスの Convention (1969) においてであった。その数学的定式化は集合論の枠組みを用いてロバート・オーマンによってなされた。1976 年、計算機科学者が一般に認識論理の問題、なかんずく共有知識の問題に興味を強めていったのは 1980 年代であった[1]。この概念にもとづくパズルは多数あり、ジョン・コンウェイをはじめとする数学者たちによって幅広く研究されてきた[2]。
例
共有知識の考えは、しばしば次のようなパズルの変種によって紹介される[2]: ある島にいる人びとのうち、青色の目をもったものが k 人いて、残りは緑色の目をしているとする。青い目の人は少なくとも1人はいるものとする (k ≥ 1)。自分の目が青いということを知った人は明くる日の夜明けに島を出なければならない。それぞれの人は、他人の目の色を見ることはできるが、この島には反射するような面はなく、自分の目の色は知ることができない。ある時点において、1 人のよそ者がこの島にやってきて、この島の人たち全員に呼びかけ、「あなたがたのなかに少なくとも 1 人青い目の者がいる」という発表を行う。さらに、このよそ者は正直者であるということが全員に知られており、またそのことを全員が知っているということを全員が知っており、以下同様とする:このよそ者が正直者であるということが共有知識であり、したがって青い目の島民がいるということが共有知識になる。問題は次のようである:「この島の全員が完全に論理的であり、またそのことが共有知識であるとすると、最終的に何が起こるか」。
その答えは、このよそ者の発表のあとの k 度めの夜明けに、青い目の人びと全員が島を出ることになるというものである。
このことは帰納的な議論によって簡単にわかる。k = 1 のとき、この唯一の青い目の人は、(他人が全員緑色の目をしていることを見て) 自分が青い目の人なのだと認め、最初の夜明けに島を出る。k = 2 のとき、最初の夜明けには誰も島を出ない。青い目の 2 人の人たちは、ただ 1 人の青い目の人を目にしており、かつ、最初の夜明けに誰ひとり島を出なかったことを見て、2 日めの夜明けに島を出る。同様にして、少なくとも k 人の青い目の人がいるとき、またそのときに限り、最初の k − 1 日間には誰も島を出ないことがわかる。青い目の人びとは、自分以外のなかに k − 1 人の青い目の人がいることを見て、なおかつ少なくとも k 人青い目の人がいなければならないことを知って、自分の目も青いということを推論し島を出ることになる。
このシナリオにおいていちばん興味深いのは、k > 1 のとき,このよそ者は島民に対して、「島民のなかに青い目の人がいる」という、島民がすでに知っていることしか言っていないということである。しかしながら、この事実が発表されるまえは、この事実は「共有知識」ではないのである。
k = 2 のとき、これは単なる「1 階の」知識である。2 人の青い目の人物はそれぞれ、青い目の人間がいるということは知っているが、そのもう一方の青い目の人物がまったく同じ知識を有しているということは知らない。
k = 3 のとき、これは「2 階の」知識になる。2 日経ったあと、青い目の人物のそれぞれは、「『3 人めが青い目をしている』ということを 2 番めの青い目の人物が知っている」ということを知るが、そういう知識をもった「3 人め」の青い目の人物がいるということは 3 日めが来るまでは誰も知らないのである。
一般的には次のようになる。k > 2 に対し、これは「(k − 1) 階の」知識になる。k − 1 日経ったあと、青い目の人物のそれぞれは、「『k 人めが青い目をしている』ということを……」ということを 3 番目めの青い目の人物が知っている』ということを 2 番めの青い目の人物が知っている」ということを知る (k − 1 階にわたって反復) が、そういう知識をもった「k 人め」の青い目の人物がいるということは、k 日めが来るまで誰も知らない。共有知識の概念はこうして明白な効果をもつ。全員が知っているということを知るということが重要なのである。よそ者の発表 (事実としてはすでに周知のこと) が共有知識になると、青い目の人びとは最終的に自分の目の色について演繹し、島を出ることになるのである。
定式化
様相論理(構文論的特徴づけ)
共通認識は、認識論的に解釈される複数の様相演算子をもつ多様相論理の体系において論理学的な定義を与えうる。命題のレベルでは、このような体系は命題論理の拡張となっている。付け加えられるのは、エージェントたちの集団 G と、「エージェント i が知っている」ということを意味するものとする n 個の様相演算子 Ki (i = 1, ..., n) である。したがって Ki Category:ゲーム理論
- Common knowledge (logic)のページへのリンク