BORAXとは? わかりやすく解説

Borax


ホウ砂

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 13:23 UTC 版)

硼砂
分類 ホウ酸塩鉱物
化学式 Na2B4O5(OH)4・8H2O
結晶系 単斜晶系
モース硬度 2.5
光沢 ガラス光沢
無色
条痕 白色
比重 1.7
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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ホウ砂
識別情報
CAS登録番号 1330-43-4
E番号 E285 (防腐剤)
特性
化学式 Na2B4O7·10H2O または Na2[B4O5(OH)4]·8H2O
モル質量 381.37
外観 白色の固体
密度 1.73 g/cm3 (固体)
融点

741 °C

沸点

1575 °C

危険性
GHSピクトグラム [1]
GHSシグナルワード Danger[1]
Hフレーズ H360, H319[1]
Pフレーズ P201, P305+351+338, P308+313[1]
NFPA 704
0
1
0
関連する物質
その他の陰イオン アルミン酸ナトリウム
その他の陽イオン 四ホウ酸カリウム
関連物質 ホウ酸, 過ホウ酸ナトリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ホウ砂(ホウしゃ、硼砂、borax)は、鉱物(ホウ酸塩鉱物)の一種。化学組成は Na2B4O5(OH)4・8H2O(四ホウ酸ナトリウム Na2B4O7 の十水和物)。

単斜晶系モース硬度2.5。比重1.7。水に対する溶解度は4.7g/100mL(20℃)。

空気中で風解しやすく、結晶水を失ってチンカルコナイト Na2B4O5(OH)4・3H2O になる。

産出地

塩湖が乾燥した跡地で産出することが多い。古くはチベットの干湖からヨーロッパへもたらされ、特殊ガラスエナメル塗料の原料だった。19世紀から20世紀にかけてはアメリカ大陸西部においてデスヴァレーなどの産出地が相次いで発見された。

今日では、アメリカロシアトルコアルゼンチンのほか、イタリアトスカーナ地方やドイツなどでも産出される。日本ではほとんど産出されない。

特性と用途

ホウ素の原料鉱石として工業的に使用されるほか、以下のようにホウ砂そのものの特性を利用した様々な用途がある。

  • 350~400℃に熱すると無水物になり、さらに熱すると878℃で融解して無色透明のガラス状となる。これは多くの金属酸化物を融解する性質を持つため、融剤として使われるほか、このとき金属によって特有の色を呈するため、定性分析陶芸用の釉薬溶解剤として使われる(硼砂球反応)。
  • ガラスに混ぜると熱衝撃や化学的浸食に強いホウケイ酸ガラスとなるため、耐熱ガラスなどの原料となる。
  • 水溶液は弱アルカリ性となり、洗浄作用・消毒作用があるため洗剤防腐剤などに使われる。またホウ酸と同様に、の洗浄・消毒に用いられる。また、銀塩写真現像液にアルカリ調整剤として添加される。日本の国産の写真用ホウ砂(10水塩)とアメリカ産のホウ砂(7水塩)では結晶水の数が異なるため、同じ量で現像液を調合した場合にpH値がやや異なり、現像感度に差異が生じるので注意が必要である。
  • ホウ素がポリマー架橋ゲル化する反応を利用し、理科実験自由研究などでスライムを作るときによく用いられる。
  • 植物必須微量要素であるホウ素の肥料として。
  • 原子炉放射線遮蔽材として。原子力船むつが遮蔽リングの設計ミスにより放射線漏れを起こしたとき、放射線の出ている箇所の特定のため、ホウ素を含むホウ砂を混ぜ込んだをシートに載せたものを即席の遮蔽材とし、原子炉格納容器の上で場所を変えながら放射線量を測定。格納容器上部の遮蔽不足であることを突き止めた[2]

また近年、米国テキサスA&M大学のジョセフ・ナジバリー (Joseph Nagyvary) 教授の研究により、ヴァイオリンの名器であるストラディバリウスのトップから、この物質が検出された。製作当時、ホウ砂はワニスの防腐剤として使われていたことが明らかになっており、それが名器の音の秘密ではないかという研究結果が、同教授によって提出されている[3]

脚注

  1. ^ a b c d ホウ砂 (四ホウ酸二ナトリウム・十水和物) SDS
  2. ^ 『悲劇の原子力船「むつ」―いま明かす漂流事件の真相』実業之日本社、10/1、98-106頁。 
  3. ^ BSジャパン「ストラディバリウス~響きあう奇跡と幻想」2006年1月1日放送

参考文献

関連項目

外部リンク


原子炉反応度事故の研究

(BORAX から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/14 07:58 UTC 版)

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原子炉反応度事故の研究(げんしろはんのうどじこのけんきゅう)とは、安全な原子炉を開発するために、実際に原子炉を造り、あるいは実験用原子炉内で模擬的に実用炉内環境を作り出し、原子炉に大きな反応度を印加し、その反応挙動を見るものである。

歴史

1952年から1957年にかけて、アメリカ合衆国アルゴンヌ国立研究所アイダホ州にあるアメリカ国立原子炉実験場(National Reactor Testing Site)で、沸騰水型軽水炉を開発する目的で行ったBORAX実験英語版(BOiling ReActor eXperiments)実験の締めとして行われた。この手の実験としては初めてのものである。原子炉に大きな反応度を一度に加えるこの実験は1954年7月に行われた[1]

原子炉に強大な反応度を印加したとき、原子炉はどのようなことになるかを見るための実験であった。当初の予想では、原子炉は余りにも急に増える中性子の数を処理しきれないため、暴走状態にいたり破壊されてしまうだろうというものだった。BORAX実験の結果、余りに強い反応度を加えたとき、原子炉は暴走し破壊に至るということが解った。しかし、当時は"どれだけの強さ"の反応度を、"どのくらい長く"加えれば壊れるかといった、定量的な解析は出来なかった。当時は計算機が実用化されておらず、データの解析が出来なかったためである。

その後の1961年、アメリカは海軍の訓練用原子炉であるSL-1(Stationary Low-Power Reactor Number One)で反応度事故を起こしてしまった[2]

1963年から1970年にかけて、同地で行われた一連の実験であるSPERT英語版(Special Power Excurtion Test)がおこなわれたが、「何故、原子炉に強い反応度を加えたら壊れるか」を解明するまでは、この実験が行われるまで待たなければいけなかった。

また、1972年(昭和47年)、日本の原子炉安全性研究炉NSRRにて、研究用炉心に実際の運転状態における軽水炉の炉心内部を模擬したカプセルを設置し、その中に装荷した燃料棒を破壊するという一連の実験が行われた。これにより、暴走時、燃料棒内の燃料が発熱し、その熱量でセラミック状態の燃料が溶融し、耐え切れなくなった燃料棒被覆管から冷却水内へ溶融したマグマ状の燃料が噴出し、水蒸気爆発が起こるのが原子炉破壊のプロセスであると解った。

BORAX実験

SPERT実験

NSRR

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ アルゴンヌ国立研究所ウェブサイト上のBORAX-I原子炉に関する記載(archive.orgにより保存された2002年12月24日版)
  2. ^ SL-1事故については原子力事故#代表的な事故を参照

参考文献

  • 日刊工業新聞社『原子炉の暴走 ―SL-1からチェルノブイリまで―』(石川迪夫 著) ISBN 4-526-03845-8

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