1号電子決済手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 06:45 UTC 版)
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概要
1号電子決済手段は「通貨とペグされ、自由に決済利用と売買ができ、現金化もできる電子マネー」に近い概念である。資金決済法 2 条 5 項 1 号にて定義されている[1](⇒ #定義)。厳格な規制を受ける発行者によって発行され[2]、保有者が自由に支払いに使ったり他のユーザーと売買し[3]、保有者の請求に従って発行者が額面額の通貨で償還する[4](⇒ #発行と償還)。2025年時点ではブロックチェーンを用いたデジタルマネー類似型ステーブルコインとして実装されることが想定されている(⇒ #実装)。
定義
1号電子決済手段は資金決済法 2 条 5 項 1 号により以下のように定義される:
物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)
1号電子決済手段は資金決済法 2 条 5 項が定める4類型の電子決済手段のうちのひとつである[5]。
特性
「通貨建資産」という要件により[6]、1号電子決済手段は額面金額分の通貨と同じ財産的価値を持つことが強く期待される。これは暗号資産と対照的である[7]。
また「不特定の者」という要件により、1号電子決済手段は通貨のようなP2P型の自由な流通が保証される[3]。たとえ発行者であっても、特定の店での決済を禁止したり現金化を阻んだりすることはできない[8]。
発行と償還
1号電子決済手段の発行と償還は為替取引に該当する。そのため厳格な規制が整備されている。
2025年現在の法制では、1号電子決済手段は資金移動業者により発行されると想定される[2]。形式上は銀行も発行可能だが、現時点では実施へ向けた環境整備はなされていない[9]。
発行された1号電子決済手段は不特定の者によって自由に取引・保有される。そして保有者からの請求に従って発行者が額面額の通貨で償還する[4]。
実装
1号電子決済手段はP2P型の自由な流通を要件とするため、発行者にはこれを実現できるシステムの提供が求められる[10]。2025年時点ではパーミッションレス型分散台帳(ブロックチェーン)での実装が有望視されている[10]。いわゆる「デジタルマネー類似型ステーブルコイン」は1号電子決済手段として社会実装されることが想定されている。
脚注
出典
- ^ a b
「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。... 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(... 電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、... 電子記録債権、... 前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの ... であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)
資金決済法 2 条 5 項 1 号 より引用。 - ^ a b
現実に利用される可能性がある 1 号電子決済手段は、資金移動業者により発行されることになろう
(神作 2025, p. 72) - ^ a b
1 号電子決済手段は、「不特定の者」に対し使用できる P2P 型であることが重要な要件の 1 つであると解される。
(神作 2025, p. 63) - ^ a b
発行者である資金移動業者は、1 号電子決済手段の保有者に対し ... 額面額の通貨で償還する義務を負っている。
(神作 2025, p. 72) - ^
資金決済法は、1 号電子決済手段から 4 号電子決済手段まで、4 類型の電子決済手段を認めている(同法 2 条 5 項 1~4 号)。
(神作 2025, p. 54) - ^
資金決済法 2 条 5 項 1 号は、1 号電子決済手段を ... 電子的方法により記録されている通貨建資産に限り ... と定義する。... この定義規定 ...「通貨建資産」に限られている
(神作 2025, pp. 61–62) - ^
暗号資産と異なるのは「通貨建資産」に限られている点である。
(神作 2025, p. 62) - ^
事務ガイドラインにおいては ... 「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために電子決済手段を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」...「発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか」 ... 等をチェックするものとされている
(神作 2025, p. 63) - ^
銀行が為替取引と整理されている 1 号電子決済手段の発行・償還を行うことは、本来的には可能である。しかし、当面、銀行が 1 号電子決済手段を発行することは想定されていない。監督指針においても、銀行が電子決済手段を発行することを想定した記載は一切ない。
(神作 2025, p. 55) - ^ a b
事務ガイドラインにおいては ... 「ブロックチェーン等のネットワークを通じて不特定の者の間で移転可能な仕組みを有しているか」 ... 「ブロックチェーン等のネットワークを通じて不特定の者の間で移転可能な仕組みを有しているか」... 等をチェックするものとされている
(神作 2025, p. 63)
参考文献
- 神作, 裕之 (2025). “電子決済手段の法形式とその移転”. 金融研究 (日本銀行金融研究所) 44 (1): 49-88 .
関連項目
- 1号電子決済手段のページへのリンク