農地に準じた課税とは? わかりやすく解説

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農地に準じた課税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/07 23:26 UTC 版)

徳島県吉野川市の市街化区域に広がる農地。ここに見える農地にも、農地に準じた課税が課されている

農地に準じた課税(のうちにじゅんじたかぜい)とは、線引きが行われた都市計画区域の市街化区域のうち、三大都市圏特定市以外に課されている固定資産税である。したがって、主として人口増加圧力が強くない地方都市の市街化区域農地が対象となる。

農地への3種類の課税

農地に課せられている固定資産税には3つの種類があり、税額も大きく異なる。もともと農地には、農業生産によって支払い可能な税額が設定されていた。しかし、農地には宅地予備地の側面もあり、住宅建設のための宅地供給の主要な対象と見られやすい。この結果、高度成長期に宅地が不足し、農地の供給を増加させることを意図して、「宅地並み課税」が登場した。「農地に準じた課税」もその関連で出てきた課税であり、負担調整措置の初期を除き、農業経営では支払いが困難な高い税額が課せられるのが一般である。表に主な違いを示した。

農地課税の3種類
農地の種類 農地の評価 負担調整措置 課 税
一般農地 農地評価 農地(ゆっくりと増税) 農地課税
市街化区域農地 一般市街化区域農地 宅地並み評価 農地(ゆっくりと増税) 農地に準じた課税
三大都市圏の特定市街化区域農地 宅地並み評価 5年程度で本則課税に到達 宅地並み課税

「一般市街化区域」と三大都市圏の「特定市街化区域」

首都圏、近畿圏、および中部圏の三大都市圏のうち、首都圏では首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地若しくは同条第四項に規定する近郊整備地帯を、近畿圏では近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域若しくは同条第四項に規定する近郊整備区域を、また中部圏では中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域内にある指定都市の区域又はその他の市を言う。

三大都市圏にある全ての農地が「特定市街化区域農地」であるわけではない。首都圏を例に説明すると、東京都心から見て近郊整備地帯より遠くにある市は「特定市」ではなく、たとえば栃木県小山市や宇都宮市、茨城県つくば市、埼玉県深谷市などの農地は「一般市街化区域農地」である。また、近郊整備地帯内にあっても市でなく町村である場合も除外され、埼玉県の松伏町や鳩山町、神奈川県の愛川町や大井町などがある。これらの市町村の市街化区域農地が、「農地に準じた課税」の対象となる。

非住宅用地と住宅用地特例

地価高騰で固定資産税が重くなったため、政府は住宅用地への負担を軽くするようになる。まず1973年に、「住宅用地に課する固定資産税の課税標準を二分の一の額とする」という負担軽減策が登場した[1]。さらに翌1974年には、「住宅一戸あたり200㎡までの面積にかかる固定資産税について課税標準を四分の一の額とする」という「小規模住宅用地の特例」が追加された[2]。その後、地価に関する公的な価格を地価公示価格を基礎に統一しようという動きで固定資産税の基礎となる地価評価が重くなる1993年に、「住宅用地の課税標準は三分の一、うち200平方メートルまでは六分の一」という負担軽減策に変更された。

では、市街化区域農地への課税は、どちらを規準にしているのだろうか。宅地並み課税が始まったのは、住宅用地特例が始まった1973年で、当初から住宅用地並みの評価を基準に課税されている。ただ当初は二分の一、後も三分の一で、「小規模住宅用地の特例」は全く考慮されていない。

一方、農地に準じた課税は、住宅用地特例開始後の1976年に開始したにもかかわらず、非住宅用地の評価を基礎に課税されていた。そして、21世紀に入った2003年に、ようやく住宅用地特例に準じ、三分の一の額を基礎に課税されることとなった。「小規模住宅用地の特例」が反映されていないことは、宅地並み課税と同じである。表に示すと、このようになる。

農地に準じた課税と宅地並み課税の評価比較
時期 1973~1975年 1976~2002年 2003年以降
一般市街化区域農地 1963年の農地課税 非住宅地並み課税を目ざす(1993年までは住宅地の2倍、1994年からは同3倍) 宅地並み課税と同じく、住宅地並み課税を目ざす
特定市街化区域農地 宅地並み課税(税額は各該当年)を目ざし、5年程度で本則課税に到達。

農地に準じた課税では、負担調整のため課税はゆっくりとしか進行しない。それでも2002年にほぼ住宅用地並みの税額となっていた農地が1割前後あり、2003年に住宅用地特例が反映されて税額が急に減少し、農家は胸をなで下ろしたことだろう。

特定市街化区域農地における負担軽減策と生産緑地地区

1973年の「宅地並み課税」の開始時に、対象となる農家は反対し、市税であるため該当市に対策を求めた。1968年の都市計画法の国会審議で、課税では農業経営の継続に支障を及ぼさないようにするという附帯決議が行われていたこともあり、多くの市が農業を継続できるよう農地所有者に奨励金や補助金を出し、課税はかなり骨抜きとなった[3]。農家の補助に経費が必要な市が宅地並み課税に消極的になる問題もあったため、1976年に「税額を農地並みに減額できる制度」が設置された[4]。この制度は1982年に「長期営農継続農地」となり、さらに1992年以降は既存の「生産緑地法」を改正して、生産緑地地区に限って農地課税を継続することとなった。

しかし、特定市街化区域農地と異なり、一般市街化区域農地の「農地に準じた課税」には、この恩恵は及ぼされなかった。ようやく2013年の「都市計画運用指針」改正で、一般市街化区域農地にも堂々と「生産緑地地区」を指定できるようになったが、実際にこの指定を行っている市町村は非常に少ない。

特定市街化区域農地の宅地並み課税への負担軽減策
時期 1973~1975年 1976~1981年 1982~1991年 1992年以降
一般市街化区域農地 一般市街化区域農地には、税額の減免制度は提供されず、「生産緑地地区」の指定もできない状況だった。ようやく2013年の「都市計画運用指針」改正により、「生産緑地地区」指定が可能となったものの、指定を行っている市町村は非常に少数である。
特定市街化区域農地 多数の市が独自の減免制度を設置した 地方税法の規定する減額対象農地として減額 「長期営農継続農地」の認定により農地課税との差額の徴収を免除 「生産緑地地区」の指定により、農地として課税する

脚注

  1. ^ 地方税法第三百四十九条の三の二
  2. ^ 地方税法第三百四十九条の三の二第2項
  3. ^ 「農地の宅地並み課税、自治体が骨抜き」、朝日新聞1973年7月13日
  4. ^ 地方税法附則第二十九条の五(市街化区域農地に対して課する固定資産税及び都市計画税の減額)

関連項目




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