日本商事仲裁協会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/07 06:25 UTC 版)
日本商事仲裁協会(にほんしょうじちゅうさいきょうかい、Japan Commercial Arbitration Association、略称:JCAA)は、日本国内および国際的な商事紛争に関して、仲裁や調停などの裁判外紛争解決(ADR)を行う一般社団法人。仲裁条項にJCAAを指定する企業もあり、日本における代表的な仲裁機関の一つとされている。
概要
JCAAは、企業間の商事紛争の迅速・柔軟な解決を目的として設立された専門機関である。紛争処理だけでなく、ATAカルネやSCCカルネの発給・保証業務も日本で唯一実施している[1]。
2024年時点で約460の企業正会員と、35人の賛助会員(個人)を有する[1]。
沿革
- 1950年:日本商工会議所に「国際商事仲裁委員会」として設立[1]。
- 1953年:社団法人「国際商事仲裁協会」として独立[1]。
- 1973年:ATAカルネに関する業務開始[1]。
- 2001年:SCCカルネ業務を開始[1]。
- 2003年:名称を「日本商事仲裁協会」に変更[1]。
- 2007年:ADR法に基づく法務大臣認証(第7号)取得[2]。
- 2009年:公益法人制度改革により一般社団法人へ移行[1]。
組織体制
本部は東京都にあり、大阪市、神戸市、名古屋市、横浜市にも支部を持つ[1]。代表理事・理事長は北川慎介[3]。
仲裁制度・規則
JCAAは以下の仲裁制度を提供している。
- 商事仲裁規則(Commercial Arbitration Rules, CR)
- インタラクティブ仲裁規則(Interactive Arbitration Rules, IR)
- UNCITRAL仲裁規則に基づく仲裁(Supplementary Rules)
2019年には仲裁規則が大幅に改訂され、迅速な手続が可能となった。また、2021年の改訂により、請求額が3億円以下の場合、仲裁廷成立から原則6か月以内(5,000万円以下では3か月以内)での判断が可能となった[4]。
国際的関係
JCAAは、UNCITRAL仲裁規則を採用しており、日本国際紛争解決センター(JIDRC)や内閣官房などと連携して、国際仲裁の拠点としての日本の地位向上に取り組んでいる[5]。
実績
JCAAが扱った調停件数は2003年から2023年の間に82件で、うち9件が国際紛争であった。和解成立率は約76%とされている[6]。取扱案件の約75%が請求額1,000万円未満の小規模紛争である一方、1,000億円を超える大規模案件も取り扱っている[7]。
関連項目
- 仲裁
- 裁判外紛争解決
- ICC国際仲裁裁判所
- 香港国際仲裁センター
- シンガポール国際仲裁センター
- 日本国際紛争解決センター
脚注
- ^ a b c d e f g h i “協会概要”. 日本商事仲裁協会. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “一般社団法人 日本商事仲裁協会”. 法務省 ADRポータルサイト. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “日本商事仲裁協会の企業情報”. 日本経済新聞. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “【企業法務】商事仲裁の現場とJCAAの仲裁規則改正の実務的意義”. ZELO. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “第4回国際仲裁に関する関係府省庁連絡会議 議事概要”. 内閣官房. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “調停実績”. 日本商事仲裁協会. 2025年8月7日閲覧。
- ^ “国際仲裁の地としての日本”. Government of Japan - Highlighting Japan. 2025年8月7日閲覧。
外部リンク
- 日本商事仲裁協会のページへのリンク