折り紙公理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/31 02:22 UTC 版)
折り紙公理(おりがみこうり、折紙公理)は折り紙幾何学の一連の規則であり、紙を折るときに理論上厳密に可能である、基本的な操作を記述している[1]。紙の厚さは無いものとし、伸縮しないものとする[1]。折りの操作は平面で完結し、全ての折り線は直線であると仮定する[1]。折り紙公理は数学的な意味での公理の要件を満たすものではない[要説明][1]。
公理は最初、1989年にジャック・ジュスタン (Jacques Justin) によって発見された[2]。その後公理1から6は藤田文章によって1991年に再度発見された[3]。また、公理7は羽鳥公士郎によって2001年に再発見された[4]。またロバート・J・ラングも公理7を再発見している。
7つの公理
公理1から6は藤田の折り紙公理として知られる。公理7は羽鳥公士郎によって再発見された。公理は以下である:
- 2点p1, p2が与えられたとき、2点を通るただ1つの折り方がある。
- 2点p1, p2が与えられたとき、p1をp2に重ねるただ1つの折り方がある。
- 2本の直線l1, l2が与えられたとき、l1をl2に重ねるような折り方がある。
- 1点p1と1本の直線l1が与えられたとき、l1に垂直でp1を通るただ1つの折り方がある。
- 2点p1, p2と1本の直線l1が与えられたとき、p1をl1上に重ね、p2を通る折り方がある。
- 2点p1, p22本の直線l1, l2が与えられたとき、p1をl1上に重ね、かつp2をl2上に重ねる折り方がある。
- 1点pと2本の直線l1, l2が与えられたとき、pをl1に重ね、l2に垂直な折り方がある。
注目すべき点は、折り紙公理5は0, 1, 2個の解を持つ場合があり、公理6は0, 1, 2, 3個の解を持つ場合があることである。これにより最大の解が2個であるコンパスと定規の幾何学よりも強力な公理である。よってコンパスと定規の作図は2次方程式を解くことができるのに対し、折り紙の幾何学(オリガメトリー、origametry)では3次方程式や、角の三等分や立方体倍積などの問題を解くことができる。しかし、公理6の折り方を実際に行う際には、紙の"滑らせ"、言い換えるとネイシス (νευσις, neusis) を必要とする。これは古典的なコンパスと定規による作図では認められていないものである。コンパスと定規による作図にもネイシスを導入すれば、任意の角の三等分が可能となる。
詳細
公理 1
2点p1, p2が与えられたとき、2点を通るただ1つの折り方がある。
媒介変数表示では、この2点を通る折り線の直線の方程式は以下のように表せる。
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この折り方は線分p1p2の垂直二等分線を求めていることに等しい。これは以下の4工程で折ることができる。
- 公理1を用い、2点p1, p2を通る直線を求める。この直線は
これはl1とl2がつくる角の二等分線を求めていることに等しい。p1とp2をl1上の任意の点とし、q1とq2をl2上の任意の点とする。更にuとvをそれぞれl1とl2の単位方向ベクトルとすると、以下のように表される。
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これはp1を通るl1の垂線を求めることに等しい。直線l1に垂直なベクトルをvとするとき、媒介変数表示による折り線の方程式は以下で表せる。
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これは、p2を中心としてp1を通るような円と直線l1との交点を求め、その交点にp1を重ねる折り方である。一般に、直線と円との交点の個数は0, 1, 2個の場合があり、それに応じて、この公理による折り方がなかったり、1通りだったり、2通りあったりする。
直線上の2点(x1, y1), (x2, y2)がわかっている場合、直線は媒介変数によって以下で表される。
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この公理は2つの放物線の共通接線を求めることに等しく、3次方程式を解くことに等しいと見なせる。2つの放物線はそれぞれp1とp2に焦点をもち、またl1とl2を準線とする。
公理 7
1点pと2本の直線l1, l2が与えられたとき、pをl1に重ね、l2に垂直な折り方がある。
羽鳥公士郎がこの公理を再発見し、ロバート・J・ラングがこれら7つの折り方で折り紙公理が完全であることを証明した。
参照文献
- ^ a b c d 畠山, 一平『折紙数学-折紙で作図を楽しむ-』東京図書出版、2007年3月。ISBN 978-4-86223-166-6。
- ^ Justin, Jacques, "Resolution par le pliage de l'equation du troisieme degre et applications geometriques", reprinted in Proceedings of the First International Meeting of Origami Science and Technology, H. Huzita ed. (1989), pp. 251–261.
- ^ Humiaki Huzita, “Understanding Geometry through Origami Axioms”, The First International Conference on Origami in Education and Therapy (COET91) (1991)
- ^ 日本折紙学会 Origami BBS (02021) 2001-06-28 15:37の発言
- ロベルト ゲレトシュレーガー 著、深川 英俊 訳『折紙の数学 ユークリッドの作図法を超えて』森北出版、2002年。 ISBN 4627016816。
- Origami Geometric Constructions (英語) by Thomas Hull
- A Mathematical Theory of Origami Constructions and Numbers (英語) by Roger C. Alperin
- ロバート・J・ラング (2003) (PDF). Origami and Geometric Constructions (英語). ロバート・J・ラング 2007年4月12日閲覧。.
- 折り紙による作図 羽鳥公士郎による簡単な解説
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- 公理1を用い、2点p1, p2を通る直線を求める。この直線は
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