ボーディ王子経とは? わかりやすく解説

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ボーディ王子経

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/07 00:32 UTC 版)

ボーディ王子経[1](ボーディおうじきょう、: Bodhirājakumāra-sutta, ボーディラージャクマーラ・スッタ)とは、パーリ仏典経蔵中部に収録されている第85経。『菩提王子経』(ぼだいおうじきょう)[2]とも。


  1. ^ 初期の仏教においては、そのほかにも、止観や、調和された屋外での禅定、八正道についての考察、苦の止滅、一切の世界を慈悲で満たしたいという願いなどが、第一禅に至るまでの前提としてあったようだ。
  2. ^ 在家的な欲望を捨てるために釈迦が出家したように、一切の世界への無限の慈悲の想いというものも、釈迦の求道の動機であった、ということが考えられる。鋸喩経では、一切の世界を無限の慈悲の想いで満たせということが言われている。そのことは、四無量心における慈悲のこころとは少し違った点が見受けられる。四無量心はどちらかというと、観念的・瞑想的な実践の心のあり方を説いているといえる。しかし、一切の世界というのは、三千世界を意味しているようでもある。そこを無限の慈悲の想いで満たすという実践をしている存在は、「如来」を指している。そのため、如来に対する信仰や尊敬を持ち、三つの束縛を捨てることが、一切の世界を無限の慈悲の想いで満たすことと密接につながっていると見ることができる。 『原始仏典第4巻 中部経典Ⅰ』 第21経 怒りのこころと慈しみのこころー鋸喩経 P317 春秋社2004年 中村元監修 羽矢辰夫訳
  3. ^ 悟りの直前には、マラーによる試練があったとされる。そのことを考えた場合、マラーの存在はいきなり出てきたわけではなく、初禅の体得の段階から止観されてきたものと思われる。
  4. ^ それはいわば、菩薩として有余涅槃を求めることにはじまり、無余涅槃の求道に至り、想受滅を悟り、教えを説く心が止滅しそうになったところに、世界の主である如来から、慈悲の教えである有余涅槃を悟ったと言い換えることができるようである。
  5. ^ その悟りの内容は、猟師経に見られるごとく、解脱の九段階に見られるような、想受滅を求めるものであったといえるようだ。そこで用いられていた用語(無所有などの語)は、後に梵天勧請以後の境地に転換していった、と見ることができる。一般的に言うと、想受滅の状態であると、慈悲や、法の流布や、諸仏やブラフマー神などの概念は想念にすぎないので、空しい議論であると考えられるからである。またこれとは逆に、有余の諸仏の見地から無余涅槃を解釈すると、想受滅は、「滅(法)の想受」に、無所有は、「無の有となる所」、などと言い換えることが可能になると見ることができる。また、そうした宇宙期の悟りを説話するときであっても、「法」や、「神」や、「道の出起」、などの重要な語は、説話の中には出てきていないということになっている。いずれにしても、想受滅(無余涅槃)の境地からは、梵天勧請以後の悟りの境地は説法できないので、修正されたということのようである。
  6. ^ 聖求経には、想受滅と思われる境地に至り、教えを説く意欲のなくなった釈迦に、世界の主であるブラフマー神が、慈悲利他の境地に誘ったことが伝えられている。世界の主は、このままだと世界は滅びる方向に向かってしまう、と言ったとされている。考えてみると、無余の涅槃にとっては、宇宙には生成する時期もあれば、滅びる時期もある訳であるから、それはどちらでもいいわけである。世界の主の放った言葉のうちには、想受滅の解脱とは異なった次元に、諸仏の慈悲を衆生に説く境地があったことがうかがえる。
  1. ^ 『パーリ仏典』片山
  2. ^ 『南伝大蔵経』、『原始仏典』中村
  3. ^ a b c パーリ仏典, 経蔵中部 ボーディ王子経, Sri Lanka Tripitaka Project
  4. ^ 『原始仏典第4巻 中部経典Ⅰ』 第19経 二種の思い P282  前書き  春秋社2004年 中村元監修 及川真介訳
  5. ^ 釈迦は無余涅槃を排斥したとされる。(出典『ブッダのことば スッタニパータ』岩波書店1984年 P395注875 中村元)
  6. ^ 『仏典を読む1仏陀の生涯』岩波書店 2017年 中村元(前田専學 監修)P4
  7. ^ 『ゴータマ・ブッダ 釈尊伝』法蔵館1958年 P136 中村元


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