アイリッシュ・コリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/01/04 02:51 UTC 版)
アイリッシュ・コリー(英:Irish Collie)は、アイルランド原産の牧羊犬種・コリー犬種である。
目次 |
歴史
初期のケルト人がアイルランドに持ち込んだとても古い犬種で、イギリス及びアイルランド原産のコリー犬種や多くの牧羊犬種の先祖になった。日本でも著名なラフ・コリーやボーダー・コリーの先祖になり、更にはシェットランド・シープドッグの誕生にも間接的に関わった。然しながら、アイリッシュ・コリー自体の生い立ちについてはほとんどが謎に包まれており、既出の通り初期のケルト人によってもたらされたこと以外は未だはっきりと分かっていない。
主に牧羊犬として羊を誘導するのに使われていた。牧羊犬種であるにもかかわらず、何故か尾はもとから短かったが、牧羊作業には全く支障を来さなかった。それどころか、体力の多さと仕事に対する情熱、従順さなどが優れていたため、羊飼いにとても珍重されていた。
然し時代の流れによって牧羊が縮小されて仕事が減り、ショードッグとしてではなく、純粋に作業犬としてのみ使われていたため品種保存の重要性が羊飼いに伝わっておらず、無計画な異種交配が進み、現在は純血の犬がほとんどいなくなってしまった。中には犬種としては既に絶滅してしまったと見る専門化も多く、アイリッシュ・コリーの血を引く犬ですら今世紀中に姿を消してしまうのではないかとまでいわれている。
現在存亡の危機にさらされているアイリッシュ・コリーではあるが、愛好家が数人存在し、非公式ではあるが犬種クラブも結成されている。現在そのクラブでは純粋なアイリッシュ・コリーを復活させるべくして血の濃い犬を探し、交配を重ねて再作出を行なっている。まだ復刻版の完成には至っていないが、完成した折にはアイルランドでお披露目会を行なうことが計画されているという。
アイリッシュ・コリーの純血の犬を見つけることは非常に困難であるが、牧羊が行なわれている地域では時折本種の血を強く引くワーキング・コリーを見かけることが出来るといわれている。然し、どのケネルクラブからも公認されていない犬種であるため、アイルランド国外には全く輸出されておらず、知名度もかなり低い。
特徴
筋肉質のがっしりとした体つきをしたコリーだが、脚が長く走るのが速い。頭部は少し小さめだが、横の幅が広く、マズルと額の間は平らである。マズルは短めで、先が尖っている。耳は丸く大きな垂れ耳で、尾はふさふさした短い垂れ尾又は無尾だが、雑種化の影響により長い尾を持った犬もいた。コートは厚いロングコートで、防寒性が非常に高い。毛色はホワイト・アンド・ブラックやホワイト・アンド・レッド、ホワイト・アンド・ブルーなど。大型犬サイズで、性格は愛情深く従順、仕事熱心である。しつけの飲み込みや状況判断力が優れ、仕事を覚えるのが早い。力が強く、運動量が非常に多いため、一般家庭での飼育はやや難しい。かかりやすい病気は関節疾患などがあった。やはり本種も退色系の毛色同士の犬で交配を行なうとサファイア・アイズ・ピュアスノーのように全身純白で目が青い犬やアルビノ犬が生まれる危険性があったため、その交配は避けられた。それらの犬は外見こそ美しいが、難聴や盲目を先天的に患っている危険性が極めて高くなる。
参考文献
『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年
関連項目
固有名詞の分類
- アイリッシュ・コリーのページへのリンク