pn接合 pn接合の概要

pn接合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/03/03 04:05 UTC 版)

概要

半導体のpn接合とバンド構造の模式図
  1. p型とn型の半導体を接合すると、接合部付近では伝導電子正孔(多数キャリア)が互いに拡散して結びつく拡散電流が生じる。
  2. キャリアが打ち消し合った結果、接合部付近にキャリアの少ない領域(空乏層)が形成される。また、電子と正孔をそれぞれn型、p型領域へ引き戻そうとする内蔵電場が生まれる。内蔵電場の発生に伴い、内蔵電場に従ってキャリアが動くドリフト電流も発生する。
  3. 熱平衡状態においては、拡散電流とドリフト電流が釣り合い、フェルミ準位は一定となる。

空乏層においては、n型半導体側は本来存在する伝導電子が不足し、正に帯電する。p型半導体側は正孔が不足し、負に帯電する。このため空乏層は正に帯電した層と負に帯電した層が重なり合った電気二重層を形成する。pn接合の内蔵電場はこの電気二重層の発生に伴うものであり、それによって発生する静電ポテンシャルの差を拡散電位または内蔵電位と言う。例えばシリコン禁制帯幅1.17eV)のpn接合の場合、内蔵電位は0.6~0.7V程度となる。

熱平衡状態は電気二重層による静電ポテンシャルと、電子の濃度差に伴う化学ポテンシャル(電子濃度のポテンシャル)が釣り合った状態と言うことができる。このため熱平衡状態においては、pn接合両端の電圧はゼロである。

pn接合の整流性

pn接合は一方向にのみ電流を流しやすい性質があり、これを整流性という。pn接合ダイオードトランジスタなど各種の半導体素子で利用される。

順方向バイアス時

順方向バイアス時のpn接合ダイオード

pn接合に順方向バイアス(p型側に正電圧)を印加すると、図のように空乏層の内蔵電位(拡散電位)が減少し、ポテンシャルの釣り合いが崩れて拡散電流が増加し、電流が流れる。電極からn型、p型それぞれの領域に注入された電子正孔多数キャリア)は接合領域にて再結合する。通常のシリコン・ダイオードの場合、接合面を通過してさらに10〜100μm程度の領域まで(少数キャリアとして)注入される。

キャリアが禁制帯を超えて再結合する時、再結合エネルギーを熱や光として放出する。この現象を利用したのが発光ダイオード半導体レーザである。逆にいえば順方向電流を流すにはこの分の電圧(禁制帯幅が2電子ボルト(eV)なら、最低2V)を外部から与えてやる必要があることになる。ダイオードを順方向バイアスで用いる場合は、ここから不純物準位等を介した遷移による電圧の低下分を差し引き、また電極でのショットキー障壁による電位差や素子各部での抵抗損失を加えた電圧を与える必要があり、これを順方向電圧降下(または順方向降下電圧)と呼ぶ。順方向電圧降下はシリコンダイオードの場合は0.6〜0.7V程度、ショットキーバリアダイオードの場合で0.2Vである。発光ダイオードでは発光波長や出力によって異なり、1~5V程度になる。

逆方向バイアス時

逆方向バイアス時のpn接合ダイオード

pn接合に逆方向バイアス(n型側に正電圧)を印加すると、n型、p型領域それぞれに於いて、多数キャリア(電子と正孔)が少数キャリア(正孔と電子)の注入によって減少する。これによって空乏層幅が増大すると共に内蔵電位が大きくなり、内蔵電位の増加分が外部からの印加電圧と釣り合った所で平衡に達し、電流が止まる。 実際の素子では、逆バイアス状態でもドリフト電流によってわずかに逆方向電流が流れる。さらに逆方向バイアスを増してゆくと、ツエナー降伏やなだれ降伏を起こして急激に電流が流れるようになる。この時の電圧を(逆方向)降伏電圧と言う。

電流-電圧特性

降伏していない領域におけるpn接合ダイオードの電流と電圧の関係は、Jo を逆方向飽和電流、qを電気素量、Vを電圧、nを理想ダイオード因子、kをボルツマン定数、Tを温度として

J = J_o \Big\{ \exp \Big( \frac{qV}{nkT} \Big) - 1 \Big\}

のように表される。ここで n=1 としたものがpn接合の理想I-V特性である。

pn接合と発光・受光

順バイアス時に於いて、pn接合領域でキャリアの再結合が発生する。この時、禁制帯幅が光子のエネルギーより大きければ、再結合に伴って光が放出される場合がある(発光再結合またはエレクトロルミネセンス)。これを応用した素子が発光ダイオード半導体レーザである。

逆にpn接合領域に禁制帯幅よりも大きなエネルギーの光子などが入射すると、価電子帯から電子が励起されて伝導電子となり、内蔵電場に引かれてドリフト電流を増大させる、光起電力効果内部光電効果)が発生する。これを応用した素子がフォトダイオードフォトトランジスタ太陽電池などである。

伝導帯の底と価電子帯の頂上の間を電子が一気に遷移する際に吸収・放出する光の波長との関係は、光子のエネルギーをE、プランク定数h振動数ν、光速度c波長λ、電荷素量e禁制帯幅をEgとして

E = h\nu = h\frac{c}{\lambda} = E_g

の関係がある。 たとえばキャリアが2.200eV(電子ボルト)のエネルギーを一気に越えて発光再結合した場合、おおよその発光波長は

\lambda = \frac{hc}{E_g} = \frac{6.626 \times 10^{-34} \times 3.000 \times 10^8}{2.200 \times 1.602 \times 10^{-19}} = 5.64 \times 10^{-7} \mbox{m} = 564 \mbox{nm}

の黄緑色と計算できる。 実際には、禁制帯から離れた準位からの遷移や、禁制帯中の不純物準位などを介した遷移も起こるため、発光スペクトルは多少の幅を持つ。これを誘導放出によって1つの波長に揃えるのが半導体レーザである。

なお一般に、発光ダイオードなどに光を当てても、ごく僅かだが光起電力が発生する。逆に、一般的なフォトダイオード太陽電池に電圧を印加しても、禁制帯幅が小さいために赤外域での発光になったり、熱になって殆ど発光しない場合が多い(素子を破壊する可能性が高いので、迂闊に試すのは避けるべきである)。






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