W-スピン 適性

W-スピン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/23 09:19 UTC 版)

適性

このダブルスピン投法に即した肉体の推察を進めていくと、ダブルスピンに向いた体格とそうでない場合がある。

ダブルスピンに適している体格は肩幅が狭く、細身で長身、手足が長く、骨格筋は柔軟で回旋を伴う肩関節の可動域は広い方がダブルスピン的な投球を再現し易い。その逆の手足が短く骨格筋は出力が大きくとも、柔軟性に欠ける場合や、関節可動域が狭い場合、は前述した二重振り子や、遠心力投げの投法になり易い。現実の野球でも細身の好投手の存在は目立つ。[3]

エッセンシャルモーション

ダブルスピン投法必須動作

ダブルスピン投法を引き出すためには六つの必須動作がある。[4]

  • 「根を生やして」
  • 「エッジング」
  • 「架けて」
  • 「うねり上げて」
  • 「射して」
  • 「絞り潰して」

「根を生やして」〜「エッジング」は重心移動に関する動作である。投球動作のスタビリティを確保するのに一役買ってくれる。

「架けて」〜「うねり上げて」は投手の腕を足先と連動させるための動作である。「架けて」のシーンで投手の腕から足までアルファベットのCの形が作られる。この動作を誘発する事により、担ぎ投げ、または二重振り子とされる投げ方を防止する役割を持つ。その際ボールを持つ側の腕が何かを引っ掻くような動き=スクラッチモーションの出現が生まれればこの時点で脊柱、上腕骨ら二つの回旋動作が同調的。故にW-スピン投法はこの時点で成立。「うねり上げて」では骨盤の回旋を土踏まずと踵の経を利用し、骨格主導のピッチングを実現させる動作である。

「射して」はMES(ループ・モーション)のシーンで肘が投げるべき方向(ターゲット)に向いているかどうかというチェックポイントである。この動作が不完全であれば、故障のリスクを負ったり、投げた球の制球が安定しないケースが見られる。MESのシーンにおいては前腕が回外を保持できなければ利き腕の内側側副靱帯に多大なストレスを与えてしまうケースが存在するとされる。

「絞り潰して」は体重移動の移し替え動作である。投手の足が(右投手の場合)三塁側へ突っ張るのではなく、一塁側へクロスオーバーステップするかのような、深く、安定した1stスピンを引き出す為の意識付けである。ダブルスピン投法において、140km/hを超え高速でスウィングされる末端部は腕部の随意運動によって制御出来る限界を超えているとされる。そのため、上半身を振るのは常に下半身であるという見解を手塚は終始一貫して記述している。そのため上半身に対して具体的に何かを指示する記述は存在しない。

ダブルスピン打法必須動作

ダブルスピン打法を引き出すためには七つの必須動作がある。[5]

  • 「揺らいで」
  • 「踏んで」(シンクロ打法)
  • 「乗せて」
  • 「運んで」
  • 「割れて」
  • 「うねって」(うねり打法)
  • 「納め獲る」

「揺らいで」は打撃準備中に、制止したままであるとその後の動作の筋出力が低下してしまうためである。その弊害を防ぐ為に、サッカーのゴールキーパーのように左右に体重を移し替えてサイレント・ピリオドを誘発させる為の動作である。

「踏んで」〜「乗せて」は投手の重心の上下動に対応するシンクロ打法をセットするための動作である。

「運んで」〜「割れて」は打者の投手方向への重心移動である。「割れて」ではバットのグリップエンドを捕手の方向に保持する事によって打者の腹、背筋を含めたRSSCを利用するための動作である。RSSCを重心移動と連動させる事によりスムーズな運動回路が発揮される。このシーンは投手の「架けて」のシーンに相当する。

「うねって」ではうねり打法を実現するための動作である。土踏まずと踵の浮かし具合を骨盤の可動とリンクさせる事により、打者の間合い制御能が向上するとされる。

「納め獲る」は打撃のフィニッシュである。150km/hを超えるとされ、高速度であるバットの末端を意識する事は不要な力みを誘発する危険性が孕む。そのため、インパクトを意識せず、飛び越してフィニッシュのポジションにまで意識をスキップさせる事により、スムーズな打撃動作を実現させようという意識付けである。

以上の動作を確実に身につけるため、各項目毎に上達屋から指導用のビデオが発売されている。ダブルスピン実現のためにこの項目は重要な判断基準になりえる。現在、上達屋では「クオ・メソッド」が実用化されているが、それを実現出来れば、股関節を中心として、軸を伝わり、(キネティック・チェーン)その結果、自然と必須動作が再現されるという構造になっている。

ジャイロハンドスロー

ジャイロハンドスローとはピッチングにおいて、ダブルスピン原理に則り、なおかつ人体に無理のない自然なスウィングスタイルを手塚が模索し、構築した新たな概念である。オーバースローや、アンダースローといった従来の投法の区分は地面を基準にした水平角度から腕の振り出し角度との差によって決定されていたものであるが、このジャイロハンドスローは腕の振り出し角によって決定されるものではなく、投球中発生する3つの力(重力、慣性力)、肩腕部の自発的な回旋トルク(RSSC)=筋出力「肩腕部の随意的な筋力発揮によって抗わない。」振り出す腕の角度を「骨盤の傾斜角、運動合成に依存させる。」コントロールやスピードを、「骨盤の繰り方で、調整する。」=「1stスピンの制御で対応する。」または下半身から連鎖する「スパイラル・キネティックチェーンをスポイルしない。」その投げる本人が「最も末端部を振り抜けるポジショニング。」=「RSSCによる2ndスピン。」その結果として、ジャイロボールを操るに長けた投法。」を実現させようというものである。つまり、見かけ上はオーバースローやアンダースローの投手がいたとしても、前述した条件に当てはまっているならば、それは立派なジャイロハンドスローそのものなのである。

ジャイロハンドスローとして手塚がイメージアップの提案に用いた選手は、ランディ・ジョンソンペドロ・マルティネス斎藤雅樹渡辺俊介らである。

手塚にとって初めての指導書となった「手塚一志の上達道場 ピッチングの巻」においてはこのジャイロハンドスローを三つの意識と一つのイメージによって実現可能と指導されていた。以前はあくまでも解説として用いられる用語のままに説明、誘導がなされていたが、今回は投手の立場に立った視点での実用的なピッチングのハウツーが描かれる。書籍では、極力、絵やCGを用いてイメージを隆起させるような配慮がなされており、実際の写真を扱わない事によって実際の意識と動きのギャップによってバランスを崩さないようにとの措置が執られている。無論以前から提唱されていた必須モーションを押える事も可能であるし、ジャイロハンドスローもダブルスピン投法の一つである事に違いはない。

三つの意識と一つのイメージ

  • 「かませ」
  • 「隠し」
  • 「ズバッ」

(以上意識)

  • 「パンチング」(イメージ)

かませ」から「隠し」は重心移動に関する意識である。下半身主導のピッチングを実現するために望ましい動作、格好を演出する意識の事である。「ズバッ」は骨盤の反転動作に伴う腕の振り抜けの一連の動作である。「パンチング」はピッチングの際に極力、悪影響を出さないように工夫したイメージづけのモデルであり、投げ手にピッチングの実現のための「像」を植え付ける事によって腕の力みを取り除く効果が働く。例としては、ネコパンチやチョップといった軽やかな印象を持つ性質の動作をイメージのモデルとして採用されている。このパンチングの感覚やコツを掴むために、最適なルートを通過した時にだけ笛が鳴る「インナリングスティック」が上達屋より開発、発売され、実用化された。2004年から上達屋にモデルチェンジの依頼をし、飛躍を遂げた黒田博樹はスティックを用いたトレーニングで「未体験の開放感」感想を述べた。


  1. ^ 手塚一志『プロ野球 バッティング&ピッチング解体振書』ISBN 4-569-66181-5、181〜184ページ。
  2. ^ ジャイロボール
  3. ^ ピッチングの正体
  4. ^ プロ野球ピッチング解体振書
  5. ^ プロ野球バッティング解体振書





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