E-8 (航空機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 06:47 UTC 版)
概要
E-8 J-STARSは、中古のボーイング707-320を買い上げたうえで、ノースロップ・グラマンが任務に必要な装備を追加するという方式で製造された。1985年より開発が開始され[1]、母機となる2機が取得された。初飛行は1988年12月22日で、実用的な改修を経た作戦能力獲得後、1999年には旧ユーゴスラビア解体に伴う諸紛争においてNATO主導で実施されたアライド・フォース作戦や、21世紀に入ってからのイラク戦争などで実戦において活躍している[1]。
前部胴体の下に、細長いフェアリングを設け、ここに対地監視用の側方監視レーダー・AN/APY-3を装備している[1]。これを使用することにより、地上にいる車輌の動きがリアルタイムで機上のコンソール画面に表示される。このAN/APY-3は、地上の精密な観測を目的とした合成開口レーダーモードと、移動目標の追尾を優先させたドップラー・レーダーモードを使い分けることができる。後者は高速な走査ができる反面、精密な監視を苦手とするが、それでも車両速度などによって装輪車と装軌車を区別出来る場合もあるといわれる。かつてはレーダーの性能が不足しているため、地上車輌のような小型目標を捕捉・追尾するのは難しかったが、精度の高いビームを発振可能になり、さらに、得られた情報を処理するコンピュータの高性能化が実現したため、実戦投入できるようになった。
E-3やE-767が航空機の動きを探知するのに対し、E-8は地上の車輌に目を配る。また、車輌の移動パターンを基にして、相手が何者なのかを推測することができる。当然、敵にとっては重要目標になるため、この機体は厳重な護衛を必要とする。ただ、E-8が収集したデータは無線を通じて口頭で伝えられるため、聞き間違いをする可能性があり、また、地上の各戦闘員は自身で状況を組み立てる必要がある。この「人間の介在」が問題点である。陸上戦における新時代を切り拓いたE-8は、冷戦終結における西側諸国の勝利に貢献したが、本格的な非正規戦争に直面した2010年頃からは、無人偵察機との連携も含めた迅速かつ高度なデジタル化が可能となる後継機種が構想されている。
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