私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 09:17 UTC 版)
エンフォースメント(法の執行)
排除措置命令
平成17年改正後は排除措置命令(事前手続あり)が出た時点から効力が発生し、争う者は審判請求をおこなって審判手続に移行することとなった(供託金を積むことによる執行停止制度が存在)。
排除措置命令は現在行われている行為に対するのみならず、行為がなくなってから3年を経過していない場合は「特に必要があると認めるとき」に限り排除措置命令を出すことが可能となった。
確定した排除措置命令に違反した者には2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科が可能)に処せられ、法人については3億円以下の罰金(私的独占、不当な取引制限においては差止めを命ぜられた部分以外については、300万円以下)の両罰規定が設けられている。なお、確定前(確定後でも過料に処すことは可能)は50万円以下の過料に処せられる。
課徴金納付命令
不当な取引制限(価格にかかるものや価格に影響を与える行為に限る)、私的独占(支配型で対価に関わらないものは除く)、不公正な取引制限(法で直接規定されている行為に限り、1号から4号違反(不当廉売等)は10年以内に排除措置命令を受けている者、5号は継続しているものに限定)に対し課徴金納付命令の制度が設けられている。
課徴金の額は、原則売上額の10%(小売業3%、卸売業2%)とされている。中小企業については4%(小売業1.2%、卸売業1%)である。ただし、排除型私的独占は6%(小売業2%、卸売業1%)。なお、継続期間が2年以内(他に要件あり)の行為については、20%減額、10年以内に違反行為をしている者や主導的に関与し悪質な行為に関与した者には50%増額の規定が設けられている(両方の要件に該当する場合は課徴金は100%増額となる。)。なお、罰金の確定判決がある場合は罰金額の半額が控除される。
1号から4号違反(不当廉売等)の不公正な取引制限は3%(小売業2%、卸売業1%)、5号違反(優越的地位の濫用)の不公正な取引制限は1%であり、上記の減増額規定の適用はない。
課徴金減免制度(リーニエンシー)
公正取引委員会に対して、規則に基づき不公正な取引制限に関して、調査開始日以前において単独で違反行為を申告した事業者について(他に要件あり)は、課徴金が1番目については全額免除、2番目については半額免除、3番目から5番目(ただし、4番目及び5番目については新事実を申告した場合に限る。)については30%免除となり、調査開始日(それ以降も含む)に申告した者でまだ5番目まで枠が埋まっていないとき(ただし調査開始日以後に申告を行った事業での減額は3者以内に限定)は30%減額となる。なお、調査開始日以後は違反行為を止めていることが条件である。
ちなみに、申告のFAX番号は03-3581-5599である。
刑事罰
公正取引委員会の告発がないと、主要な違反類型については処罰できない(96条)。
主要な違反類型として次のものがある。
- 不当な取引制限や私的独占をした者に対しては5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられ、法人等に対しては5億円以下の罰金の両罰規定等が存在する(未遂罪も罰する)。
- 確定した排除措置命令(独占的状態に対する確定した審決も含み、私的独占、不当な取引制限に対するものについては差止めを命ずる部分に限る)に違反した者に対しては2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられ、法人等に対しては3億円以下の罰金の両罰規定等が規定されている。
なお、これらに罰則においては懲役と罰金を併科することができる。さらに、事業者団体の解散宣告や特許権の取消等の宣告をすることができる場合が存在する。
民事訴訟(差止め・損害賠償)
不公正な取引方法によってその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより「著しい損害」を生じ、又は生じるおそれがあるときに限り、その利益を侵害する事業者等に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(24条)。
私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法により排除措置命令(又は課徴金納付命令)がされた事業者は、被害者に対し無過失責任を負う(時効は命令等が確定後3年)(25条)。なお、この条に基づく損害賠償請求訴訟は、東京高等裁判所の専属管轄である。
また、独禁法25条によることなく、独禁法違反の行為が民法709条の不法行為に該当するときは、被害者は民法709条に基づいて損害賠償請求もできる。この場合は、被害者は故意過失をも立証しなければならない。
- ^ 日本法令外国語訳データベースシステム; 日本法令外国語訳推進会議 (2015年9月10日). “日本法令外国語訳データベースシステム-私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律” [Act on Prohibition of Private Monopolization and Maintenance of Fair Trade]. 法務省. p. 1. 2017年6月17日閲覧。
- ^ いわゆる主婦連ジュース事件に関する最高裁昭和53年3月14日判決民集32巻2号211頁を参照。
- ^ “審判官:公正取引委員会”. www.jftc.go.jp. 2022年6月6日閲覧。
固有名詞の分類
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