平行 空間幾何

平行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/21 14:35 UTC 版)

空間幾何

空間直線同士の場合
同一の三次元空間内にある二直線が互いに交わらないとき、それらは平行とは限らない。それらが平行となるのは、それらが同一平面上にある場合に限る。そうでないとき、それらはねじれの位置にある。
三次元空間内の相異なる直線 l, m が平行となるための必要十分条件は、m 上の点 P から測った l 上の最も近い点への距離が、P のとり方に依らないことである。これはねじれの位置にある場合には絶対に成り立たない。
直線と平面の場合
同じ三次元空間内にある直線 m と平面 q で、m が平面 q 上にないとき、それらが平行となる必要十分条件は、それらが交わらないことである。
もちろん、それらが平行であるための必要十分条件を、m 上の任意の点 P から測った q 上の最も近い点への距離が P の位置のとり方に依らないことと述べることもできる。
平面同士の場合
「互いに平行となる必要十分条件がそれらが共有点を持たないことである」という同一平面上の平行線に対すると同様の事実が、同一三次元空間内の平行面に対しても成立する。
また、同一三次元空間内の相異なる二つの平面 q, r が平行となる必要十分条件は、平面 q 上の点 P から平面 r 上の最も近い点へ測った距離が P の位置の選び方に依らないことである。このことは、より高次の空間内で考える場合には、同一三次元空間内にない二つの平面では成り立たない。

反射的な平行性

綜合的アフィン幾何学において、直線が互いに平行であるという関係は、ユークリッド幾何学における用法からやや修正した基本概念である。平行性が対称かつ推移的関係であることは明らかであり、それが反射的ならば同値関係が定まる。ふつう、ユークリッド幾何学において直線は自分自身と平行とは考えないが、アフィン幾何学においては自分自身と平行(したがって同値関係を成す)と考える[12]:192[13]:17 のが便利である。

この種の平行関係を記述する別の方法は、交わり一点でない交線も考えることである。すなわち、二つの直線が互いに平行とは、それらの全ての点が共通点であるか、さもなくば共有点が一つもないこととする。このことは、アフィン幾何学およびユークリッド幾何学で用いられるプレイフェアの公理では、平行関係が平面上の直線全体の成す集合上の推移的関係を成すという主張に同値であるとの注意がある[14]:372

非ユークリッド幾何における平行性

非ユークリッド幾何学においては、直線の代わりに測地線に対して述べるのがより一般的で、測地線の意味で「直線」の語がしばしば用いられる。測地線とはすなわち与えられた幾何における二点間の最短経路を意味する。楕円幾何双曲幾何では、上で述べた三性質は互いに同値ではなく、特に長さや角度を測る操作を含まないものだけが非ユークリッド幾何においても有効である。三性質は、このような一般の幾何においては、それぞれ等距離を保つ曲線 (equidistant curves), 互いに平行な測地線 (parallel geodesics), 共通垂線を持つ測地線 (geodesics sharing a common perpendicular) という異なる種類の関係を定める。

双曲幾何

ユークリッド幾何学において二つの測地線(直線)は交わるか平行の二択しかないが、双曲幾何学では選択肢は三つある。すなわち、同一平面上にある二つの測地線は:

  1. 交わる: その平面内の一つの共有点でそれらは交わる;
  2. 平行: 平面内では交点を持たないが、共通の無限遠点に収束する(無限遠点で交わる);
  3. 超平行: 極限において共通の無限遠点を持たない

文献によっては「超平行」(ultra parallel) な測地線は「交わらない」という言い方もしばしば用いられる。「無限遠点で交わる」測地線は漸近的平行線英語版ともいう。

直線 l 上にない点 a を通る漸近的平行線は二つ存在し、それぞれ l の各方向における理想点(無限遠点)英語版に対応している。この二つの直線は、l に交わる直線と、l に超平行な直線とを隔てる境界線になっている。

超平行線は共通垂線をただ一つ持ち(超平行定理英語版)、この共通垂線の両側で発散する。

楕円幾何

球面幾何における測地線は大円であり、大円は球面を二つの等しい半球面に分割、またどの二つの大円も互いに交わる。したがって、与えられた測地線に平行は測地線は存在せず、すべて交わる測地線に分類される。球面上の互いに距離を保つ曲線を平行緯線 (parallels of latitude) と呼ぶ。互いに平行な緯線は、球面の中心を通る平面に平行な平面とその球面との交わりによって生成される。


注釈

  1. ^ 平行線公準は直線が互いに交わる場合のみ言及しているけれども、それはプレイフェアの公理の意味での平行線の一意性を示すことが必要な内容である
  2. ^ 三番目のみが定木とコンパスを用いた作図であり、前二つは「無限回の手順」を要する無限作図になる

出典

  1. ^ a b Heath 1956, pp. 190–194.
  2. ^ Richards 1988, pp. 161–200, Chap. 4: Euclid and the English Schoolchild..
  3. ^ Carroll, Lewis (2009) [1879], Euclid and His Modern Rivals, Barnes & Noble, ISBN 978-1-4351-2348-9 
  4. ^ Wilson 1868.
  5. ^ Einführung in die Grundlagen der Geometrie, I, p. 5
  6. ^ Heath 1956, p. 194.
  7. ^ Wilson 1868, p. 2.
  8. ^ Wilson 1868, p. 12.
  9. ^ Richards 1988, pp. 180–184.
  10. ^ Heath 1956.
  11. ^ Wylie, Jr. 1964, pp. 92–94.
  12. ^ Coxeter, H. S. M. (1961), Introduction to Geometry, John Wiley & Sons 
  13. ^ Szmielew, Wanda (1983), From Affine to Euclidean Geometry, D. Reidel, ISBN 90-277-1243-3 
  14. ^ Liu, Andy (2011), “Is parallelism an equivalence relation?”, The College Mathematics Journal 42 (5) 






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