動物学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/02 21:43 UTC 版)
19世紀
19世紀には、生物学の様々な分野が大きく変化した。顕微鏡を使用した研究方法は、技術的革新と共に一定の結果を蓄積するようになり、動物の構造を器官から組織や細胞のレベルで調べることが当たり前になり始めた。それに基づき、生物は細胞から構成されるという細胞説も確立した。この世紀の後半には細胞内の構造が追究されるようになった。ゴルジ体や中心体などの発見はこの時期である。組織や細胞に関する様々な特徴は、電子顕微鏡レベルを除いてはこの世紀の末には、一旦はほぼ完成したと言っていいだろう。
また、化学分野の発展に基づいて、生物体内における化学についても追究が行われるようになった。尿素の人工合成や血糖量調節に関する研究が行われた。より基本的な細胞内の化学的過程である酵素作用や呼吸などの研究は、むしろ微生物を対象にこの世紀の後半から始まる。これは、いわば目に見える生物に関する記述から生物一般の基本的性質の科学へと生物学が変化し始めたとも取れる。
発生学の分野でも変動が大きい。細胞説の成立を受けて、発生をそこから見直す流れが生まれ、フォン=ベーアによってヒトの卵が確認され、様々な動物の卵からの発生が観察された。これらの知識を元に、様々な動物の発生を比較し、そこから知見を得ようという流れが比較発生学と呼ばれる。これは比較形態学の流れをくむものでもある。それを進化論的にまとめようとしたのがエルンスト・ヘッケルの反復説であった。しかし、それに飽きたらず、発生の機構そのものを解明しようとする動きが生じ、いわゆる実験発生学の流れが生まれる。
進化論はすでに発表され、多くの学者に論じられながらも力を得ることはできなかったが、チャールズ・ダーウィンによる自然選択説は、それまでの諸説やそれに対する反対を打ち砕くだけの説得力を持ち、生物学のみならず、多くの分野に影響を与えることとなった。少なくとも生物学の中では、様々な現象を進化の概念抜きでは論じられなくなった。グレゴール・ヨハン・メンデルによる遺伝法則の発見もこの世紀の大発見ではあるが、それが注目を浴びたのは19世紀最後の年であり、遺伝学そのものの発展は20世紀に持ち越される。これは、染色体など、生殖に関する細胞学レベルの研究が未だ十分になされていなかった点も大きい。
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