修道女フィデルマシリーズ 修道女フィデルマシリーズの概要

修道女フィデルマシリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/27 06:47 UTC 版)

7世紀アイルランド・モアン王国(現在のマンスター地方)を舞台に、修道女で王の妹、弁護士裁判官の資格も持つ美貌の女性フィデルマが探偵役を務めるシリーズ。1993年に発表された短編「まどろみの中の殺人」で初登場。

シリーズ一覧

# 邦題 原題 刊行年月
刊行年月
ISBN レーベル 訳者 備考
1 死をもちて赦されん Absolution By Murder 1994年9月 2011年1月 ISBN 978-4-488-21815-7 東京創元社創元推理文庫 甲斐萬里江
2 サクソンの司教冠(ミトラ) Shroud for the Archbishop 1995年1月 2012年3月 ISBN 978-4-488-21816-4 巻末解説:若竹七海
3 幼き子らよ、我がもとへ Suffer Little Children 1995年10月 2007年9月 [上] ISBN 978-4-488-21809-6
[下] ISBN 978-4-488-21810-2
訳者あとがき
4 蛇、もっとも禍し The Subtle Serpent 1996年7月 2009年11月 [上] ISBN 978-4-488-21812-6
[下] ISBN 978-4-488-21813-3
巻末解説:田中芳樹
5 蜘蛛の巣 The Spider's Web 1997年4月 2006年10月 [上] ISBN 978-4-488-21807-2
[下] ISBN 978-4-488-21808-9
訳者あとがき
6 翳深き谷 Valley of the Shadow 1998年4月 2013年12月 [上] ISBN 978-4-488-21818-8
[下] ISBN 978-4-488-21819-5
巻末解説:酒井貞道
7 消えた修道士 The Monk Who Vanished 1999年2月 2015年11月 [上] ISBN 978-4-488-21820-1
[下] ISBN 978-4-488-21821-8
巻末解説:若林踏
8 憐れみをなす者 Act of Mercy 1999年11月 2021年2月 [上] ISBN 978-4-488-21823-2

[下] ISBN 978-4-488-21824-9

田村美佐子 訳者あとがき
9 修道女フィデルマの叡智 Hemlock At Vespers
(短編集)
2000年3月 2009年6月 ISBN 978-4-488-21811-9 甲斐萬里江 巻末解説:村上貴史
修道女フィデルマの洞察 2010年6月 ISBN 978-4-488-21814-0 巻末解説:川出正樹
修道女フィデルマの探求 2012年12月 ISBN 978-4-488-21817-1 訳者あとがき
10 昏き聖母 Our Lady of Darkness 2000年9月 2023年3月 [上]ISBN 978-4-488-21826-3 [下]ISBN 978-4-488-21827-0 田村美佐子 訳者あとがき
11 Smoke in the Wind 2001年9月
12 The Haunted Abbot 2002年9月
13 Badger's Moon 2003年9月
14 修道女フィデルマの采配 Whispers of the Dead
(短編集)
2004年5月 2022年2月 ISBN 978-4-488-21825-6 東京創元社〈創元推理文庫〉 田村美佐子 巻末解説:石井千湖
15 The Leper's Bell 2004年9月
16 Master of Souls 2005年9月
17 A Prayer for the Damned 2006年9月
18 Dancing with Demons 2007年9月
19 The Council of the Cursed 2008年7月
20 The Dove of Death 2009年7月
21 The Chalice of Blood 2010年7月
22 Behold a Pale Horse 2011年7月
23 The Seventh Trumpet 2012年7月
24 Atonement Of Blood
25 The Devil's Seal
26 The Second Death
27 Penance of the Damned
28 The Lair of the White Fox
29 Night of the Lightbringer 2018年5月
30 Bloodmoon 2018年9月
31 Blood in Eden 2019年7月
32 The Shapeshifter's Lair 2020年9月
短編集
# 収録作品(原題) 初出 邦題 舞台 収録先
Hemlock At Vespers(2000年3月)
01 Murder in Repose 1993年 まどろみの中の殺人 モアン王国のキャシャル 洞察
02 Murder by Miracle 1993年 奇蹟ゆえの死 モアン王国南西部の小島 洞察
03 Tarnished Halo 汚(けが)れた光輪(ヘイロウ) 探求
04 Abbey Sinister 不吉なる僧院 探求
05 Our Lady of Death 2000年 旅籠の幽霊 モアン王国のコメーラ山脈 叡智
06 Hemlock at Vespers 1993年 晩祷の毒人参 ラーハン王国のキルデア 洞察
07 At the Tent of Holofernes 1997年 ホロフェルネスの幕舎(ばくしゃ) ラーハン王国のオー・ドローナ 叡智
08 A Canticle for Wulfstan ウルフスタンへの頌歌(カンティクル) 探求
09 The High King's Sword 1993年 大王の剣 タラ 叡智
10 The Poisoned Chalice 1996年 聖餐式の毒杯 ローマ 叡智
11 Holy Blood ゲルトルーディスの聖なる血 探求
12 A Scream from the Sepulchre 1998年 大王廟の悲鳴 タラ 叡智
13 The Horse That Died for Shame 1995年 名馬の死 ラーハン王国 洞察
14 Invitation to a Poisoning 1998年 毒殺への誘い モアン王国のムスクレイガ 洞察
15 Those That Trespass 道に惑(まど)いて
(罪、犯せし者たち[1]
探求
Whispers of the Dead(2004年5月)
01 Whispers of the Dead
02 Corpse on a Holy Day
03 The Astrologer Who Predicted His Own Murder みずからの殺害を予言した占星術師
(自分の殺害を予言した占星術師[2]
采配
04 The Blemish
05 Dark Moon Rising
06 Like a Dog Returning...
07 The Banshee
08 The Heir-Apparent 法廷推定相続人 采配
09 Who Stole the Fish? 魚泥棒は誰だ 采配
10 Cry "Wolf!" 「狼だ!」 采配
11 Scattered Thorns
12 Gold at Night
13 Death of an Icon
14 The Fosterer 養い親 采配
15 The Lost Eagle

作品の舞台・背景

エール五王国
アイルランド五王国のこと。7世紀のアイルランドは、モアン(現マンスター)、ラーハン(現レンスター)、オラー(現アルスター)、コナハト(現コノート)の四王国と、大王(ハイ・キング)が政を行う都タラがあるミースの5つに分かれていた。
モアン王国
五王国の中で最大の王国。首都はキャシェル。現在のマンスター地方。7世紀のモアン王国は、現在のクレアケリーリメリックコークティペラリーの五県辺り。マンスターという名称は9世紀になってからの造語である[3]
ラーハン王国
現在のレンスター地方。モアン王国に次ぐ勢力を誇り、モアンと対立関係にある国。フィデルマが所属するキルデアの修道院はラーハン王国内にある。
宗教の違い
アイルランドに古来から伝わる多神教ケルト系キリスト教、5世紀に伝わったキリスト教ローマ派)のせめぎ合いも作品の主題の一つとして書かれる。舞台となる7世紀のアイルランドのケルト教会の典礼や思想は多くの点でローマ教会と異なっていた。
フィデルマの恋愛
聖職者の独身主義がそれほど広く支持されていた慣行ではなかった点はケルト教会・ローマ教会に共通し、キリスト教を信仰しながら、結婚し子供を育てることはしばしばあった。フィデルマの実らなかった初恋に起因する男性に対する見方、新たな恋の始まり、結婚・妊娠なども描かれる。
男女の権利・社会的地位
古代アイルランド社会では、女性は多くの面で男性とほぼ同等の地位や権利を認められていた。宗教施設(修道院など)では男女を区別することなく受け入れ、女性も、男女共学の最高学府で学ぶことができ、高位の公的地位に就くことができた。
アイルランドには、長子相続や世襲制度といった慣習はなく、最も優れた人間が上に立つべきだとブレホン法で定められている。王や族長が薨去したり廃位させられたりした際に後継者争いが生じるのを避けるために、彼らの在位中にターニシュタと呼ばれる次期継承者を予め選出しておく。
キルデアの修道院
フィデルマが所属する修道院。聖女ブリジットによってアイルランド最初の女子修道院として建立された。後に供住修道院へ変わる[4]

  1. ^ 『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』2010年9月号に掲載された際の邦題(翻訳:吉嶺英美)
  2. ^ 『ホロスコープは死を招く』(2006年6月 ヴィレッジブックス)に掲載された際の邦題(翻訳:山本やよい
  3. ^ 作者は原則的に時代錯誤的な地名を用いることを避け、なるべく読者によりなじみのある地名を用いている。タヴァル→タラ、カシル→キャシェル、アルド・マハ→アーマーなど。しかし、マンスターやレンスターのように9世紀になってから生まれた単語は、モアンやラーハンという古名を用いている。
  4. ^ 「まどろみの中の殺人」で修道士も所属している旨が述べられている。
  5. ^ 『幼き子らよ、我がもとへ』の中で「26年前に亡くなった」という記述がある。
  6. ^ フィデルマはアード・マハの巡礼途上から会議へ召集された。


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