メスキータ 特徴

メスキータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/01 02:32 UTC 版)

特徴

コルドバのメスキータ(聖マリア大聖堂)
礼拝の間
ミフラーブ(聖龕)

メスキータは大きく3つの構成要素からなる。

  • アミナール (Aminar) - 回教寺院の「塔」
  • オレンジの木のパティオ (El Patio de los Naranjos) - 礼拝者が体を清めるための沐浴を行う清めの「中庭」。
  • 「礼拝の間」 - (Prayer Hall) - 無数の柱が森のように広がる祈りの場

礼拝の間にはキブリ壁 (muro Kibli) といわれるメッカのカーバ (Kabah) 神殿の方向を指し示す壁が正面にあり、目印となるミフラーブ (Mihrab) と呼ばれる小さな窪みが設けられている。

モスクは、イスラムの教義「すべての人は神の前で平等である」にもとづき、聖地メッカのカーバ神殿の方向に一人一人が祈りをささげる場所である。礼拝の間はこの教義をそのまま形にしたといえる。多数の柱によって支えられた空間は、無限に連続してゆく祈りのための均質な広がりとなっている。空間を支える無数の円柱は、世界各地から集められた時代、様式、場所の異なる他の建物から転用されたものである。この転用されたために寸足らずとなった円柱の上部に10m程度の高い天井を支えるための工夫が、特徴となる2重アーチを生んだ。メリダにあるローマの水道橋を参考にしたとされるこの2重アーチは、赤いレンガと白の石灰岩を交互に楔状に配した構成となっている。

歴代の王は、人口の増加と共にメスキータの拡張を図っていった。外壁を壊し、多柱の空間を水平に拡張していった。最終的に、外周は約175m×135mの広がりとなり2万5千人もの回教徒を収容する規模まで達した。各時代の拡張の中で、最も重要なのはアルハキム2世の時代の拡張(961年-968年)である。この時代、王はカリフを自称し、イベリア半島のイスラム国家は、政治、宗教の両面で独立を遂げた。その権力の象徴として現存するミフラーブと共に王が礼拝するマクスーラ(貴賓席)が設けられたのである。マクスーラ上部のキューポラ(cupula: 天蓋)は正方形に組まれたリブ状のアーチを45度の角度で回転複写させた星型の架構となっている。この重いキューポラを支える交差する多弁型(多くのアーチが集合した形態)のアーチは全体を支配する同一の柱間の統制の中にあって、豊かな装飾性を生み出している。このマクスーラ部分は、他の柱間の平天井部分においても松の板に幾何学模様の彫刻が施されている。メスキータ全体を統制する建物の幾何学は、各時代ともラサッシ (rassasi) と呼ばれる47.5cmのモデュールに基づいて行われ、このモデュールが最後にカトリック寺院として改修されるまで守られてゆく。

メスキータの周囲は、10m程度の高い塀で囲われている。オレンジ・コートは、周囲を壁(最終的には回廊となる)で囲まれた内部化された外部空間である。沐浴の場、オレンジの並木は礼拝の間の柱がそのまま連続して外部につながってゆくように柱の延長上に規則的に配されている。かつては、ナツメヤシ、月桂樹の並木であった。樹の周囲に円形に掘られた溝が並び、各列でつなげられた潅水のための水路が配置されている。カトリックの教会として転用される以前は、このオレンジ・コートと礼拝堂の間の壁はふさがれておらず、19の開口により連続するものであった。ここで信者は、水によって五感を清め、流れるように礼拝の間へ進んでいったのである。礼拝の間の床は、当初は漆喰であった。今日では大理石が敷き詰められている。

1236年、フェルナンド3世によりコルドバが征服されると、メスキータはキリスト教の礼拝堂として使われ始める。16世紀に入り、内部には大聖堂が建設されることによってメスキータは大きな転機を迎える。求心的なカトリックの祈りの空間がこの空間に挿入される。


  1. ^ 中島智章 『世界で一番美しい天井装飾』エクスナレッジ、2015年、74頁。ISBN 978-4-7678-2002-6 
  2. ^ 新建築社 『NHK 夢の美術館 世界の名建築100選』新建築社、2008年、88頁。ISBN 978-4-7869-0219-2 
  3. ^ 羽田, p. 93-97.






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