ボンドサイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 09:38 UTC 版)
原因
急激な温暖化が起こる直前にできるハインリッヒ・イベントの厚い部分は、ハドソン湾の中やその周囲によく見られるがほかではめったに見られない。地球の軌道が傾き、北半球に太陽光線がほとんど届かなくなると、ハドソン湾周辺のカナダ高地の氷床に雪が積もり始める。気温が温暖になっても毎年の平均気温は氷点下で地下には一年中凍ったままの層がある。氷床が氷期の積雪をたくさん溜めて厚くなってくると、冷たい氷はゆっくりと高地から拡がりハドソン湾を満たした。そのハドソン湾を満たした氷が湾底の泥や石を凍結させた。そして陸の上に多くの氷が積み上げられるとより地熱を捉えがちになる。そして氷の層がある一定以上厚くなると地熱を捉えすぎた湾底の氷が実際に溶け出してしまう。すると泥、石、そして水が働いて氷床が氷山となって北大西洋に流入し、泥と石を落としていく。この時落ちた泥と石が混ざった層がハインリッヒ・イベントである。
ハドソン湾はほんの二、三百年で何千年もかけて厚くなった氷を放出してしまう。そしてまた氷が薄くなると冷たい氷床は湾底に移動し凍結する。すると氷の動きはほぼ停止し、また新たな氷床が次の周期に向けて成長し始める。ハドソン湾内の氷床の何千年もかけての生長と、たった二、三百年の縮小がボンド周期のゆっくりとした寒冷化の後の急激な温暖化の原因である。
つまり、ハドソン湾内で氷床がゆっくりと生長している間に巨大な氷が風を押しやり、触れた冷気が周囲を冷やし、一気に氷床が一掃されたあとは周囲が暖かくなるのを助長したということである。
日本におけるボンドサイクルの影響
沖縄県伊江島の海底洞窟に見られる微小二枚貝の殻の酸素同位体比を測定したところ約100年に1回の高酸素同位体比多発現象がみられた。これは10度近い水温の低下が起きたことを意味する。この高酸素同位体比多発現象が見られる時期はちょうど北大西洋におけるボンドサイクルが起きた時期と同じである。つまり、約1500年周期で訪れる温暖化の周期に伴いブロッキング現象が発生し、冬期モンスーンが強化された結果、沖縄海域の海水は低下し塩分が増加したことが記録された酸素同位体比ができたと考えられている。
他にも三内丸山遺跡の衰退(紀元前2200年頃)との関連性が議論されている。
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