テネイシン 発見

テネイシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/25 01:09 UTC 版)

発見

1984年、米国のH・P・エリックソンとJ・L・イングレシアスが細胞性フィブロネクチン標品を電子顕微鏡で観察し、フィブロネクチンとは別の、6本の腕をもつ巨大な分子を発見したのが最初である。「6本の(hexa)」「上腕のような(brachi-)」にちなんで、ヘキサブラキオン(hexabrachion)と命名した[1]

1984年スイスのマティアス・シーケーは、ニワトリ筋肉の発達過程を研究し、モノクローナル抗体で筋肉や腱の発達時に見られる新しい分子として筋腱抗原を発見した。1985年、シーケーは細胞性フィブロネクチンの研究をしていたスイス連邦工科大学出身の女性科学者ルース・エーリスマン[2]と結婚した。エーリスマンは、ルース・シーケー=エーリスマンと改名した。

1986年、ルース・シーケー=エーリスマンは、ヘキサブラキオンに赤血球凝集素活性があることを見出し、タンパク質にふさわしい新しい名称を考えた。ヘキサブラキオンは物質として、夫が発見した筋腱抗原と同一であることから、「腱(tendon)」に「関連した(associated)」「タンパク質(接尾語の「in」)」ということで、テネイシン(tenascin)と命名した[3]

2013年現在の知見で振り返ると、最初にテネイシンの存在が示唆されたのは、1975年のケネス・ヤマダの細胞性フィブロネクチンの論文である[4]。ヤマダは後にフィブロネクチンと命名されるタンパク質をその論文で発見したが、論文の表題にある赤血球凝集素活性を、フィブロネクチンは持っていないことが後に判明した。この活性は、その標品の不純物として混入していたテネイシンのためだったことを後にシーケー=エーリスマンが証明した[5]


  1. ^ H. P. Erickson & J. L. Inglesias (1984), “A six-armed oligomer isolated from cell surface fibronectin preparations.”, Nature 311: 267-269 
  2. ^ Ruth Chiquet-Ehrismann”. FMI Basel Switzerland. 2013年4月17日閲覧。
  3. ^ Chiquet-Ehrismann, R., Mackie, E. J., Pearson, C. A., and Sakakura, T. (1986), “Tenascin: an extracellular matrix protein involved in tissue interactions during fetal development and oncogenesis.”, Cell 47: 131-139 
  4. ^ Yamada, K. M., Yamada, S. S., and Pastan, I. (1975), “The major cell surface glycoprotein of chick embryo fibroblasts is an agglutinin.”, Proc. NatI. Acad. Sci. USA. 72: 3158-3162 
  5. ^ R. Chiquet-Ehrismann & R. P. Tucker (2011), “Tenascins and the importance of adhesion modulation”, Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 3 (5): 1-19, doi:10.1101/cshperspect.a004960 
  6. ^ R. Chiquet-Ehrismann & R. P. Tucker (2011), “Tenascins and the importance of adhesion modulation.”, Cold Spring Harb Perspect Biol. 3 (5): 1-19, doi:10.1101/cshperspect.a004960 
  7. ^ K S. Midwood & G. Orend (2009). “The role of tenascin-C in tissue injury and tumorigenesis”. J. Cell Commun. Signal. 3: 287–310. doi:10.1007/s12079-009-0075-1. 
  8. ^ Bristow J, Carey W, Egging D, Schalkwijk J (2005). “Tenascin-X, collagen, elastin, and the Ehlers-Danlos syndrome”. Am J Med Genet C Semin Med Genet 139 (1): 24‐30. doi:10.1002/ajmg.c.30071. PMID 16278880. 





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