ジャバウォックの詩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/10 07:27 UTC 版)
用語解説
『ジャバウォックの詩』の中にある幾つかの英単語は、キャロル自身によって作成されたかばん語である。『鏡の国のアリス』の作中で、登場人物の一人ハンプティ・ダンプティは、詩の第一節にあるナンセンスな単語の語義を説明している。キャロルは、後述する1855年(キャロル23歳)発表した「アングロサクソン4連詩」において、それ以外のバージョンの説明も考案している。キャロルが『ジャバウォックの詩』で発案した“chortled”や“galumphing”等の幾つかの英単語は、現在の英語の中にも採用されている。英単語“jabberwocky”は、しばしば「ナンセンスな言葉」を指すのに使用され、BurbleはBubbleの異体語としてまた、「混乱する」の意で使われている[3]。
詩の中に登場する幾つかの怪物、また Mimsy、Frumious、Uffish、Galumphing、Beamishといった語は『スナーク狩り』でも使われている。
- バンダースナッチ (Bandersnatch)
- 獲物を捕らえる顎を備えた俊敏な生物。首を自在に伸ばす事が出来る(『スナーク狩り』の記述より)。
- ボロゴーヴ (Borogove)
- 羽毛を体中から突き出した貧弱で見栄えのしない鳥で、モップのような外見をしている。
- 夕火(あぶり)(Brillig)
- 午後4時。夕飯の支度に肉を火で炙り (broiling) 始める時刻。
- 怒(ど)めきずる (Burbled)
- おそらくは「怒鳴る」(bleat) と「ざわめき」(murmur) と「さえずる」(warble)の混成語[4]。なぜ「恐らく」かといえばキャロル自身が「そうやって作ったか、記憶にない」から[5]。
- 燻(いぶ)り狂(くる)う (Frumious)
- 息巻き (fuming) 怒り狂った (furious) 様子(『スナーク狩り』の序文より)。
- 錐穿(きりうが)つ (Gimble)
- ねじ錐 (gimlet) のように穴を穿つ。
- 回儀(まわりふるま)う (Gyre)
- 回転儀(gyroscope)のようにくるくると回転する(“Gyre”「還流」は、特に海洋の表層潮流の巨大な環状や螺旋状運動を意味する、1566年頃の実在する英単語。『オックスフォード英語辞典』は「くるくる回る」の意として使用が「1420年」までさかのぼるとしている)。
- ジャブジャブ (Jubjub英語版の記事)
- 一年中発情しているやけっぱちな鳥(『スナーク狩り』の記述より)。名前はドードーの綴「Dodo」を参考にしたもの[6]。
- 弱(よわ)ぼらしい (Mimsy)
- 弱々しく(flimsy)みすぼらしい (miserable) 様子。
- 郷遠(さととお)し (Mome)
- ハンプティ・ダンプティによれば、恐らくは「故郷を離れて遠し」(from home) を略した言葉。ラースが道に迷っている様子を表している。高山宏によれば「from homeのHを落として発音すればMomeのように聞こえることから[7]」
- うずめき叫(さけ)ぶ (Outgrabe)
- Autgribeの過去形で、うめき (bellow) とさえずり (whistle) の中間にあたり、間にくしゃみ (sneeze) のような物が混じっている行為。
- ラース (Rath)
- 緑色のブタの一種(下記の「#原型と構成」も参照)。
- 粘滑(ねばらか)(Slithy)
- 滑らか (lithe) で粘っこい (Slimy) 様子。
- トーヴ (Toves)
- アナグマ(Badger)とトカゲとコルク栓抜き(corkscrew)をかけ合わせた物。日時計の下に巣くう習性を持つ奇妙な生物。チーズを主食としている。
- 暴(ぼう)なる (Uffish)
- 乱暴 (gruffish) なる声と、粗暴 (roughish)なる態度と、横暴 (huffish) なる気分である時の精神状態[4]。
- 遥場(はるば)(Wabe)
- 日時計の周りにある芝生。日時計の前 (WAY BEfore) と後 (WAY BEhind) の両側を越えて (WAY BEyond) 遥ばると続いているので、「遥場」(Wabe) と呼ばれる。
- ^ Alice in Sunderland (2007) Brian Talbot Dark Horse publications.
- ^ “Vikings and the Jabberwock: Croft, Sockburn and Sadberge”. 2017年7月7日閲覧。
- ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 346頁
- ^ a b “Dodgson's Explanation to Maud Standen”. 2008年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月1日閲覧。
- ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 346頁 ガードナー自身は「どう見てもburstとbubbleの組み合わせだが」と言っている
- ^ 健部伸明編『幻獣大全』632頁
- ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 469頁
- ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 348頁
- ジャバウォックの詩のページへのリンク