グロー放電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/31 09:40 UTC 版)
メカニズム
最も単純なタイプのグロー放電は直流グロー放電である。最も単純な形式では、低圧(0.1〜10 Torr、大気圧の約1/ 10000〜1/100)に保持されたセル(小部屋)内の2つの電極で構成される。平均自由行程を長くするために低圧が使用される;固定電界の場合、平均自由行程が長くなると、荷電粒子は別の粒子と衝突する前により多くのエネルギーを得ることができる。セルは通常ネオンで満たされているが、他のガスも使用できる。
2つの電極間には数百ボルトの電圧(電位)がかけられる。セル内の原子集団のごく一部が最初に原子間の熱衝突やガンマ線などのランダムな過程によってイオン化される。陽イオンは電位によって陰極に向かって動かされ、電子は同じ電位によって陽極に向かって動かされる。イオンと電子の最初の集団は他の原子と衝突し、それらを励起またはイオン化する。電位が維持されている限り、イオンと電子の集団は残っている。
二次放出
イオンの運動エネルギーの一部は陰極に伝えられる。このことは、一部は、陰極に直接当たるイオンによって起こる。しかし、主要なメカニズムはそれほど直接的ではない。イオンは、もっと多数の中性ガス原子に当たり、自身のエネルギーの一部をそれらに伝える。次に、これらの中性原子が陰極に当たる。どちらの種(イオンまたは原子)が陰極に当たっても、陰極内での衝突によりこのエネルギーが再分配され、陰極から電子が放出される。この過程は二次電子放出として知られている。陰極から自由になると、電子は電界に加速されてグロー放電の大部分に入る。原子は、イオン、電子、または以前に衝突によって励起された他の原子との衝突によって励起される可能性がある。
光の生産
励起されると原子はかなり早くエネルギーを失う。このエネルギーが失われる可能性のあるさまざまな方法の中で最も重要なのは、放射、つまり光子が放出されてエネルギーが運び去られるものである。光学原子分光法では、この光子の波長を用いて原子の正体(つまり、それがどの化学元素であるか)を決定でき、光子の数は試料内のその元素の濃度に正比例する。
いくつかの衝突(十分に高いエネルギーのもの)はイオン化を引き起こす。原子質量分析では、これらのイオンが検出される。それらの質量は原子の種類を識別し、それらの量は試料内のその元素の量を明らかにする。
領域
右の図は、グロー放電に存在する可能性のある主な領域を示している。Glowと呼ばれる領域は、かなりの光を発する。Dark Spaceとラベル付けされた領域はそうではない。放電がより長くなると(つまり、図の形状で水平方向に伸びる)、陽光柱(Positive Column)が縞模様になる可能性がある。つまり、暗い領域と明るい領域が交互に形成される可能性がある。放電を水平方向に圧縮すると領域の数が少なくなる。陽光柱は圧縮されるが、負グロー(Negative Glow)は同じ大きさのままであり、十分に小さいギャップがあり、陽光柱は完全に消える。
分析用のグロー放電では、放電は主に負グローであり、その上下に暗い領域がある。
陰極層
陰極層は、アストン暗部で始まり、負グロー領域で終わる。陰極層は、ガス圧の増加とともに短くなる。陰極層は正の空間電荷と強い電界を持っている。[3][4]
アストン暗部(Aston Dark Space)
電子は約1eVのエネルギーで陰極を離れるが、これは原子をイオン化または励起するのに十分ではなく、陰極の隣に薄い暗い層を残す。[3]
陰極グロー(Cathode Glow)
陰極からの電子は最終的に原子を励起するのに十分なエネルギーに達する。これらの励起された原子はすぐに基底状態に戻り、原子のエネルギーバンド間の差に対応する波長の光を放出する。この輝き(グロー)は陰極のすぐ近くに見られる。
陰極暗部(Cathode Dark Space)
陰極からの電子がより多くのエネルギーを得ると、原子を励起するのではなく、イオン化する傾向がある。励起された原子はすぐに基底準位に戻って発光するが、原子がイオン化されると、反対の電荷が分離され、すぐには再結合しない。これにより、より多くのイオンと電子が生成されるが、光は出ない。この領域はクルックス暗部と呼ばれることもあり、管内の最大の電圧降下がこの領域で発生するため陰極降下と呼ばれることもある。
負グロー(Negative Glow)
陰極暗部でのイオン化により、電子密度は高くなるが、電子は遅くなり、電子が陽イオンと再結合しやすくなる、そのため、制動放射と呼ばれる過程を通じて、強い光を出す。
ファラデー暗部(Faraday Dark Space)
電子がエネルギーを失い続けると、放出される光が少なくなり、別の暗部が生じる。
陽極層
陽極層は陽光柱で始まり、陽極で終わる。陽極層は負の空間電荷と適度な電界を持っている。
陽光柱(Positive Column)
イオンが少なくなると、電場が強くなり、約2 eVのエネルギーを持つ電子が生成され、これは、原子を励起して光を出すのに十分である。グロー放電管が長いほど、陽光柱が占める空間も長くなるが、陰極層は同じままである。たとえば、ネオンサインの場合、陽光柱は管のほぼ全長を占める。
陽極グロー(Anode Glow)
電界が強くなると陽極グローをもたらす。
陽極暗部(Anode Dark Space)
電子が少ないと別の暗部ができる。
縞
陽光柱の中の明るい部分と暗い部分が交互に現れる帯は縞と呼ばれる。電子が1つの量子準位から別の量子準位に移動するときに、原子が吸収または放出できるエネルギーの量は離散的であるため、縞が発生する。この効果は1914年にフランクとヘルツによって説明された。[5]
- ^ Fridman, Alexander (2011). Plasma physics and engineering. Boca Raton, FL: CRC Press. ISBN 978-1439812280
- ^ Principles of Electronics By V.K. Mehta ISBN 81-219-2450-2
- ^ a b Fridman, Alexander (2012). Plasma chemistry. Cambridge: Cambridge University Press. p. 177. ISBN 978-1107684935
- ^ Konjevic, N.; Videnovic, I. R.; Kuraica, M. M. (1997). “Emission Spectroscopy of the Cathode Fall Region of an Analytical Glow Discharge”. Le Journal de Physique IV 07 (C4): C4-247-C4-258. doi:10.1051/jp4:1997420. ISSN 1155-4339 2017年6月19日閲覧。.
- ^ Csele, Mark (2011). “2.6 The Franck-Hertz Experiment”. Fundamentals of Light Sources and Lasers. John Wiley & Sons. pp. 31-36. ISBN 9780471675228
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