クトゥルフの呼び声 (TRPG)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 14:18 UTC 版)
日本での受容
『クトゥルフの呼び声』は日本において、ホラーゲームとしてだけでなく「近現代を舞台にしたテーブルトークRPG」としてもクトゥルフ神話ファン以外にも人気が出たタイトルである。
1980-90年代
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『クトゥルフの呼び声』が初めて日本語で販売されたのは、日本でのテーブルトークRPG黎明期である1986年のことであった。当時は日本語版ダンジョンズ&ドラゴンズが初登場して間もない頃で、ファミコンで『ドラゴンクエスト』が出たばかりの年でもある。TRPGどころかRPGそのものの知名度も低い時代であり、その中で「剣と魔法のファンタジーではないRPG」というのはかなり挑戦的なタイトルであった。
クトゥルフ神話自体も日本では知名度があまり高くなかったこともあり、このゲームは発売のかなり当初から「20世紀を舞台にしている」ことの方が注目された。日本市場において中世ファンタジー世界以外を舞台にしたTRPGが主流になるのは1990年代後半以降のことであり、1980年代において20世紀を舞台にしたTRPGというのはそれだけで強いインパクトを持っていたのである。
特に、基幹システムであるベーシック・ロールプレイングは世界観を限定しない汎用システムであるため、ほとんど無改造で現代日本を舞台にすることも可能なことが注目された。『クトゥルフの呼び声』は1920年代の人間を前提とした技能が揃っているが、多くの技能は実は20世紀末の人間に適応してもほとんど違和感がなかったのである。
ユーザーの間では伝奇アクションもの、探偵もの、学園ものなど、およそクトゥルフ神話とは直接関係ないようなテーマのシナリオも、このシステムで遊ばれることが多かったようだ。ベーシック・ロールプレイングを搭載しているため、恐怖要素に関するルールを排除しても十分「現代を舞台にしたゲーム」として遊ぶことができたのである。特に文献調査に関するルールが詳細な点は、ホラーと関係ない現代ものとも相性が良かった。
このようなユーザー側の需要を加味して、日本独自に『クトゥルフの呼び声』を現代日本で遊べるサプリメントが作られた。また、『クトゥルフの呼び声』をベースにした学園ドラマRPG『放課後怪奇くらぶ』(ただし、「RPGマガジン」に掲載された『クトゥルフ・イン・スクール』とはコンセプトが違うものになっている)が発売された。
ただしこのような需要はあくまで日本のテーブルトークRPGに「現代もの」のゲームがほとんどなかった1990年代前半までで一旦は終息した。ホビージャパンでの『クトゥルフの呼び声』の展開が停止した1990年代後半からは日本のテーブルトークRPGの世界に「現代もの」のゲームが一気に増え始めたのである。
2000年代以降
21世紀に入り『クトゥルフ』TRPGの日本語版は新紀元社やエンターブレインから再展開される事となった。当時の日本のTRPG業界は「TRPG冬の時代」からの回復の途上にあり、そうした事情がルールブックの価格設定やムックという形態に現れていた。しかし、2000年代末頃からニコニコ動画上の「ゆっくり実況」を始めとする動画配信を契機としてTRPGの人気が一部復活し[16]、またその後ユーザー間でオンラインセッションが加速度的に普及した事、『這いよれ! ニャル子さん』によるクトゥルフ神話の知名度の向上、H・P・ラヴクラフトの書籍の版切れが起こらなかった事など、複合的な要素によりロングセラーとなった第6版の日本での累計部数は20万部を超え[17]、2010年代以後、日本のTRPGプレイヤーの間で最も普及しているシステムとなっている。
『クトゥルフ』でTRPGを初体験した層の急激な拡大により、ホラー要素抜きに単なる「現代もの」を遊びたい場合でも『クトゥルフ』TRPGを使った方がプレイヤーが受け入れやすくなるという状況が発生しており、汎用的な「現代もの」ゲームとしての地位を再び取り戻すことになった。
注釈
- ^ このゲームにおけるSAN値、正確には「能力値SAN」とは、POW×5で算出される値であり、正気度とは別の能力値である。第5版20ページには「(正気度を解説している)その章では能力値のSANと正気度、最大正気度の違いを説明しています」とさえある。
- ^ 第5版20ページの解説から抜粋すると「正気度99の人物は、意志の力が大変強い人物ということを示しています」。また「自然の出来事でも失うことがあります」と記されており、実際に、通常の死体を見た場合でも失われる正気度は死体の損壊度ごとに列記してあり、超自然現象に限らない。
- ^ 第5版ルールブックには「狂気に陥る」としかない。
- ^ "Cthulhu Invictus", 未訳
- ^ "Cthulhu Reign of Terror", 未訳
- ^ "Cthulhu Down Darker Trails", 未訳
- ^ "End of the World", 未訳
- ^ "Punktown ", 未訳
- ^ "Cthulhu Dark"が代表的
出典
- ^ 登録2594408 (商願平03-070727)、登録2603493 (商願平03-070728)
- ^ Chaosium_Incのツイート(1138070292763295745)
- ^ なお、「クトゥルフ神話TRPG」(第6版)のルールブック奥付に、「Call of Cthulhuはホビージャパンの登録商標である」という記載が見られるが、日本の特許情報データベースにそのような記録はない。
- ^ 玩具流通商品、ISBNなし
- ^ “Call of Cthulhu 20th Anniversary Edition”. Valkyrie Quarterly. 2015年9月2日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (1st Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (2nd Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (3rd Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (4th Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (5th Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “20th Anniversary Edition Call Of Cthulhu RPG”. Chaosium.com. Chaosium. 2001年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月12日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (6th Edition/20th Anniversary releases)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (6th Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ “Call of Cthulhu (7th Edition)”. RPGGeek.com. 2015年9月1日閲覧。
- ^ Shannon Appelcline. “Advanced Designers & Dragons #3: Chaosium - Recent History: 1997-Present”. RPGnet. 2016年8月17日閲覧。
- ^ ASCII.jp:ニコ動のTRPG動画4万本を大調査! ネットでアナログゲームが復活!-
- ^ 第7版発売時プレスリリース [1][2]
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