インコタームズ インコタームズ2010

インコタームズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 14:45 UTC 版)

インコタームズ2010

2011年1月1日にインコタームズ2010が発効された。インコタームズ2010では、従来使用されていた「条件(Terms)」という用語を「規則(Rules)」という用語に置き換えている。また、国内取引にもこれらの規則が適用できることが明記された。

個別の条件については、従来4種類13条件だったものが、2種類11規則(条件)に改定された[9]。2種類とは「あらゆる輸送形態に適した規則 (Rules for Any Mode or Modes of Transport)」[9]および「海上および内陸水路輸送のための規則(Rules for Sea and Inland Waterway Transport)」[9] であり、条件については、従来のDAF、DES、DEQ、DDUの4条件が廃止され、DEQの代わりに[10]DAT(Delivered At Terminal ターミナル持込渡し[9])、DAF、DES、DDUの代わりに[10]DAP(Delivered At Place 仕向地持込渡し[9])が新設された。分類と規則については以下のとおりになっている。

あらゆる輸送形態に適した規則

EXW (Ex Works)
出荷工場渡し条件。売主は、売主の敷地(工場)で買主に商品を移転し、それ以降の運賃、保険料、リスクの一切は買主が負担する。
FCA(Free Carrier)
運送人渡し条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでの一切の費用とリスクを負担し、それ以降の運賃、保険料、リスクは買主が負担する。
CPT(Carriage Paid To)
輸送費込み条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでのリスクと海上運賃を負担し、それ以降のコストとリスクは買主が負担する。CPT条件は保険をどちらが付保するのか決めていないが、通常リスクを負担する買主が付保する。
CIP(Carriage and Insurance Paid To)
輸送費込み条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでのリスクと海上運賃、保険料を負担し、荷揚げ地からのコストとリスクは買主が負担する。
DAT (Delivered At Terminal)
ターミナル持込渡し。指定された目的地(ターミナル)までのコストとリスクを売主が負担するが、当該仕向地での輸入通関手続き及び関税は買主が負担する。売主は荷降しして貨物を引き渡す。ターミナルとは、埠頭や倉庫、陸上・鉄道・航空輸送ターミナルを意味する。
DAP (Delivered At Place)
仕向地持込渡し。DATとほぼ同様であるが、引渡しはターミナル以外の任意の場所における車上・船上であり、荷降しは買主が行う。
DDP (Delivered Duty Paid)
仕向地持ち込み渡し・関税込み条件。売主は、指定された目的地まで商品を送り届けるまでのすべてのコスト(輸入関税を含む)とリスクを負担する。

海上および内陸水路輸送のための規則

FAS (Free Alongside Ship)
船側渡し条件。売主は、積み地の港で本船の横に荷物を着けるまでの費用を負担し、それ以降の費用及びリスクは買主が負担する(売主は、船にまで積み込む必要はない)
FOB (Free On Board)
本船甲板渡し条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用を負担し、それ以降の費用及びリスクは買主が負担する。
CFR (C&F Cost and Freight)
運賃込み条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用及び海上運賃を負担し、それ以降の保険料及びリスクは買主が負担する。1990年のインコタームズ改正まではC&Fと呼ばれており、現在でもC&Fと呼ばれることがある。C&FからCFRへと名称が変更されたのは、コンピューターの普及に伴い、Shiftのキー操作を必要とする「&」を名称の中に使用することを避けたためである。
CIF (Cost, Insurance and Freight)
運賃・保険料込み条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用、海上運賃及び保険料を負担し、それ以降のリスクは買主が負担する。

なお、FOB, CFR, CIFについての引渡し時点は、「本船の手すりを越える時点」から、「船上に貨物を置いた時点」に変更された。FAS, FOB, CFR, CIFについては、洋上転売の引渡しについても「貨物を入手することにより(by procuring the goods)」という表現で新たに明記されている[注釈 8]

インコタームズ2010でのコスト負担割当

インコタームズ 2010 貿易条件
輸出税関への申告 輸出港までの
運搬
輸出港での
トラック荷下
輸出港での
積込
海上・航空
運送
輸入港での
荷下し
輸入港での
トラック積込
受取先への
輸送
海上保険 輸入通関 輸入関税
EXW 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主
FCA 売主 売主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主
FAS 売主 売主 売主 買主 買主 買主 買主 買主 買主 買主
FOB 売主 売主 売主 売主 買主 買主 買主 買主 買主 買主
CFR 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主 買主 買主
CIF 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主 売主 買主 買主
CPT 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主
CIP 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主
DAT 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主
DAP 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 買主 買主
DDP 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主 売主

注釈

  1. ^ 当時の海運業界の動きとして、例えば1924年には船荷証券統一規則が採択されている。
  2. ^ "It is better for two parties to a contaract to mean the same thing by the term they use than to quarrel afterwords as to which of the two meanins is the best."(契約に対する両者にとって、両者で使っている規則が同じことを意味している方が、2つの意味のどちらが最適なのかを後から議論するより良い。) - インコタームズ1936の前文より。
  3. ^ 1973年にICCは「複合運送書類のための統一規則」を制定している。
  4. ^ FAS条件とは積込港の船の横で受け渡す条件だが、遠く離れた買い手が積込港で通関するのは不便である。類似のFOB条件ではもともと売り手に通関義務があった。
  5. ^ 典型的には買い手の地の港ないし指定場所でリスクが移転する、つまり積荷を受け渡す条件。
  6. ^ 典型的には売り手の地の港ないし指定場所で受け渡される条件。なお、受け渡し場所がどこかということは、海上輸送費や保険料を払うかどうかとは無関係である。例えばCFR条件は売り手が海上輸送運賃と保険料を負担する条件であるが、受け渡しは積込港となる。つまり、海上輸送中に事故が起こった場合、それは買い手が買った後に壊してしまった、ということになる。
  7. ^ a b c インコタームズ2000およびそれ以前のインコタームズでは、FOB、CFR、CIFについて、「本船に荷物を積み込むまで」とは、厳密には「本船の手すりを越えるまで(the goods pass the ship's rail)」 の意味である。
  8. ^ procure(入手・調達)とは、典型的には売買契約が締結されるという意味である。
  9. ^ FOBなどを、港以外の場所で、あるいは船以外の物(トラック、航空機など)に積み込む場合に使ったとき、インコタームズでは解釈できない。「建値条件の間違った使い方の実例[リンク切れ]」-中小企業基盤整備機構のウェブサイト(2010年1月付け、2011年1月3日閲覧)-も参照。
  10. ^ インコタームズ2010では、FAS, FOB, CFR, CIFをコンテナの海上輸送に用いるべきではないことが明記されている。

出典

  1. ^ a b c d e インコタームズ2020: 2020年1月1日にインコタームズ2020が発効されたと聞きました。その内容やインコタームズ2010との違いについて教えてください。”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  2. ^ 中村、p.59
  3. ^ E. J. Blockhuys "The Technique of Foreign Trade" 明治大学出版部、1913年
  4. ^ 中村、p.61
  5. ^ 1936年インコタームズに先立って作られたICCの Trade Terms Definitions 1923 と Trade Terms 2nd 1929 に冠する一考察[リンク切れ]」日本貿易学会第48回全国大会報告要旨(開催: 2008年5月30-6月1日青山学院大学。2011年1月12日閲覧)
  6. ^ a b 中村、p.63
  7. ^ 中村、p.64
  8. ^ コンテナ輸送の貿易取引条件: コンテナ輸送での貿易取引条件として、インコタームズのFOB、CFR、CIFではなく、それぞれFCA、CPT、CIPが推奨されています。その理由を教えてください。”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  9. ^ a b c d e インコタームズ2010: 貿易は初めてです。インコタームズとは何ですか?”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  10. ^ a b インコタームズ2010 について[リンク切れ]」三井住友海上のウェブサイト(2010年10月25日付け、2011年1月3日閲覧)
  11. ^ インコタームズにないが、慣習的に使われることのある他の貿易条件の例: 「インコタームズにない建値条件の実例と留意事項[リンク切れ]」中小企業基盤整備機構のウェブサイト(2010年1月付け、2011年1月3日閲覧)






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