インコタームズ その他

インコタームズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 14:45 UTC 版)

その他

貿易取引条件を言い表す場合に、「FOB Tokyo」などというように、指定場所、仕向地などを付記して使われる。FOB Tokyo であれば、東京(東京港)にある本船に積み込まれた時点で費用負担の義務とリスクが買主に移転される(インコタームズ2010の場合)、という意味になる。

従来、貿易実務上FOB、CFR(C&F)、CIFがよく用いられてきた。これらはバラ積み貨物の海上輸送に対する条件である。現在主流となっている海上コンテナ貨物の場合は、コンテナヤードまたはコンテナフレートステーションにおいて運送人に引き渡した時点を費用とリスクの移転の基準とするFCA、CPT、CIPを用いることが適当である。コンテナの中身の個々の貨物について本船に積み込む時点で仕切るのは実際的でないからである。しかし、長年の貿易業界の慣行から、コンテナ取引でも依然としてFOB、CFR、CIFと記載されることがある。この場合、これらの条件はそもそもインコタームズでは解釈できない場合も多く[注釈 9]、また、コンテナ諸掛をどちらか負担するかなどの点は別途契約書で取り決めておく必要がある[注釈 10]。航空貨物輸送に用いることも同様にインコタームズが想定しているケースではない。

インコタームズの諸条件の規定に基づいて輸送総費用を計算する(価格を建てる)ことから、貿易諸条件を建値ともいう。ただし、建値といった場合には、必ずしもインコタームズが規定する条件ばかりとは限らない。

インコタームズ以外の貿易条件の定義としては、「1941年改正米国貿易定義」 (Revised American Foreign Trade Definitions of 1941) があるが[11]、同じ言葉でもインコタームズと定義が異なる場合があり(例:インコタームズでは、FOBは「本船渡し」を意味するが、改正米国貿易定義では船に限らず、指定された場所で渡すことを意味する)、注意が必要である。


注釈

  1. ^ 当時の海運業界の動きとして、例えば1924年には船荷証券統一規則が採択されている。
  2. ^ "It is better for two parties to a contaract to mean the same thing by the term they use than to quarrel afterwords as to which of the two meanins is the best."(契約に対する両者にとって、両者で使っている規則が同じことを意味している方が、2つの意味のどちらが最適なのかを後から議論するより良い。) - インコタームズ1936の前文より。
  3. ^ 1973年にICCは「複合運送書類のための統一規則」を制定している。
  4. ^ FAS条件とは積込港の船の横で受け渡す条件だが、遠く離れた買い手が積込港で通関するのは不便である。類似のFOB条件ではもともと売り手に通関義務があった。
  5. ^ 典型的には買い手の地の港ないし指定場所でリスクが移転する、つまり積荷を受け渡す条件。
  6. ^ 典型的には売り手の地の港ないし指定場所で受け渡される条件。なお、受け渡し場所がどこかということは、海上輸送費や保険料を払うかどうかとは無関係である。例えばCFR条件は売り手が海上輸送運賃と保険料を負担する条件であるが、受け渡しは積込港となる。つまり、海上輸送中に事故が起こった場合、それは買い手が買った後に壊してしまった、ということになる。
  7. ^ a b c インコタームズ2000およびそれ以前のインコタームズでは、FOB、CFR、CIFについて、「本船に荷物を積み込むまで」とは、厳密には「本船の手すりを越えるまで(the goods pass the ship's rail)」 の意味である。
  8. ^ procure(入手・調達)とは、典型的には売買契約が締結されるという意味である。
  9. ^ FOBなどを、港以外の場所で、あるいは船以外の物(トラック、航空機など)に積み込む場合に使ったとき、インコタームズでは解釈できない。「建値条件の間違った使い方の実例[リンク切れ]」-中小企業基盤整備機構のウェブサイト(2010年1月付け、2011年1月3日閲覧)-も参照。
  10. ^ インコタームズ2010では、FAS, FOB, CFR, CIFをコンテナの海上輸送に用いるべきではないことが明記されている。

出典

  1. ^ a b c d e インコタームズ2020: 2020年1月1日にインコタームズ2020が発効されたと聞きました。その内容やインコタームズ2010との違いについて教えてください。”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  2. ^ 中村、p.59
  3. ^ E. J. Blockhuys "The Technique of Foreign Trade" 明治大学出版部、1913年
  4. ^ 中村、p.61
  5. ^ 1936年インコタームズに先立って作られたICCの Trade Terms Definitions 1923 と Trade Terms 2nd 1929 に冠する一考察[リンク切れ]」日本貿易学会第48回全国大会報告要旨(開催: 2008年5月30-6月1日青山学院大学。2011年1月12日閲覧)
  6. ^ a b 中村、p.63
  7. ^ 中村、p.64
  8. ^ コンテナ輸送の貿易取引条件: コンテナ輸送での貿易取引条件として、インコタームズのFOB、CFR、CIFではなく、それぞれFCA、CPT、CIPが推奨されています。その理由を教えてください。”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  9. ^ a b c d e インコタームズ2010: 貿易は初めてです。インコタームズとは何ですか?”. 貿易・投資相談Q&A. 日本貿易振興機構 (JETRO). 2022年2月23日閲覧。
  10. ^ a b インコタームズ2010 について[リンク切れ]」三井住友海上のウェブサイト(2010年10月25日付け、2011年1月3日閲覧)
  11. ^ インコタームズにないが、慣習的に使われることのある他の貿易条件の例: 「インコタームズにない建値条件の実例と留意事項[リンク切れ]」中小企業基盤整備機構のウェブサイト(2010年1月付け、2011年1月3日閲覧)






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