アルセロール・ミッタル・オービット
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経緯
ロンドン市長のボリス・ジョンソンによると、2008年10月頃、彼とテッサ・ジョウェルは、2012年ロンドン・オリンピックのオリンピック・パークとなるストラトフォードには、東ロンドンのシルエットを際立たせ、ロンドンっ子と来訪者に好奇心と驚きを与えるような、「何がしか特別なもの」が必要であると考えた[4]。
2009年に「オリンピック塔」を題とする設計コンペが開かれ、全部で約50組の応募があった[5]。ジョンソンが言うには、彼の初期の構想は『オービット』より控えめで、「トラヤヌス記念柱の21世紀版」といった類のものだったが、それはより大胆なアイデアが出されて破棄された[4]。
2009年10月、マスコミはこのプロジェクトの未確定の詳細を報じた。そこでは、イギリス随一の富豪にして鉄鋼業界の重鎮であるラクシュミー・ミッタルが約1500万ポンドと見積もられたこのプロジェクトへの出資に関心を示しているとも述べられた。ジョンソンはエッフェル塔や自由の女神像のようなものを欲しているのだろうと思われていた[6][7]。その時点では、アントニー・ゴームリーを含む5組が選考に残っていると考えられた[6]。タイムズによると、初期のデザインにはパイロンとネイティブ・アメリカンのトーテムポールを合わせたような十字形をした、ポール・フライヤーによる120メートルの高さの『トランスミッション』(伝達)という作品があったとのことである[6]。ジョンソンの報道官は「オリンピックパークに、斬新で、野心的で、世界レベルの芸術作品を建てることを切望する」と述べるにとどめ、また作品依頼の計画はまだ初期段階だとした[6][7]。
計画へのミッタルの関与は、2009年1月にダボスのクローク室で、偶然ジョンソンと出会ったことから始まった[8]。二人は別々の夕食会場へ向かうところだったが、伝えるところでは45秒間の会話の中で、ジョンソンは計画の話をミッタルに振り、ミッタルは鉄鋼の供給を即座に了解した[4] 。ミッタルは後に自らの関与をこう語っている。「計画がこれほど大規模なものになるとは予想していなかった。単に1千トンかそこらの鉄鋼を供給するだけの話と思い、実際そういう話だったのだろうが、設計者たちと仕事を始め、ゴールは単なる鉄鋼の供給でなく、計画全体を完遂することだと悟った。我々は交渉と議論にほぼ15ヶ月を費やした[9]。」ジョンソンは「実際のところ、アルセロール・ミッタルは鉄鋼以上に多くのものを提供してくれた」と語った[4]。
2010年3月31日、カプーアとバルモンドの『オービット』の採用が発表された[10]。『ガーディアン』紙によると、『オービット』は最終選考の3案、すなわち『オービット』、アントニー・ゴームリーの案、カルソ・セント・ジョン建築事務所の案のうちから選ばれた[11]。『タイムズ』紙によると、ゴームリーが設計したのは『オリンピック・マン』という題の120メートルの高さの鋼鉄製の巨像であり、彼自身をモデルにしたランドマークになるような彫像だったが、4000万ポンドと見積もられた計画費用を主な理由として却下された[12]。
多くの候補からの選考を諮問するため集められた9名の諮問委員会が『オービット』を選出した後、ジョンソンとジョウェルはミッタルと提携の上で『オービット』を製作依頼することで同意した[4][10]。ミッタルによると、『オービット』は委員会で満場一致で選択された。理由として、オリンピック競技を表現していること、差し迫った期間内に完成可能である点が挙げられた。カプーアはこれを「一生ものの依頼」と表現した[10]。
ジョンソンは計画に関して起こるであろう批判に対し、発表の場で次のように釘を刺した。「もちろん、金融危機の最中にイギリス最大のパブリックアートを建てようとする我々に対して、愚か者と呼ぶ人々もいるだろう。しかし競技期間中およびその後のストラトフォード地区にとって、これは正しいことだと、テッサ・ジョウェルと私は信じる[4]。」
2012年3月11日、落成した建物がマスコミおよび一般に公開された[13]。
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