はたらく細胞 制作背景

はたらく細胞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 09:45 UTC 版)

制作背景

最初から連載化を目標に創られた作品ではなく、商業とは無関係の読切作品が出版社の編集者の目に留まって連載化したものである。

作者の清水が日本マンガ塾在学中、当時高校生の妹から「細胞について覚えたいので読み切り漫画を1本描いて」と細胞を擬人化したキャラクターのイラストを提示されたのがきっかけと言う[4][5]。折しも卒業制作のテーマを探していた清水は、このアイディアを基に卒業制作として『細胞の話』を描き、審査にあたった各出版社の編集者からも好評を得て「少年シリウス新人賞」への応募を勧められた。その後、上記のように大賞を受賞し、連載化まで至った。

2018年7月下旬には、連日の猛暑で熱中症が社会問題となっていることを受け、正しい知識を啓発するために編集部が第6話「熱中症」を特別に全ページ無料で公開している。編集部が作者およびアニメの制作委員会に事前に確認を取ったところ、どちらも快諾している。これと同時期にアニメがポカリスエットとコラボレーションして熱中症回の番外編を公開している。

2019年10月下旬からは乾癬パートナーズとコラボして、乾癬パートナーズウェブサイト、honto、および池袋駅構内広告スペースにて「はたらく細胞 乾癬編」が公開された(2020年10月現在はいずれも終了)。この話は単行本第6巻に「特別編」として収録された。

作風

元々作者本人は医療系に関わりが全くなかったため、細胞などの知識は高校生程度のものしか持っておらず[5]、話を考える際はまず身体の機能を本などで調べ、それを題材に担当編集と打ち合わせしてストーリーの構成を決めている[4]。打ち合わせの際は、話のプロットを1ページ漫画形式にして用意している[4]。このやり方は本作から始めたものであり、言葉だけでは自分の意見をすべて伝えることが難しいと判断したためである[6]。題材の選択はまず登場させる細胞を決めてから、その細胞に相対する菌や病気などを決定する順序を取っている[5]

登場キャラクターの擬人化は、細胞は人間化、病原体などはモンスター化・怪人化して描かれている。実際の細胞の姿を基に擬人化を行う場合(例として赤血球の帽子は実際の赤血球の形を模している[4])もあれば、音の響きなどからインスピレーションを得ることもあり、例えばステロイドは名前からアンドロイドを連想したためロボットとなった[7]。なお、赤血球や白血球などは妹が描いたキャラ設定を基にしている[5]

キャラクターは全て細胞名・細菌名で統一されているため、基本的に個体ごとの固有の名前はない。他の細胞を呼ぶときは細胞名を使うが、同種の細胞間で呼び合うときは二人称を用いるか、白血球の場合は個体識別番号(赤血球にも存在するが作中ではほぼ使われない)、赤血球やキラーT細胞などの場合は先輩・後輩・班長などの肩書を用いる。血小板は互いにニックネームをつけている。

「自分の身体かもしれない」と思って読んでもらうほうが読者も楽しめそうということで、細胞たちの宿主たる人間自身については描かない方針で、年齢や性別を特定し得る病気もなるべく登場させないようにしている[4][注 1]

評価

  • 宝島社このマンガがすごい!』2016年版で7位にランクインした。
  • 2017年にフランスの新聞『ル・モンド』が紹介する「この夏推薦する図書リスト」で13作品のうちの一つに選ばれた[8][9]
  • 2021年2月16日放送の『林修の今でしょ!講座』内の「現役東大生500人に聞いた勉強になる漫画ランキング」で5位にランクインした。東京大学医学科の授業でも引き合いに出されることがあり、医療関係者もこの漫画の細胞の描写はとても正確だと認めて絶賛するほどだと紹介された[10]
  • テレビアニメ版への評価も非常に高く、全国の学校で授業に使用されたり、中国の国営放送で14年ぶりにアニメとして放送されるなど、多くの反響を呼んでいる→#反響

  1. ^ 作中で判明しているのは年齢が10代以降である(第28話にて十数年かかって進行した病気が登場する)ということのみである。スピンオフ漫画では身体の年齢層・性別が明記されているものが多く、本編では登場しない病気などについても描かれている。例として『BLACK』(第1部)は男性、『細菌』『LADY』は女性、『BABY』は乳幼児の身体を舞台とする。特に『BABY』『LADY』はそれ特有の問題などをメインに扱っている。
  2. ^ 実際の赤血球は細菌や化学物質によって細胞膜が損傷すると破壊されてしまう。
  3. ^ 群像劇に近い作風と赤血球としての能力の制約上、物語中で起こる各種トラブルに直接対処することは滅多になく、他の細胞の活躍に対する狂言回しや応援役として動くことが多い。全話皆勤の白血球1146番と比べると未登場の回も割合存在し、特に単行本5巻では狂言回しとしての役柄を一般細胞に譲っているため、主人公でありながら最終ページを除いて登場しない。アニメ第2期では、原作となるエピソードの大半がAE3803の登場しない、あるいは顔見せ程度の出番しかない話のため、アニメオリジナルの出番が大幅に増量されている。
  4. ^ アニメでのキャストのクレジットは「先輩赤血球」。
  5. ^ アニメでのキャストのクレジットは「後輩赤血球」。
  6. ^ モデルはロシア軍の「アンチテロ」[18]
  7. ^ 劇中に登場する建物や道路、設備などは、対応する細胞や臓器を建造物として表現したもの[20]
  8. ^ a b 好中球の服装は軍服、キラーT細胞の服装はアメリカの警察官をイメージしている[4]
  9. ^ 単行本の表紙などでは光沢のあるゴム長靴[28]、アニメでは濃い灰色で艶なしのハーフブーツのように描かれている。
  10. ^ スピンオフの『はたらく血小板ちゃん』第1話によると、これは見習いを示すもので、一人前になると長靴を履くようになるとされる。
  11. ^ 第4話「すり傷」において、ブドウ球菌が「軍隊」と称している。
  12. ^ 英語で桿体細胞を意味する「Rod Photoreceptor Cell」の略。
  13. ^ 『BLACK』では悪玉菌の内の1体に類似するデザインの細菌が病原性大腸菌として登場する。
  14. ^ 現実でのスギ花粉アレルゲンは、ただの物質であり生命体ではない。
  15. ^ 白癬菌は病原菌だが、作中の解説コラム「おしえて白血球さん!」で「悪玉菌」と記載されている。
  16. ^ 本編では、病原体としてモンスター姿の悪役だが、本作の「おしえて白血球さん!」で「日和見菌」に分類されている。
  17. ^ アニメ工程のカッティングの駄洒落。
  18. ^ 歌の方は1番を赤血球と白血球、2番をキラーT細胞とマクロファージがメインで歌っており、アニメ本編の方は第9話のみ赤血球が登場せず、白血球もほとんど出番がなく台詞もないため。
  19. ^ 2019年7月8日にポカリスエットの公式サイトで公開[176]





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