電離圏遅延誤差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 16:13 UTC 版)
大気の屈折率は大気中を伝播する衛星電波信号の伝播遅延を生じ、これを大気遅延と呼んでいる。衛星航法システムではおおよその推定値を利用者へ伝送し、利用者はこれを用いて大気遅延の影響を取り除く測位計算の処理をおこなう。また大気遅延の大きさは衛星視線方向が低仰角になるほど増大するが、この遅延量は通常は、天頂方向遅延に仰角依存性係数(傾斜係数)を乗じた形を用いてモデル化される。大気遅延の推定誤差は測位座標へ誤差を生じさせる。 この大気の屈折率を決める大きい要因は、大気を構成する気体中の電離電子の量である総電子数 (total electron content, TEC) であり、電離電子は主に電離圏及びプラズマ圏に存在する。電離電子に起因する伝播遅延を指して習慣上、電離圏遅延と呼んでいる(天頂方向ではおよそ2mから20mに相当する遅延となる)。TECは太陽黒点活動、季節変化、日変化、高度と位置による変化があり、これを高精度に推定することは容易ではない。GPSで利用者へ伝送される電離圏天頂遅延値の推測値に含まれる誤差は距離に換算しておおよそ1.5 m以下であるが、これを超えることもある。電離圏遅延の傾斜係数は仰角30度ではおよそ1.7、仰角20度ではおよそ2.1の値となる。
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