訂正されていた飛行経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 03:30 UTC 版)
「ニュージーランド航空901便エレバス山墜落事故」の記事における「訂正されていた飛行経路」の解説
注目すべき問題点として路線訓練(ブリーフィング)で示された経路と実際の飛行経路が異なっており、それがきちんと乗員に説明されていなかったことが挙げられる。 南極観光飛行の飛行計画はニュージーランド運輸省の民間航空局から承認を得ていた。飛行計画のデータはニュージーランド航空のコンピューターに保存されており、飛行ごとにプリントアウトして取り出されて飛行コンピューターに入力されていた。 本来の飛行計画ではエレバス山のほぼ真上を通る経路が取られていたにも拘らず、ブリーフィング時点の地図ではロス島の西側、ロス海上空を通過する経路が示されていた。これは、コンピューターに登録されたマクマードの位置座標が誤っていたためであった。最終到達地点のマクマードの経度は、1桁間違って東経164度47分と登録されていた。この結果、事故機のパイロットが使用した無指向性無線標識 (NDB)とタカン(戦術航法装置; TACAN)も実際より2度10分(130マイル;約210キロメートル)真西に描かれており、本来の経路から約30マイル(50キロメートル)西側(進行方向右)にずれて飛行経路が示されていた。これは、アメリカ軍機の通常の飛行ルートと同じであった。これまでの全ての南極観光便では有視界気象状態のもとこのルートでマクマードへ進入していたため、飛行計画の誤りは特段影響しなかった。 誤りが発見されたのは事故便より2回前の飛行の時であり、事故の2週間前のことだった。それまでの14か月間は間違ったまま飛行が行われていた。コンピューター上のデータが訂正されたのは事故前夜であった。 この誤りがあったことは乗員に知らされていなかった。事故調査報告書は「ニュージーランド航空は、最重要情報を明確な形で示さなかった」ことを指摘している。航路資格用ブリーフィングが行われたのは事故の3週間前で、その時に用いられた3つの地図では誤った経路(すなわち島の西側)を通っていた。ブリーフィング資料の中にあった経路・距離図の1つでは正しい経路が表示されていたものの高い山など地形の特徴が記入されていなかった。当日機内に持ち込まれた地図類は縮尺が大きすぎて見にくかった。しかも、パイロットらは当日朝の飛行前出発ブリーフィング(プリフライト・ディスパッチ・プランニング)の時まで地図を使えなかった。 そして、事故機の航法コンピューターに記録されていた数値は、訂正後の値、すなわちエレバス山のほぼ真上を通る経路のものであった。機長らは、入力した値が印刷されたフライトプランと一致しているかを確認したが、それが路線訓練時の経路と異なっていることには気づかなかった。
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