脊索動物説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 03:50 UTC 版)
これに対して、この動物が脊索動物であるとの説が浮上する。 それによると頭部の後方の側面に見える構造は鰓弓であり、またより後方の側面の構造は生殖腺である。また、胴体を前後に貫く構造は真っ直ぐに伸びる消化管と、その上に伸びる脊索と解釈された。こういった特徴から、この動物は左右から扁平な遊泳性の動物であり、口から有機物片を含む水を飲み込み、これを鰓で濾し取って、残りの海水はそこから排出した。また、胴体の後半の側面に生殖腺が並んでいた。このような構造と活動は現生のナメクジウオにごく近いものであり、おそらくこの動物の直接の祖先にあたると判断された。脊索動物は我々を含む脊椎動物の上位群であり、この形はつまり我々の直接の祖先である可能性を示唆する。バージェス生物群からはやはりこの類と思われるピカイアが発見されていたが、それ自体がそれまで想定されていた脊索動物の出現時期を大きく遡るものであったために大きな注目を浴びた。それに対して、この動物が脊索動物であれば、それを更に遡ることになる。 その後、ポーランドのドジクは、より保存のよい化石に基づいて新たな復元像を示した。それによると、頭部はむしろ腹背に扁平で幅広く、前端には横長でキチン質に縁取りされた口があった。またその上面の両端には眼に近い視覚器があった。鰓弓や生殖腺については先の復元とそれほど変わらないが、大きな違いは胴体が左右から扁平ではあるが、腹面が平らであったとしたことである。横から見ると紡錘形ではあるが、背面側が左右から扁平で盛り上がっていた。そしてこの動物は遊泳性ではなく、平らな腹面で底質の上を這い回り、表面の泥をすくい取って食べたものと考えた。これはナメクジウオとはかなりかけ離れた姿ではあるが、脊索動物との判断は変わっていない。
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