擬態の限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 14:27 UTC 版)
ベイツ擬態のように、無害な動物が有害な生物をモデルとした擬態の場合、捕食者がモデルを攻撃したときのいやな記憶を長く保っていなければ効果がない。もしもハチに刺された動物が、すぐにハチのことを忘れてしまえば、次に(ハチに擬態した)カミキリを見つけたときにも、ためらわずに捕食する。また、ハチの模様と刺された痛みを関連づけて覚えていなければ、次にカミキリを見つけたときにも、やはりためらわずに捕食することとなる。 したがって、脳神経系と視覚などの感覚器がある程度発達した捕食者に対してしか効果はない。 また、捕食者があらかじめモデルの発する信号の意味を理解していなければ(これは遺伝的なものと学習によるものとがある)、擬態者の「偽の」信号の意味も知らないことになり、効果がない。もしモデルより擬態者のほうがあまりに多ければ、捕食者は、危険なモデルよりも無害な擬態者に遭遇する頻度が高くなり、擬態者の発する信号は機能しない。黄色と黒のカミキリがハチよりもはるかにたくさんいるのであれば、捕食者は、「黄色と黒は食べられる」と理解する。黄色と黒のカミキリがハチと同数ならば、「黄色と黒は危険だが、捕食を試みる価値はある」と理解する。 したがって、擬態者は、モデルよりあまり多数になるような繁殖はできない可能性がある。
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