悪魔が来たりて笛を吹くとは? わかりやすく解説

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悪魔が来りて笛を吹く

(悪魔が来たりて笛を吹く から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/24 23:01 UTC 版)

悪魔が来りて笛を吹く』(あくまがきたりてふえをふく)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。『宝石』に1951年11月から1953年11月まで連載された作品。単行本は1954年5月8日岩谷書店より刊行。


注釈

  1. ^ このときは受賞作なしであった[1]
  2. ^ 「第一章 悪魔が来りて笛を吹く」に「年代からいうと、これは「黒猫亭事件」と、「夜歩く」の事件のあいだにはいるべきもののように思われる」と記載されている[2]
  3. ^ 正確には、田中潤司が選んだベスト5(1. 『獄門島』、 2. 『本陣殺人事件』、 3. 『犬神家の一族』、 4. 『悪魔の手毬唄』、 5. 『八つ墓村』)を「妥当なもの」とした上で、次にくるものとして本作を挙げている[3]
  4. ^ 横溝作品に時々「銀座(「日本橋」と説明される場合も)の大きな宝石店」として登場するブランド。今作以外でも『王冠のゆくえ』[4](この作品では「宝石も置いてある時計屋」になっている)、『まぼろしの怪人』[5]の1・3・4話などで登場しており、いずれの回も宝飾品の窃盗などの被害を受けている。また『怪盗X・Y・Z』第4話「おりの中の男」[6]では店そのものは出てこないが、天銀堂の主人が銀座のデパートで開かれている宝石展に来て、展示された宝石(天銀堂の物ではない)がすり替えられているのを見抜く場面がある。
  5. ^ おそらく高木正得元子爵の自殺事件(1948年7月8日失踪、11月1日遺体発見)と思われる。
  6. ^ 植村泰二。元ピー・シー・エル映画製作所社長。
  7. ^ 植村泰一は、その後東京芸術大学に進んでNHK交響楽団在籍のプロ奏者として活躍。1979年の本作映画化の際には招かれて山本邦山作曲のオリジナル主題曲を演奏している。
  8. ^ 実際のフルートの構造から考えて「左手」の誤りである。単行本においても、訂正した結果が「右手」である。すなわち、横溝によるこの解説自体が左右を取り違えている。
  9. ^ 」は火偏に禾(のぎ)、すなわち「秋」の偏と旁を逆に配置した異体字であり、一部の日本語環境では表示できない。
  10. ^ 総体的に警察が密告を奨励しているような体質で、等々力自身も同様である。
  11. ^ 作品中、実の兄妹がそうとは知らずに愛し合って娘を儲けた結果、3人とも不幸な死を遂げる。
  12. ^ このため、椿家の邸宅であるにもかかわらず英輔の両親は同居が許されず、むしろ子の母のために離れが建てられた。事件当時は、この離れを公丸と菊江が使っていた。
  13. ^ 初出では「玉蟲」と表記されているが、現在出版されている角川文庫などでは「玉虫」に修正されている。初出では作品全体で旧字体や当用漢字外の文字を用いていたが多くは早い時点で新字体に修正され、「玉蟲」のみが比較的最近の出版である講談社横溝正史全集やそれを底本としている横溝正史自選集でも維持された経緯がある。 なお、字幕ないし解説画面で人名を表示しているテレビドラマ(2007年版以外)では、公丸の苗字を「新宮」に変えている1996年版を除いて、全て「玉虫」と表記している。
  14. ^ 新宮兄妹の母の実家は及川家であり、玉虫家との関係は明らかでない。可能性としては、たとえば公丸が及川家から玉虫家へ養子に入ったということが考えられる。
  15. ^ 冒頭での美禰子の金田一への説明では玉虫公丸の転居は「去年( = 1946年(昭和21年))の暮」であり「焼け出された」のは戦災ではないことになる。一方、同じ説明で新宮一家は1945年(昭和20年)5月の空襲で焼け出されたとしている。この間1年半の期間があることになり、公丸の転居動機からすると少々不自然ともいえる。また、美禰子の説明は1946年(昭和21年)の秋には東太郎がいたと解するのが自然だが、東太郎の告白状(遺書)は椿家を初訪問した時には既に公丸がいたと解するのが自然であり、前後関係が矛盾している。
  16. ^ 美禰子が最初に金田一に家族構成を説明した際に年齢を「23、4」と言っている。等々力警部の聴取に対して、16歳で一人前の女にしていただいて足掛け9年と答えているので、このことから算出すると24歳ということになる(本作品では年齢が数え年であると冒頭に記載されているので、「足掛け年数」から1を減じて単純に加算すれば良い)。
  17. ^ 本作品の初期の版では「いたじゅく」とルビが振られていた。角川文庫の古い版では「いたじゅく」と「いたやど」が混在しているが、1996年(平成8年)9月25日の改版でルビが大量に補われた際に「いたやど」に統一された。
  18. ^ 辰五郎の存命中に虚偽の戸籍登録を訂正するよう治雄が訴えたとしても、兄(新宮利彦)と妹(秌子)を両親とする戸籍訂正は許可されない。
  19. ^ 作中では「お小夜」「小夜」「小夜子」が混在しており、どれが「本名」であるかは決定不能である。傾向として会話では「お小夜」、地の文では「小夜子」が多いが、例外も少なくなく、作者には厳密に使い分ける意思が無かった可能性が高い。なお「小夜」は、現行版では出川刑事の報告書3通のうち1通目の内容を述べる地の文に「小夜子」と混在して現れるのみである。初期の版では駒子が持っていた位牌に記載されていた俗名を慈道が読み上げた科白が「小夜」であったが、作者の没後、1996年(平成8年)9月25日の角川文庫本改版の際に出版社の判断で「小夜子」に改められた。これは多数に揃えるという趣旨の改変と推定できる。なお、2007年平成19年)4月1日に出版芸術社より出版された自選集は、初出誌と校合する方針であるため、位牌についての記述は「小夜」のままである。以上のような状況を踏まえたうえで、会話部分以外の圧倒的多数が「小夜子」であり、特に作品世界中の文書をそのまま掲載した設定の部分に出現する唯一の事例である東太郎(治雄)の告白状(遺書)で「小夜子」に統一されていることと、映像作品や演劇作品に登場する場合には全て「小夜子」が採用されている実情に合わせると記述が簡略になることとの2つの理由で、本ページでは「小夜子」を採用する。これは便宜的な選択であり、他を否定するものではない。
  20. ^ 「悧巧」と表記されている。
  21. ^ 当時の漁夫はの商品を船で下ろすことがあり、警察に問われても事実を話さない可能性が高く、椿子爵のような秘密裏に淡路に足を運ぶ場合、足の付きやすい連絡船より漁船を選ぶ。
  22. ^ 当初は室田日出男に金田一役がオファーされていたという話があり、覚せい剤取締法違反で逮捕・釈放されたばかりの頃に、製作者の角川春樹が、本作の撮影用台本を100万円の金一封と共に送ったと、室田自身が雑誌で証言している。しかし角川は、いつか組みたい俳優だったことは認めつつ、オファーに関しては覚えていないと否定している[12]
  23. ^ 本作がヒットしたことで岡田は以降も『白昼の死角』(1979年)・『魔界転生』(1981年)など、角川に東映映画のプロデューサーを要請し、角川は単独で東映映画のプロデューサーを務めた[15][14][16][20]
  24. ^ 具体的には、30数局ネットで全国をカバーしているニッポン放送でフルートのテーマ曲を流し続け、TBSの『パック・イン・ミュージック』内で、主演の西田敏行がリスナーの人生相談に答える”金田一耕助探偵事務所”のコーナーが作られた[22]
  25. ^ 宍戸錠は当時、NHKテレビで放映中のアメリカドラマ『警部マクロード』で主役のマクロード警部の声を吹き替えていたことから、番組中、『警部マクロード』でマクロードの上司・クリフォード刑事部長の声を吹き替えていた加藤武が乱入し、「マクロード。こんなところで何をしている。」と叱りつける演出がなされた。
  26. ^ 草野大悟は、「あこがれの宍戸錠さんと共演し緊張しています」と語り、当時、テレビドラマの悪役が多かった高木均は、「わたくしムーミンパパにして悪役」と挨拶。最終回の前の回では池田秀一が、「三島東太郎役の池田秀一です。どうやら、僕が大変なことになっているようです。おたよりお待ちしています。」と語った。その回は、三島が自分の正体を明かすところで終わっていた。
  27. ^ 新宮華子、一彦は登場はするものの、語り手のナレーションで処理されており、俳優は演じていない。
  28. ^ このように変更すると、使える音が増えて作曲が極めて容易になるが、運指が不正規のものになってしまう欠陥がある。
  29. ^ 金田一は習慣的に「署長さん」と呼んでいるが、既に署長ではない。本作での現職は不明だが、須磨や淡路島の調査に自ら出向いている。
  30. ^ 東太郎の痣を見て驚愕した設定は無い。
  31. ^ 三春園の女将のこと。常識的に考えて「おかみ」という個人名ではないと思われるが、そのようにも読める配役一覧になっている。
  32. ^ 同じくJETが漫画化した短編「雌蛭」も一緒に収録されている。

出典

  1. ^ 1954年 第7回 日本推理作家協会賞 日本推理作家協会公式サイト参照。
  2. ^ 横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』(54版)角川書店角川文庫〉、1995年10月10日、4-5頁。 
  3. ^ 横溝正史『真説 金田一耕助』角川書店〈角川文庫〉、1979年1月5日、63-64頁。 
  4. ^ 論創社『横溝正史探偵小説選3』(ISBN 978-4-8460-0734-8)に収録。
  5. ^ 朝日ソノラマ・角川書店双方で同名単行本や、柏書房『姿なき怪人』(ISBN 978-4-7601-5389-3)に収録。
  6. ^ 角川文庫版は未収録回、論創社『横溝正史探偵小説選2』(ISBN 978-4-8460-0733-1)や柏書房『姿なき怪人』(ISBN 978-4-7601-5389-3)に収録。
  7. ^ a b c d e f g h i 『悪魔が来りて笛を吹く』(岩谷書店)あとがき(1949年(昭和29年)3月)参照。『新版横溝正史全集18 探偵小説昔話』(講談社)にも収録されている。
  8. ^ 横溝正史『真説 金田一耕助』角川書店〈角川文庫〉、1979年1月5日、156-158頁。 文中、「K君」とあるのは葛山二郎のことである(谷口基 著「葛山二郎」、江藤茂博; 山口直孝; 浜田知明 編『横溝正史研究 2』戎光祥出版、2010年8月10日、300-301頁。ISBN 978-4-86403-007-6 )。
  9. ^ 「探偵小説の構想」(『宝石』、1951年(昭和26年)10月号)参照。
  10. ^ 『歌手が来りて推理小説を語る』(『音楽の友』、1974年(昭和49年)1月、大橋国一らとの対談)参照。『新版横溝正史全集18 探偵小説昔話』(講談社)にも収録されている。
  11. ^ 中川右介「資料編 角川映画作品データ 1976-1993」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』角川マガジンズ、2014年、281頁。ISBN 4-047-31905-8 
  12. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P143
  13. ^ a b c d e 角川春樹・清水節『いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命』角川春樹事務所、2012年、82-84頁。ISBN 978-4-7584-1295-7 
  14. ^ a b 『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社、2012年、109,142,249-250,352-366頁。ISBN 978-4-636-88519-4 岡田茂『悔いなきわが映画人生:東映と、共に歩んだ50年』財界研究所、2001年、182-183頁。ISBN 4-87932-016-1 
  15. ^ a b c 「岡田茂をめぐる七人の証言 角川春樹『最後の頼みの綱という心強い存在』」『キネマ旬報』2011年7月上旬号、キネマ旬報社、63-64頁。 
  16. ^ a b c d e f g h “東映が角川春樹の製作で『悪魔が来りて...』製作”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 5. (1978年7月15日) 
  17. ^ 【今だから明かす あの映画のウラ舞台】角川編(上) 『人間の証明』『野生の証明』… 春樹流メディア戦略の始まり 潤沢な宣伝費で大量の新聞広告 (1/2ページ)
  18. ^ a b c d e f g h i j k l 「POST シネマ あえてB級をめざす『悪魔が来りて笛を吹く』の全貌」『週刊明星』1978年10月29日号、集英社、46頁。 
  19. ^ a b c d 「東映、正月第二弾に『悪魔が来りて笛を吹く』公開」『映画時報』1978年12月号、映画時報社、18頁。 
  20. ^ “角川春樹氏、思い出語る「ひとつの時代終わった」…岡田茂氏死去(archive)”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2011年5月10日). オリジナルの2011年5月28日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20110528133933/http://hochi.yomiuri.co.jp/feature/entertainment/obit/news/20110510-OHT1T00006.htm 2016年11月22日閲覧。 
  21. ^ a b 「映画界の動き 東映、横溝・高木作品を映画化」『キネマ旬報』1978年6月下旬号、キネマ旬報社、180頁。 
  22. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P141
  23. ^ a b 古澤利夫『映画の力』ビジネス社、2019年、393-398頁。ISBN 9784828420769 
  24. ^ a b 「グラビア『悪魔が来りて笛を吹く』」『キネマ旬報』1979年1月下旬号、キネマ旬報社、14–15頁。 
  25. ^ 「10人目の金田一耕助・西田敏行に聞く 悪魔が来りて笛を吹く PART Ⅳ」『キネマ旬報』1979年1月下旬号、キネマ旬報社、36–35頁。 
  26. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P139
  27. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P141
  28. ^ a b 林冬子、寺脇研「今月の問題作批評 斎藤光正監督の『悪魔が来りて笛を吹く』」『キネマ旬報』1979年1月下旬号、キネマ旬報社、154–155頁。 
  29. ^ 吉岡秀隆さんが金田一耕助役!「悪魔が来りて笛を吹く」 NHKドラマトピックス、2018年5月14日
  30. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 事件の鍵を握る新たなキャストを発表! スーパープレミアム「悪魔が来りて笛を吹く」 NHKオンライン、2018年6月8日
  31. ^ 東スポ劇画シリーズ第2弾 悪魔が来りて笛を吹く”. Muuseo(ミューゼオ). 2019年8月13日閲覧。


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