善意占有と悪意占有
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/29 10:24 UTC 版)
善意占有本権に基づかない占有のうち、占有者が本権があると誤信して占有している場合。善意占有は誤信に対する過失の有無によりさらに過失ある占有と過失なき占有に分けられる。 通常の法律上の用例であれば「善意」には不知を含むが、善意占有でいう「善意」には不知であっても疑いを持っている場合を含まない点で異なる。 占有者は善意で占有をするものと推定される(186条1項)。ただし、善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは訴えの提起の時から悪意の占有者とみなされる(189条2項)。 過失については推定規定がないが、判例は「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法一八八条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべき」とする(最判昭41・6・9民集20巻5号1011頁)。 悪意占有本権に基づかない占有のうち、占有者が本権に基づかないことを知り、または本権の有無について疑いを有しながら占有している場合。本権の有無について疑いを有しながら占有している場合も悪意占有である(大判大8・10・13民録25輯1863頁)。 善意占有と悪意占有の区別は、取得時効の要件(162条以下)、果実の収取・償還(189・190条)、占有者による損害賠償(191条)、即時取得の要件(192条)、占有者による費用の償還請求(196条)において区別の実益があり、取得時効の要件(162条以下)と即時取得の要件(192条)においては過失の有無も問題となる。 なお、本権に基づく占有には善意占有と悪意占有の区別はないことに注意を要する。
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