同着の原理にまつわる誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 10:23 UTC 版)
「ベルヌーイの定理」の記事における「同着の原理にまつわる誤解」の解説
揚力についての一般向けの解説には、 「同着の原理」のため翼の上の流れが下の流れより速くなり、ベルヌーイの定理により翼の上の圧力が下の圧力より小さくなり、よって上向きの揚力が発生する と説明しているものがある。 「同着の原理」とは、「翼の前縁で上下に別れた流体は翼の後縁に同着する。」という原理である。この原理により、翼の上の経路長が下の経路長より長い場合、「翼の上を流れる速さが下の速さより大きくなる」という翼の周りの流体の速度分布が「導かれる」。しかし、実際には、上面の流れの方が後縁により早く到着し、同着の原理は成り立たない。 現在、「同着の原理」が間違いであることは広く知られるようになった。しかし、「ベルヌーイの定理を揚力の説明に使うのは誤りで、流線曲率の定理やニュートンの運動方程式を使うべきだ」という誤解も見られるようになった。 一般向けの説明で誤っているのは「同着の原理」のみであり、「同着の原理」はベルヌーイの定理とは無関係である。むしろ、同着原理の不成立に導いた、上面の流れの方が後端により早く到着するという実験事実は、ベルヌーイの定理による揚力の発生を「補強こそすれ、否定的な意見とはならない」。また、ベルヌーイの定理が間違いで流線曲率の定理やニュートンの運動方程式が正しいというのは矛盾を含む。翼の周りの流体の速度分布が正しくわかれば、ベルヌーイの定理でも、流線曲率定理でも、運動量変化と力積(あるい反作用)の関係でも、正しく適用する限り、同じ結果が得られる。なぜなら、これらはいずれもニュートン力学に起源を持つ理論だからである。
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