ミサ曲における使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/27 21:41 UTC 版)
武装した人は、ルネサンス期の作曲家が、ミサ曲を作曲するときに定旋律として使用したため、曲の古さの割には今日でも比較的広く知られている。『武装した人』は世俗音楽の中でおそらく最も頻繁に定旋律に採用された歌であろうと考えられ、現在40以上の使用例が知られている。初期のルネサンス期の大作曲家は少なくとも一度はこの旋律に基づいて作曲をしており、この慣習は17世紀のカリッシミの時代まで続くこととなる。しかしながら『武装した人』によるミサ曲の真の全盛期は、1450年から1500年頃までであり、16世紀後半になると「ロム・アルメ・ミサ」の作曲は、保守的な教会音楽によって辛うじて受け継がれたにすぎなかった。 『武装した人』の現存する最古の用例は、ロバート・モートンの1463年頃の作とされるシャンソン集“Il sera pour vous conbatu/L'homme armé”であると考えられている。その以前の作と考えられるものとして、作曲者と作曲時期が不詳の、メロン・シャンスリエ(Mellon Chansonnier)出典の3声の曲がある。1523年、ピエトロ・アーロンは論文“Thoscanello”において、作風の一致などからこの旋律がアントワーヌ・ビュノワの作であると指摘している。ただ、それ以外にはこの説を裏付ける根拠はなく、さらにこの論文が書かれたのも最初の用例から70年近くも経っていた。リチャード・タラスキンは、ビュノワがこの旋律によるミサ曲を書いたはじめての人だと主張するが、これは否定的に見られており、多くの学者は、それよりも前のギヨーム・デュファイが、初めて『武装した人』によるミサ曲を書いたと考えている。 この旋律は特に対位法的な扱いをするのに適している。フレーズの輪郭がはっきりしており、またカノンを作るのにも適した構造をしている。また、対位法的な楽曲においても旋律線が非常に聞き取りやすい、という特徴がある。 パレストリーナもいくつかの「ロム・アルメ・ミサ」を作曲しているが、このほかに代表作の「教皇マルチェルスのミサ曲」の旋律主題は、いきなり完全4度で跳躍してから順次下降するという始まり方において、「武装した人」の曲想と類似することが指摘されている。
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