グレーゾーン事態
安全保障分野において、武力行使はされてはいないものの、国の主権が脅かされかねない、と判断される事態の通称。有事ではないが、有事でないものとして対処することが困難なケース。あるいは、現行法に則っていては十分な対応が取れないと考えられるケース。
「グレーゾーン」の語は「合法と非合法の境目」といった意味で多々用いられる。違法行為と同等の行為であるが違法とは規定されていない、したがって罰則規定がない、といった事柄が一般的にグレーゾーンと呼ばれる。安全保障におけるグレーゾーンもこれに倣った表現といえる。
2014年5月に、政府与党(自民党・公明党)がグレーゾーン事態を想定した制度再編の検討を本格的に開始した。「集団的自衛権」と平行して検討調整が進められている。
有事とは、主に武力行使を伴う国家主権侵害行為を指す。有事と判断されると自衛隊を出動させて防衛に当たらせることができる。武力行使を伴わないケースでは、自衛隊ではなく警察や海上保安庁などが対応することになる。もし、武力行使がなく(衛隊の防衛出動ができず)、しかしながら海上保安庁などでは手に負えない、といった事態が発生した場合、現行の制度では手続きを進めている間に事態が収拾困難なレベルに発展する可能性がある。
グレーゾーン事態に該当する具体的なケースとして、「武装している可能性のある集団が離島を不法占拠した」場合が挙げられている。現行法では、さしあたり海上保安庁が対応し、海保では対応が難しいと判断されれば所定の手続きを踏んで自衛隊を出動させることになる。
グレーゾーン事態を想定した制度の再整備は、2014年5月現在、自民党と公明党の間で協議されいる。
グレーゾーン‐じたい【グレーゾーン事態】
グレーゾーン事態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/09 17:14 UTC 版)
軍事におけるグレーゾーン(英語: Grey zone incident / Gray zone situation)とは、領海内における潜水艦の潜没航行や民間人を装った武装勢力による離島等への強襲上陸など、純然たる平時ではないが有事でもない侵害を指す[1]。
定義
グレーゾーン事態という語は、国家安全保障において広く普及しているが、定義についての普遍的な合意は存在しない[2]。
アメリカ特殊作戦軍においては、「伝統的な戦争と平和の二重性の間にある国家および非国家主体間の競争的相互作用」と定義されている[3]。
日本の防衛白書においては、「国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題に関わる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況」と定義している[4]。
たとえば武装勢力が漁民を装って離島へ上陸した場合など、主権侵害ではあるが武力攻撃とは言えず自衛隊に防衛出動を命じることができない状態を指す[5]。自衛隊法上、自衛権の発動として武力を行使できる防衛出動は、武力攻撃の発生を前提としているため、こうした武力攻撃に至らない侵害への対応は警察力によることになる[1]。
脚注
- ^ a b “グレーゾーン事態 | 時事用語事典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス”. 情報・知識&オピニオン imidas. 2020年10月21日閲覧。
- ^ Dobbs, Thomas; Fallon, Garth; Fouhy, Sarah (9 September 2020). Grey Zone. The Forge (Report). Australian Defence College. 2022年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月18日閲覧。
- ^ “The Gray Zone”. www.soc.mil. United States Special Operations Command. 14 September 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。18 February 2021閲覧。
- ^ “防衛白書『グレーゾーンの事態とハイブリッド戦』” (2019年). 2024年8月9日閲覧。
- ^ 産業経済新聞社「【よく分かる安全保障法制】(下)グレーゾーン事態、島を守り切れぬ現行法」『産経新聞』2015年1月13日。2024年1月25日閲覧。
関連項目
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