クモの鋏角
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 17:03 UTC 版)
クモの鋏角は、前体に連結する基部の肢節と、その末端に続く牙状の肢節からなる。基部肢節の内側は牙状肢節と嚙み合わせ、そこの突起(歯)の有無と配列は分類群により異なる。通常では前述のように、クモの鋏角も前向きに平行動作する「orthognath」と下向きに左右動作する「labidognath」の2タイプに分けられるが、そのどちらかに属するとされる一部のクモ(例えば orthognath とされるハラフシグモ、labidognath とされるエボシグモ科)の鋏角は、実際には両者の中間形態で、これは「plagiognath」とも呼ばれる。 ごく一部の例外(ウズグモ科、アリグモのオスなど)を除いて全てのクモは鋏角に毒腺を有し、牙状肢節の末端直前に開口する。ハラフシグモの毒腺は小さく、牙状肢節の直後のみに備わるが、それ以外のほとんどのクモでは、毒腺が鋏角の基部肢節を越えて前体内まで発達していた。 クモの鋏角は普段では折りたたまれて一体化しており、獲物を噛んで捕食するなどの機能を果たすときに展開する。牙状肢節はヒンジのように基部が1対の関節丘に固定されるため、前述のタイプに応じて1つの回転軸でしか動けないが、基部肢節はそれに関わらず水平と左右方向で自由に動ける。物を噛み付く同時に、牙状肢節の開口から毒を打ち込むことができ、その量を毒腺の圧搾で調節できる。 クモの鋏角は捕食と自衛の他にも、分類群によっては物を運ぶ(コガネグモ科など)・土を掘る(トタテグモ科など)・卵嚢を持ちあげる(キシダグモ科など)・配偶行動に用いられる(アシナガグモ科など)・摩擦音を出す(サラグモ科)・闘争用の武器になる(アリグモ)など、様々な機能を果たしている。 クモの鋏角は「上顎」(じょうがく)ともいうが、鋏角自体は他の節足動物の顎(大顎・小顎)とは別起源である(後述参照)。
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