NBAプレーオフ プレーオフの方式変更

NBAプレーオフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/06 06:43 UTC 版)

プレーオフの方式変更

シャーロット・ボブキャッツの新規加入に伴うNBAの地区の再編の後に導入された、2005-06シーズンのNBAプレーオフに用いられたプレーオフの方式はシーズンの最中に議論を呼んだ。そして、2006-07シーズンの開始前に変更されることとなった。

アメリカの主要なプロスポーツのリーグ(NFL、NHL、MLB、NBA)では、地区のチャンピオンを地区で優勝していないプレーオフ参加チームよりも上位にシードするのが慣例となっていた。これはカンファレンスやリーグ全体での成績の順位を問わないものであった(ホームコートアドバンテージについては、通常勝敗に基づいてのみ割り当てられていた)。2006年から07年のシーズンの前までは、NBAにおいても同様であった。

NBAが2つのカンファレンスに分けられた当時、それぞれのカンファンレンス(東・西)には2つの地区が設けられ、各地区で2位に終わったチームはカンファレンスの3位シードより上のシードは得られなかった。上位2つのシードは各地区の勝者のために確保されていたからである。このシステムを変更することについての議論はあまりなされてこなかった。しかし、NBAがその2つのカンファレンスをそれぞれ3つの地区に再編した後には各地区は5チームから構成され(プレーオフにおけるシードに関するルールはほとんど変更されなかった)、カンファレンスで最も良い勝敗成績を残した2チームがカンファレンスの決勝ではなく、カンファレンスの準決勝で対戦する可能性が出てきた。

2006年NBAプレーオフにおける議論

例えば2005-06シーズンで、ダラス・マーベリックスサンアントニオ・スパーズウェスタン・カンファレンスに属する他のチームより抜きん出て良い成績を収め、ウェスタン・カンファレンス全体で一二を争う位置にいたが、両チームとも同じサウスウェスト地区に属していたため、第1シードと第4シードで準決勝で戦う可能性があった。なぜなら上記にあるように、NBAでは地区のチャンピオンチームを地区で優勝していないプレーオフ参加チームよりも上位にシードするのが慣例となっていた。そのため同地区で優勝できなかった方のチームは同地区で優勝したチームに次いでウェスタン・カンファレンス全体の勝利数で2位になっても、他の2地区で優勝した2チームのほうが高いシードになってしまい、第4シードになってしまうからである。

結果、スパーズがサウスウェスト地区を優勝し、他の2地区で優勝した2チームを合わせた3チームの中で勝利数1位であったため第1シードとなり、マーベリックスは地区優勝できなかったため第1から第3シードを得られず、さらにウェスタン・カンファンレンス全体で勝利数がスパーズに次いで2位の成績であったため、ウェスタン・カンファレンス全体で3地区のチャンピオンチームを除いたチームの中で勝利数1位となり、第4シードとなってしまった。パシフィック地区のチャンピオンチームフェニックス・サンズは、ウェスタン・カンファンレンス全体で3位の成績を有していたが、第2シードとされ、ノースウェスト地区のチャンピオンチームデンバー・ナゲッツは、ウェスタン・カンファレンス全体で7位タイの成績でありながら、第3シードとされた。つまりスパーズとマーベリックスの両チームが勝ちあがった場合、カンファレンス決勝ではなく準決勝で対戦することになった。

さらにこのシーズン、スパーズとマーベリックスの両チームと同じウェスタン・カンファレンスに属するメンフィス・グリズリーズロサンゼルス・クリッパーズは、各地区の勝者が確定しマーベリックスが第4シードとなることが決まった後のレギュラーシーズンの終盤に対戦があった。グリズリーズとクリッパーズは少なくとも第6シードは確保しており、どちらのチームが第5シードのチームとしてマーベリックスとプレーオフ1回戦で対戦するか、また7戦のうち4戦を敵地で対戦するかどうかを決めるのみであった。第6シードとなるチームは第3シードのデンバー・ナゲッツとホームで7戦中4戦を行う条件で対戦することとなっていた。その上、もし第5シードとなったチームが難敵マーベリックスを何とか破ったとしても、準決勝で第1シードのスパーズと対戦することはほぼ確実であった。第5シードとなるチームはカンファレンス決勝にたどり着くためには、カンファレンス上位の2チームを破る必要がある一方で、第6シードとなったチームはそれら上位2チームのうち1チームとだけ、しかもカンファレンス決勝までは対戦する必要がない状況となった。

このことから、グリズリーズとクリッパーズが、第6シードとなるためには負けたほうが良いとも言えるシーズン終盤の対戦でどれだけ本気で勝とうとするかについて疑問が持たれることとなった。結局クリッパーズがグリズリーズに敗れたが、クリッパーズがわざと負けたという証拠はなかった。プレーオフの第1ラウンドで、有利とされた第6シードのロサンゼルス・クリッパーズはデンバー・ナゲッツを5戦で破る一方で、第5シードのメンフィス・グリズリーズは優勢なダラス・マーベリックスに4連敗で敗れた。

()内はウェスタン・カンファレンス全体での順位。サクラメント・キングスデンバー・ナゲッツは同じ勝利数で7位タイ。

ファースト・ラウンド カンファレンス準決勝 カンファレンス決勝
         
1 サンアントニオ・スパーズ(WC1位) 4
8 サクラメント・キングス(WC7位) 2
1 スパーズ(WC1位) 3
4 マーベリックス(WC2位) 4
5 メンフィス・グリズリーズ(WC4位) 0
4 ダラス・マーベリックス(WC2位) 4
4 マーベリックス(WC2位) 4
2 サンズ(WC3位) 2
3 デンバー・ナゲッツ(WC7位) 1
6 ロサンゼルス・クリッパーズ(WC5位) 4
6 クリッパーズ(WC5位) 3
2 サンズ(WC3位) 4
7 ロサンゼルス・レイカーズ(WC6位) 3
2 フェニックス・サンズ(WC3位) 4


この結果、「スパーズとマーベリックスがカンファレンスの2つのベストチームであるのに、カンファレンス決勝ではなく準決勝で対戦しなければならないことがアンフェアである」と多くの評論家やファンが考えることとなった。これは、ベストチーム同士の対戦がなるべくプレーオフの後のラウンドで対戦すべきことに反するからのみならず、プレーオフに参加する他のチームは組み合わせに恵まれれば、カンファレンス決勝までマーベリックスとスパーズのトップ2チームの双方と決勝まで対戦しなくて済むことができ、楽な時期を与えているということからであった。

このような事態を見てNBAは、2006年8月3日に、改正されたプレーオフのシード決定システムを発表した。新ルールでは、3つの地区の勝者と3つの地区の勝者以外で最も勝利したチームを含めた4チームで、勝利数にしたがって第1から第4シードまで割り振るシステムである。これにより3つの地区の勝者以外で最も勝利したチームも第2、第3シードを狙うことができる。残りの出場4チームも同様に、第1から第4シードまでのチームを除いた中でシーズン成績が上位のチームから、第5から第8シードまで割り振られた[1]。チーム間で勝率が同率の場合、タイブレークの基準が定められており、(1)から順に適用される。

  • (-)勝率差があればタイブレークは不要。
  • (1)ディビジョン優勝チームが優越
  • (2)直接対決勝敗
  • (3)同カンファレンス内勝率
  • (4)同カンファレンス内のプレーオフ進出チームに対する勝率
  • (5)別カンファレンス内のプレーオフ進出チームに対する勝率
  • (6)すべての試合の総得点

2015-16年NBAプレーオフからのルール変更

地区優勝以外のチームで最も勝利したチームが複数あった場合には、単にタイブレークのルールに従ってそのうちの1チームのみ上位にシードするしかないため、これが不公平だとしてこのシステムに欠点があるとの声が多く、2016年から完全に地区優勝とは無関係にシードが割り振られるようになった。

2020年

2020年以降、プレイインゲームを使用して、NBAプレーオフの最初のラウンドで最終的に資格のあるチームを決定するようになった。2020年のプレーイン形式では、カンファレンス内の9位のチームが8位のチームの4ゲーム差以内でレギュラーシーズンを終えた場合、シーズン後のプレーインシリーズで競う。このフォーマットは、No。9のメンフィス・グリズリーズが、No. 8のポートランド・トレイルブレイザーズにハーフゲーム差内で終了したため、ウェスタン・カンファレンスでのみ行われた。トレイルブレイザーズは、上位シードとして1ゲームの自動リードを保持し、プレーオフに進むためにゲーム1でグリズリーズを退けた。

2021年

2021年、プレーインゲームのフォーマットが完成した。2021年には、各カンファレンスの上位6チームがプレーオフに進み、7位から10位のチームがプレーイントーナメントを行う。7位と8位のチームは、プレーオフの資格を得るために対戦し1勝すれば第7シードでプレーオフに進め、敗れた場合は、9位と10位のチームの勝者に1勝すれば第8シードでプレーオフに進める。9位と10位のチームはプレーオフに進むためには、2つの連続したゲームに勝つ必要があり、第8シードでプレーオフに進むことができる。2022年にもプレイイントーナメントは採用される[2]


  1. ^ Playoff Seeding Primer --- NBA.com
  2. ^ FAQ: NBA Play-In Tournament”. NBA.com (2022年4月7日). 2022年4月7日閲覧。
  3. ^ The Spurs' Big Three is already the most impressive big three” (2014年3月16日). 2014年3月16日閲覧。


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