N型貨物船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/14 06:29 UTC 版)
特徴
建造所が横浜船渠・浦賀船渠と三菱長崎造船所に分かれたことにより、搭載するディーゼルエンジンの形式も、建造所の提携先の違いから異なることとなった。「長良丸」と「鳴門丸」、「那古丸」[注釈 1]はMAN社系統のディーゼルエンジンを搭載していた。「能登丸」、「能代丸」および「野島丸」は、三菱長崎造船所が提携していたスルザー社系統のディーゼルエンジンを搭載していたが、この時搭載されたのは複働式のものであった。通常のディーゼルエンジンは単働式であるが、馬力を得るために複働式のエンジンが開発され、ちょうどN型貨物船が建造が企図されたころに一種の流行となった[11]。昭和9年に国際汽船の貨物船2隻[注釈 2]に7,600馬力型の複働式エンジンを2台製作し、次いでやや馬力を落とした6,700馬力型の複働式エンジンを3台製作して、これを「能登丸」、「能代丸」および「野島丸」に搭載することとなった[11]。
しかし「鹿野丸」(国際汽船、6,940トン)がピストン棒を折損する事故を起こし、3日間漂流しながら修理を行うという事態が起こる[11]。三菱長崎造船所がスルザーとの提携でディーゼルエンジンを製作するようになってからおよそ5年が経っていたものの、複働式エンジンに関する経験はなかった[12]。「鹿野丸」の事故の他、燃焼不良などの故障や整備が面倒なことなど悪評が先行して、複働式エンジンを採用する船主は続かなかった[11]。三菱長崎造船所はこののち、自主開発のMS型ディーゼルエンジンを複働式に改造した「MSD型」を5台製作してA型貨物船に搭載したが、整備に手間がかかること、それに技術革新で単働式2サイクル過給エンジンが登場するに及んで、複働式ディーゼルエンジンはほとんど廃れた[13]。
その他定員の減少と諸設備の簡略化が行われて経費節約を実現し[14]、N型貨物船は総じて日本郵船の貨物船隊の船質向上に寄与したが、総合的には畿内丸型貨物船とくらべて性能が若干下回っていたと評された[6]。それでも、日本郵船の経営の主軸はN型貨物船の就航を契機として旅客から貨物に移すこととなった[6]。
注釈
- ^ 建造は浦賀船渠だが、主機のみ横浜船渠で製作(#長澤)。
- ^ 「鹿野丸」、「清澄丸」(#創業百年の長崎造船所 p.94)
出典
- ^ Nagara_Maru_class
- ^ #日本郵船株式会社百年史 pp.275-276
- ^ a b #日本郵船株式会社百年史 p.319
- ^ a b #日本郵船株式会社百年史 p.318
- ^ #日本郵船株式会社百年史 pp.319-320
- ^ a b c d e f #日本郵船株式会社百年史 p.321
- ^ a b #長澤
- ^ a b c #創業百年の長崎造船所 pp.550-551
- ^ #浦賀船渠六十年史 付p.12
- ^ #船舶改善助成施設実績調査表 pp.2-6
- ^ a b c d #創業百年の長崎造船所 p.94
- ^ #創業百年の長崎造船所 p.91,94
- ^ #創業百年の長崎造船所 p.95
- ^ #日本郵船株式会社百年史 p.320
- ^ #日本郵船株式会社百年史 pp.325-326
- ^ #日本郵船株式会社百年史 pp.330-331
- ^ #日本郵船株式会社百年史 p.381
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- ^ #大毎401115
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- ^ “Chapter IV: 1942” (英語). The Official Chronology of the U.S. Navy in World War II. HyperWar. 2012年9月26日閲覧。
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- ^ #十一航艦1704 p.21,25
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- ^ a b #郵船戦時上 p.112
- ^ #日本汽船名簿・長良丸
- ^ #日本汽船名簿・能登丸
- ^ #日本汽船名簿・那古丸
- ^ #日本汽船名簿・能代丸
- ^ #日本汽船名簿・鳴門丸
- ^ #日本汽船名簿・野島丸
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