阪神7801・7901形電車 形態分類

阪神7801・7901形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 09:07 UTC 版)

形態分類

初期車

初期車の7916(尼崎駅)
3011形3021より編入の7922

短期間での大量増備のため車体設計を簡素化したグループで、1963年から1966年にかけて、川崎車輛、汽車製造および武庫川車両工業の各社にて合計67両が製造された。

車体は切妻構造となり、裾部の丸みも省略された[2]貫通幌および雨樋は外部に露出しているが、雨樋の位置を高くした張り上げ屋根構造は踏襲されている。屋根半径は中央部が5,000mm、肩部が300mmである[9]通風器は従来の箱型から通風能力最優先のグローブ型に変更された。

側面窓は上段下降・下段上昇式となり、日除けもカーテン式となった[10]。また、客用扉は片開き扉であるが、戸袋窓がHゴム支持の1枚窓に変更されている。

内装も各部が簡素化され、荷物棚はパイプ製のものをやめて網棚とし、蛍光灯は灯数を削減するために灯具カバーを省略し、片側6灯×左右2列の12灯を配置している。座席はロングシートであるが、運転台直後には座席および荷物棚を設けずに立席スペースとした。

7801形7822とペアを組む7922は、3011形が3561・3061形に改造された際の編成組み替えで余剰となった3021の改造編入車である[11]。このため、他の7901形とは車体形状が大きく異なる。3021は1965年5月24日付で電装解除の上、運転台撤去・中間車化改造を実施して7922として編入された。

軽量車体の3扉化による車体強度への不安視から、窓配置は扉間の窓数が基本的に2個単位となり、その窓の周りに鋼板を貼ることで車体強度を向上した[12]。車体裾には丸みがあり、車体長も他の7901形の18,880mmに対して19,100mmと若干長い。通風器は他の7901形同様グローブ式となった[12]

台車は他の7901形と同様、小型車より流用のボールドウィン台車を装着した[12]。3021時代に装着していた住友金属工業製FS-202は、東芝製TT-6を装着していた旧3041Fの機器統一用に供出した。

各社の製造担当と製造状況は以下の通り[13]1965年製の7923より阪神の傍系企業である武庫川車両工業が製造に加わっており、翌1966年以降2002年の同社解散までは、5500系の一部と9000系を除く全車両が同社において製造されている。

奇数車
← 梅田
元町 →
竣工 製造所
クモハ

Mc1

サハ

T1

7801 7901 1963年7月23日 川崎車輛
7803 7903
7805 7905
7807 7907
7809 7909
7811 7911 1964年4月1日 川崎車輛
7813 7913 1964年6月3日 汽車製造
7815 7915 1964年8月1日 川崎車輛
7817 7917 1964年9月1日 川崎車輛
7819 7919
7821 7921
7823 1965年5月24日 川崎車輛
7923 武庫川車両工業
7825 1965年7月1日 川崎車輛
7925 武庫川車両工業
7827 7927 1965年10月18日 川崎車輛
7829 7929
7831 7931
7833 7933 1966年3月1日 武庫川車両工業
偶数車
← 梅田
元町 →
竣工 製造所
サハ

T2

クモハ

Mc2

7902 7802 1963年7月23日 川崎車輛
7904 7804
7906 7806
7908 7808
7910 7810
7912 7812 1964年5月4日 汽車製造
7914 7814 1964年6月3日 汽車製造
7816 1964年7月7日 川崎車輛
7916 1964年7月17日
7918 7818 1964年7月17日 川崎車輛
7920 7820 1964年8月1日 川崎車輛
7822 1965年5月24日 川崎車輛
7922* 武庫川車両工業
7824 1965年5月24日 川崎車輛
7924 武庫川車両工業
7826 1965年6月15日 川崎車輛
7926 武庫川車両工業
7928 7828 1965年9月30日 武庫川車両工業
7930 7830 1965年10月18日 川崎車輛
7932 7832 1966年3月1日 武庫川車両工業
7934 7834 1966年5月21日 武庫川車両工業

ラインデリア車

ラインデリア車の7838

昇圧後の1969年より投入された7835・7935以降のグループは、ラインデリアを搭載した両開き扉車となった[1]

車体の設計が大幅に変更され、普通系5261形に類似した窓配置となり、客用扉が幅1,400mmの両開き扉となった[14]。側窓は扉間が3枚1組、車端部連結面寄りを2枚1組とした組み立て式のサッシによる上段上昇、下段固定2段窓に変更されている。通風装置としてラインデリアを搭載したため、屋根も低くなっている[15]

前面は再び3面折妻となり、貫通幌も収納式となった[14]。屋根半径は中央部が9,000mm、肩部が250mmとなり、車体裾部の丸みが復活している[16]。側面の客用扉の高さも7861形、3521形の後期車の1,900mmから1,850mmに戻り、車体の構体高さも2,591mmと低くなった[14]

運転台直後の座席と荷物棚も復活、さらに蛍光灯は増設の上でカバーが取り付けられ、荷物棚もパイプ製に戻されている。通風装置は扇風機に加え、天井に近畿日本鉄道と三菱電機が共同開発したラインデリアを搭載[17]、モニター屋根を載せた「ラインデリア車」となっている。屋根が従来より低く幕板部分が狭いため、後年追加された側面行先表示器は上部の張り出しが大きくなった。

1970年には新製冷房車の製造に移行したため、このグループの製造数は10両に留まった[1]

各車の製造状況は以下のとおり[13]

奇数車
← 梅田
元町 →
竣工
クモハ

Mc1

サハ

T1

7835 7935 1969年9月23日
7837 7937 1969年11月5日
7839 7939 1969年11月15日
偶数車
← 梅田
元町 →
竣工
サハ

T2

クモハ

Mc2

7936 7836 1970年2月7日
7938 7838 1970年2月25日

新製冷房車

新製冷房車の7846(1987年 西宮駅

1970年投入の7840以降のグループは、同時期に阪神初の冷房車として登場した7001・7101形との連結運用を前提とした新製冷房車として登場した[18]。7001・7101形は電機子チョッパ制御車であるが、7801・7901形は従来同様の抵抗制御車である[18]

車体は7001・7101形と同様の両開き3扉で、ラインデリア車とは一転して屋根が高くなった[19]。屋根半径は中央部が9000mm、肩部が300mmとなっている[19]。この車体形態は、普通系の5261形5271以降の新製冷房車グループにも採用されている[20]

7001・7101形の3両編成の神戸方に併結した5両編成を組成するため、製造は神戸向きの偶数番号車ユニットのみとなった[19][18]。 新製冷房車は、1970年から1971年にかけて、武庫川車両工業にて以下の12両が製造された[13]

偶数車
← 梅田
元町 →
竣工
サハ

T2

クモハ

Mc2

7940 7840 1970年4月1日
7942 7842 1970年12月26日
7944 7844 1971年1月13日
7946 7846 1971年2月15日
7948 7848 1971年3月16日
7950 7850 1971年4月1日

  1. ^ a b c d 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、182頁。
  2. ^ a b c d e f 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、185頁。
  3. ^ a b c 飯島・小林・井上『私鉄の車両21 阪神電気鉄道』32頁
  4. ^ 急行系小型車は当時、851・861・881形52両や801・831形49両ほか100両前後が残存していた。
  5. ^ 鉄道ピクトリアル編集部「阪神の初期高性能車」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、電気車研究会。159頁。
  6. ^ 本形式は「経済車」とも呼ばれることから、本形式を「E車」(Economy車)と呼び、他の急行系車両を「R車」(Rapid車)と呼ぶといったような訛伝が残っている。
  7. ^ 飯島・小林・井上『私鉄の車両21 阪神電気鉄道』150-151頁。
  8. ^ 飯島・小林・井上『私鉄の車両21 阪神電気鉄道』161頁
  9. ^ a b c d レイルロード『サイドビュー阪神』11頁。
  10. ^ レイルロード『サイドビュー阪神』10頁。
  11. ^ 飯島・小林・井上『私鉄の車両21 阪神電気鉄道』36頁。
  12. ^ a b c 川島令三「阪神3011形とジェットカーの時代」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、電気車研究会。154頁。
  13. ^ a b c 飯島・小林・井上『私鉄の車両21 阪神電気鉄道』156-160頁
  14. ^ a b c d e 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、190頁。
  15. ^ レイルロード『サイドビュー阪神』28頁。
  16. ^ レイルロード『サイドビュー阪神』29頁。
  17. ^ このラインデリアの搭載に際しては、両社に特許料を支払っている。
  18. ^ a b c d 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、187頁。
  19. ^ a b c レイルロード『サイドビュー阪神』33頁。
  20. ^ 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、203頁。
  21. ^ a b 阪神電車鉄道同好会「私鉄車両めぐり (157) 阪神電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、186頁。
  22. ^ 3000系力走中 まにあっく・阪神 2002年7月(ウェブアーカイブ)
  23. ^ R車6連が本線に復帰 まにあっく・阪神 2006年6月(ウェブアーカイブ)
  24. ^ a b 「阪神電気鉄道車両履歴表(高性能車以降:1954年〜)」『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号、電気車研究会。214-215頁。
  25. ^ レイルロード『サイドビュー阪神』126頁。
  26. ^ 旧ラインデリア車 廃車始まる まにあっく・阪神 1999年4月(ウェブアーカイブ)
  27. ^ a b ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 '08年版』2008年、174頁。
  28. ^ 旧ラインデリア車の一部が廃車に まにあっく・阪神 2007年9月(ウェブアーカイブ)
  29. ^ 2203・7839が廃車 まにあっく・阪神2008年4月(ウェブアーカイブ)
  30. ^ 7801形全廃 まにあっく・阪神 2008年7月(ウェブアーカイブ
  31. ^ 廣井・井上『日本の私鉄12 阪神』130-131頁。
  32. ^ 塩田・諸河『日本の私鉄5 阪神』143頁。
  33. ^ ジェー・アール・アール『私鉄車両編成表 '06年版』2006年、130頁。






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