長野電鉄モハ1100形電車 主要機器

長野電鉄モハ1100形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/30 00:21 UTC 版)

主要機器

前述の通り、鋼体化改造に際して種車となった各形式から流用した部品は主電動機・制御装置・制動装置のみに留まり、その他の機器については新造品または他社から購入した中古品を搭載した[1]

主制御器

ウェスティングハウス・エレクトリック (WH) 社が開発した、制御電源を架線電圧より得るHL (Hand acceleration Line voltage) 制御仕様[5]電空単位スイッチ式間接非自動制御装置三菱電機[7])をモハ1100形に搭載する[6]

主電動機

ウェスティングハウス・エレクトリック製の直流直巻電動機WH-556-J6(端子電圧750V時定格出力75kW)をモハ1100形に1両当たり4基搭載する[6]。駆動方式は吊り掛け式、歯車比はモハ1100形への搭載に際して種車の3.45 (69:20) から4.56 (73:16) に変更された[1]。全界磁定格速度は34.0km/h、定格引張力は3,224kgfを公称する[7]

なお、WH-556-J6主電動機は戦前より長野電鉄において愛用された標準型主電動機であり、また歯車比4.56 (73:16) は長野電鉄に在籍するWH-556-J6主電動機を搭載する吊り掛け駆動車における標準仕様であった[6]。このため、鋼体化改造後のモハ1100形は他形式と性能が統一された[1]

台車

鋼体化改造に際して全車とも帝國車輛工業製のUD-26に換装され[1][6][注釈 1]、種車が装着したブリル (J.G. Brill) 製の27MCB-2[2]は廃棄された[6]。UD-26台車はボールドウィン・ロコモティブ・ワークス (BLW) 社開発のボールドウィンA形台車を原設計として製造された形鋼組立形の釣り合い梁式台車で、いずれも他社より購入した中古台車である[3][注釈 2]。軸受は平軸受(プレーンベアリング)仕様で[6]、固定軸間距離は2,250mm、車輪径は860mmである[7]

制動装置

構造の簡易な直通ブレーキに連結運転時の安全対策として非常弁を付加したSME直通ブレーキを採用した[6]。こちらも2000系を除く長野電鉄に在籍する各形式と共通仕様である[6]

補助機器類

集電装置は2000系と同一機種の菱形パンタグラフである三菱電機製S-752Aを新規に製造し[6]、モハ1100形の連結面寄り屋根上に1両当たり1基搭載した[6]。この結果、編成を組成した際にモハ1101・1102にそれぞれ搭載された2基のパンタグラフが隣接する形態となったが[3]、後年モハ1101のパンタグラフは撤去され、モハ1102より給電される形態に改められた[11]

電動空気圧縮機 (CP) はDH-25(吐出量760L/min)をモハ1100形に1両当たり1基搭載した[6]

連結器密着自動連結器NCB-IIを各車の運転台側・連結面側の両側に装着する[6]

なお、車内照明などの動作用低圧電源については低圧電源用抵抗器によって降圧した架線電圧を使用し、電動発電機 (MG) は搭載していない[6]


注釈

  1. ^ 同台車について「UD-16」と記載する文献も存在する[7][8]
  2. ^ 帝國車輛工業UD-26は関西急行鉄道が1942年(昭和17年)と1944年(昭和19年)に合計10両を製造したモ6311形に同じ形式の台車が装着されたことが知られており[9]、これら10両分のUD-26は1959年(昭和34年)の伊勢湾台風とそれに伴う近鉄名古屋線の改軌工事スケジュールの前倒しで全数が改軌改造工事を施工されることなく新製のシュリーレン式円筒案内台車である近畿車輛KD-32B・KD-32Cに交換され、同様に台車交換で余剰となった日本車輌製造D16・D16B・D18といった狭軌用釣り合い梁式台車各種とともに、幾つかの私鉄へ売却されたとされる[10]。このため、台車交換時期や同時期の他社での同系台車の保有状況を考慮すると、これらは近鉄名古屋線改軌で不要となり、放出された台車である可能性が高い。1961年4月に実施された「鉄道ピクトリアル」誌愛読者代表の甲信越地区座談会席上で、参加者の一人であった長野電鉄社員の小林宇一郎は鋼体化1100形について「台車は近鉄名古屋線に使っていた帝車のUD-26を使うことになった」と語っている(「鉄道ピクトリアル」1961年10月号 p63)。
  3. ^ 当時の主力車両であったモハ1000形・モハ1500形はいずれも全長17m級の車体を備える[7]
  4. ^ 従来在籍した車両(荷物合造車を除く)の1両当たりの定員が100 - 120人であったのに対し、モハ1100形・クハ1150形は140人と最大で4割の収容力増加が図られていた[7]
  5. ^ 架線電圧600Vの渥美線における使用時、端子電圧600V時定格出力110kWを公称し、歯車比は2.56 (64:25) である[8]
  6. ^ 国鉄制式機種であるPS13パンタグラフの払い下げを受け、搭載した[8]
  7. ^ 自動車用部品を活用した豊橋鉄道独自の前照灯で、150Wのシールドビーム2灯を角型のケースに収めたものを、従前の前照灯を撤去の上で同じ箇所へ設置した[8]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 「私鉄車両めぐり(49) 長野電鉄」 p.169
  2. ^ a b c d 『私鉄買収国電』 pp.79 - 86
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『RM LIBRARY86 長野電鉄 マルーン時代』 p.41
  4. ^ a b c d e 『RM LIBRARY86 長野電鉄 マルーン時代』 p.32
  5. ^ a b c d e f g 『RM LIBRARY86 長野電鉄 マルーン時代』 p.40
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『RM LIBRARY86 長野電鉄 マルーン時代』 pp.46 - 47
  7. ^ a b c d e f g h i 『世界の鉄道'76』 pp.158 - 159
  8. ^ a b c d e f g h i j 「豊橋鉄道に期待のルーキー 長電から移籍の1810形が登場」(1979) p.123
  9. ^ 『近鉄旧型電車形式図集』 p.177
  10. ^ 『車両発達史シリーズ2』 p.97
  11. ^ a b c d 「鉄道車両の許認可制度 - 鉄道史を調べる人のために -」(2006) p.57
  12. ^ a b c d 「伊予鉄道」(1989) p.160
  13. ^ a b 『ローカル私鉄車輌20年 西日本編』 pp.169 - 171
  14. ^ 『ローカル私鉄車輌20年 西日本編』 p.65
  15. ^ a b 『ローカル私鉄車輌20年 西日本編』 pp.186 - 188





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