連邦倒産法 連邦倒産法の構成

連邦倒産法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/22 06:22 UTC 版)

連邦倒産法の構成

連邦倒産法は、次のとおり九つの章 (Chapters) からなる。

  • 第1章 総則 (General Provisions)
  • 第3章 案件管理 (Case Administration)
  • 第5章 債権者、債務者、及び財団 (Creditors, Debtors, and the Estate)
  • 第7章 清算 (Liquidation)
  • 第9章 地方公共団体の債務整理 (Debt Adjustment of a Municipality)
  • 第11章 更生 (Reorganization)
  • 第12章 定期的収入のある農家もしくは漁師の債務整理 (Adjustment of Debts of a Family Farmer or Family Fisherman With Regular Income)
  • 第13章 定期的収入のある個人の債務整理(Adjustment of Debts of an Individual With Regular Income)
  • 第15章 国際倒産 (Ancillary and Other Cross-Border Cases)

1978年の倒産法大改正により、第1・3・5・7・9・11・13・15章が立法化された[1]。章立てが中抜きになっているのは、その後の改正による挿入を予定したものである。1986年には第12章が加えられた。

第1章から第5章までは、全ての連邦倒産手続に適用される通則である。以下、連邦倒産法の通則的規定の主なものについて解説する。

倒産裁判所と連邦管財官

連邦倒産法に基づく手続は、倒産裁判所 (United States bankruptcy court) の監督のもとで行われる。倒産裁判所は連邦裁判所の一つである。倒産裁判所は倒産手続に直接関係のある事件のほとんどについて司法判断を下すことができる。

倒産裁判所とは別に、破産事件に関する管理行政を行う司法省の機関として連邦管財官(U.S. Trustee)がある。連邦管財官は司法長官によって任命され、管財人候補者のリストアップ、管財人の監督、債権者集会の招集、債権者委員会の委員の任命等を行う。連邦管財官の制度は1978年の改正の際に導入されたものであり、それまでは、倒産裁判所が司法的任務と行政的任務の双方を担っていた。

倒産手続の開始とその効果

申立

倒産手続は申立 (petition) により開始される。これには、債務者が自ら申立をする場合(voluntary case)(301条)と、債権者が申立をする場合(involuntary case)(303条)がある[2]。後者の場合、総債権者数が12人未満であれば各債権者が単独で申立をすることができるが、総債権者数が12人以上であれば3人以上の債権者の共同申立が必要である。いずれの場合にも、申立債権者の合計債権額が$13,475[3]以上である必要がある。

日本と異なり、破産原因(支払不能や債務超過)があること(破産法)や、破産原因の生ずる虞れがあること(会社更生法・民事再生法)は、倒産申立の要件ではない。但し、債権者による申立に対して債務者が異議を唱えた場合には、債務者が期限の到来した債務を支払っていない場合等一定の要件を満たす場合にのみ、裁判所が倒産手続開始命令(order for relief)を下す(303条(h)項)。適時の異議がない場合には、裁判所は自動的に倒産手続開始命令を下す。債務者による申立の場合には自動的に倒産手続開始命令があったとみなされる(301条(b)項)。

管財人の選任

第7章に基づく手続においては必ず管財人(trustee)が選任される。管財人は倒産財団の代表者である(323条)。第11章の場合には、通常は債務者(旧経営陣)が管財人の立場で引続き事業を継続することができ、これを占有債務者(debtor in possession、"DIP") という。ただし、占有債務者に詐欺的行為や重大な経営過誤があった等の正当な理由があるときには、利害関係者または連邦管財官の申立により倒産裁判所が管財人の選任を命令することがある(1104条)。以下の解説において、「管財人」というときには占有債務者を含む。

債権回収手続等の自動的停止

申立に基づき倒産手続が開始されると、債務者に対する訴訟等の法的な手続や債務者からの債権取立行為のほとんどは禁止される(362条)。手続開始の申立があれば、別途裁判所の命令等を得ずにこのような効力が発生し、自動的停止 (automatic stay) と呼ばれる。自動的停止の効力は、取立訴訟のみならず、たとえば、勝訴判決の執行、担保権の設定や対抗力の具備及び実行、相殺等にも及ぶ。裁判所は、正当な理由がある場合には、債権者等の利害関係者の要請に基づき、個別に自動停止を解除(relief from stay)することがある。正当な理由とは、自動停止を継続することにより債権者が本来期待できるような回収ができなくなるような場合を含む。


  1. ^ ただし、当時の第15章は、連邦管財官制度を実験的に取り入れるための規定であり、現在のものと内容が全く異なる。連邦管財官制度はその後恒久化され、これに関する諸規定は、本体規定の各所に組み込まれた。
  2. ^ 債権者申立により開始できるのは、第7章と第11章に基づく手続のみである。
  3. ^ この金額は2007年4月1日現在の額であり、これは3年ごとに消費者物価指数に対応して調整される(104条参照)。






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