老視 矯正

老視

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 08:51 UTC 版)

矯正

矯正は老眼鏡(老視鏡)で行う。正視の人が老視になった場合、老眼鏡には凸レンズを使う。凸レンズを使う点では遠視眼鏡と同じであるが、使う目的が異なる。遠視の眼鏡は遠視を矯正するために凸レンズを使い、老眼鏡は老視によって落ちた調節力を補うために凸レンズを使う。

老視になる以前から近視・遠視・乱視などで眼鏡を用いていた場合は、原理としては遠くを見るための度数に適切な凸レンズの度数を加えたものを近くを見るために用いる。元が近視で凹レンズを用いていた場合は、その分、凹レンズの度数を弱める。弱い近視で、老視のために加える凸レンズの強さが近視を矯正するための凹レンズの強さを上回る場合には、遠方視用に凹レンズ、近方視用に凸レンズを用いることになる。調節力の減退に応じて、加える度数も強くする必要がある。逆にいえば若い人ほど度数が弱くて済み、40代半ばより若ければ一般に老眼鏡が不要である。強度近視では上述の見かけの調節効果が強いので、加える度数が弱くなる。-10Dを超えるような最強度近視の場合、眼自体は老眼になっていても、マイナスレンズの見かけの調節により遠用眼鏡をかけたまま近くを明視できる場合がある[2]

老眼鏡をかけると遠くが見えづらくなるので、老眼鏡はかけたままにするものではない。近くのものを見る際にかけ、遠くを見る際には外すか遠くを見るための眼鏡にかけ替えるかする。このかけ外しやかけ替えの煩雑さを解消するのが、遠近両用眼鏡である。

遠近両用眼鏡は、遠くと近くで眼鏡をかけ外ししたり交換したりする不便さを解消した眼鏡である。レンズの大部分を遠方視の度数に合わせ、レンズの下側の一部に近方視用度数のレンズを組み込んだものが多い。通常の老眼鏡に対する遠近両用眼鏡の長所は、眼鏡を掛け替える手間が省ける点である。短所は場面によって使いづらいことがある点である。遠くは正面で、近くは下目使いで見ることが多いという日常生活での傾向を前提としているので、この傾向に当てはまらない場面、例えば壁新聞やポスターに歩み寄って見るなど正面で近くを見る場面や、下りの階段など下目使いで遠くを見る場面で、はっきり見えなかったり首を不自然に曲げなくてはならなかったりする。

遠近両用眼鏡には、主に二つの種類がある。遠く用の度数の入ったレンズ部分と近く用の部分がはっきり分かれ外観上も境い目の見える二重焦点眼鏡と、レンズの下へ行くにしたがって度数が徐々に変化し外観上も境い目の見えない累進焦点眼鏡の二つである。その他に、あまり一般的でないが、遠く・中間・近くの三つに分かれた三重焦点眼鏡もある。上で説明した遠近両用眼鏡の長所・短所は、二重焦点、三重焦点、累進焦点のいずれににも当てはまる。かつて[いつ?]は二重焦点が主流だったが、近年[いつ?]は累進焦点が一般的である。

二重焦点と比べた累進焦点の長所は、見た目に遠近両用眼鏡であることが分からない点と、遠近の境い目で物の見える大きさや位置が急激に変わらない点、中間距離もはっきりと見ることができる点である。最後の長所は累進焦点の他に三重焦点にも当てはまる。累進焦点が一般的になる前に中間距離がはっきり見えるからといって二重焦点よりも三重焦点がよく売れたかといえばそんなことはなく、むしろ三重焦点はほとんど売れなかったとして、中間距離がはっきり見えることはあまり重要でないとする論もある。反対に短所としては、物の見える大きさが連続的に変化するため慣れるまでそれが視界の揺れや歪みとして感じられたり目が疲れやすく感じたりする点と、異なる度数を境い目なく繋げた代償としてレンズ側方の非点収差が増すためレンズ側方で見たときの鮮明さが二重焦点より劣る点である。

2018年2月、三井化学が発売した老眼鏡は、フレームに電子回路を内蔵しておりツルのセンサーに触れると液晶を埋め込んだレンズの遠近が切り替わる[3]。液晶による切り替えで、遠く専用の眼鏡から、二重焦点の遠近両用眼鏡に変わる。遠く専用の眼鏡に切り替えれば、下り階段など下目使いで遠くを見る場面での見づらさが解消される。


  1. ^ 宇山安夫 (1968). 眼鏡士読本. 医学書房. p. 41-43 
  2. ^ みるも. “必見!度数別・近視系のお客様への累進レンズのお薦めポイント”. 2016年11月30日閲覧。
  3. ^ 読売新聞 2018年5月2日 8面。


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