糸 糸の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 16:42 UTC 版)

フィラメント糸やクモの糸の様な紡績とは無関係な長細い形状の物も含めて糸と呼ぶ。英語では「縫い糸」は「スレッド」(: thread)、「紡ぎ糸」は「ヤーン」(: yarn)、 「たこ糸」「楽器の弦」は「ストリング」(: string)、「釣り糸」は「ライン」(: line)と呼び方が異なる。

糸の分類

原料による分類

糸は原料によって、綿糸麻糸毛糸絹糸レーヨン糸ナイロン糸ポリエステル糸アクリル糸などに分けられる[3]

形態による分類

フィラメント糸と紡績糸

長い繊維で構成されているフィラメント糸(filament yarn)と比較的短い繊維で構成される紡績糸(spun yarn)に大別される[4]

  • フィラメント糸 - フィラメント糸には化学繊維フィラメント糸や、繭から繊維を繰り出して作られた解舒糸(かいじょいと)がある[5]
  • 紡績糸 - 綿糸、麻糸、毛糸のほか、くず繭などの短い繊維から作られた絹紡糸、化学繊維紡績糸などがある[5]

フィラメント糸は光沢に優れ、毛羽はなく、細くて強いが、冷たい質感をもつ[4]。一方、紡績糸は毛羽が多いが、柔軟で温かい質感をもつ[4]

紡績糸はさらに製造方法により、リング糸、オープンエンド糸、和紡糸などに分けられる[4]

  • リング糸 - リング精紡機で製造された糸[4]
  • オープンエンド糸 - オープンエンド精紡機で製造された糸で、一度繊維を分離してから再度撚りを与えて糸にしたもの[6]。リング糸に比べて空隙が多く、太さむらは少なくできる反面、糸の引っ張り強度は落ちる[6]
  • 和紡糸 - 和紡精紡機で紡績された糸を和紡糸またはガラ紡糸という[4]

複合糸と混紡糸

複数の繊維素材を組み合わせた糸を複合糸(composite yarn)という[4]。複合糸の代表例にフィラメント糸を軸にその周囲を異なる短繊維で覆ったコア・スパンヤーン(core-spun yarn)がある[4]

一方、2種以上の異質繊維を混合あるいは調合して紡績した糸を混紡糸(blended yarn)という[4]

特殊な糸

特殊な糸として次のようなものがある。

  • 箔糸 - 金箔糸や銀箔糸など[5]
  • 撚り箔糸 - 金糸や銀糸など[5]

撚りによる分類

#糸の撚りを参照。

糸の撚り

短繊維の場合、撚(よ)りをかけないと僅かな力で滑り抜けてしまう[7]。そのためや化学繊維のフィラメントなどの一部の製品を除いて糸は繊維に撚りをかけて作られる[8]

ポリエステルのようにもともと長い繊維(長繊維)も2本以上の繊維をねじることで強度が増すため使われる。繊維を撚り合わせることで太く長くなり、様々な用途に使えるようになる。糸にするために、材料となる繊維を長く伸ばすことを「績む(うむ)」、撚り合わせて糸にすることを「紡ぐ(つむぐ)」という。

撚りの方向

糸には撚りの方向により左撚り(Z撚り)と右撚り(S撚り)がある[5]

撚りの強さ

糸には撚りの強さにより甘撚り糸、弱撚糸、並撚糸、強撚糸、特別強撚糸がある[5]

  • 甘撚り糸 - 撚りの少ない糸[5]
  • 弱撚糸 - 撚りが1メートルあたり300以下[5]
  • 並撚糸 - 撚りが1メートルあたり300 - 1000[5]
  • 強撚糸 - 撚りが1メートルあたり800 - 3000[5]
  • 特別強撚糸 - 撚りが1メートルあたり3000以上[5]

撚り合わせ

糸には撚り合わせにより片撚り糸(単糸)、諸撚り糸(諸糸)、撚り絡み糸または飾り糸に分けられる[5]

撚り絡み糸には、ネップヤーン、スラブヤーン、ループヤーン、鎖糸、笹縁(ささべり)糸、杢(もく)糸、壁糸などがある[5]


  1. ^ 被服材料 1988, p. 9.
  2. ^ 撚糸とは”. 日本撚糸工業組合連合会. 2013年12月28日閲覧。
  3. ^ a b 消費者のための被服材料 1988, p. 9.
  4. ^ a b c d e f g h i 松本 陽一「絹紡績糸の複合化に関する研究」(名古屋工業大学)
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 消費者のための被服材料 1988, p. 10.
  6. ^ a b 「モノづくり」と「研究と創造」”. 産業技術記念館. 2023年3月10日閲覧。
  7. ^ 消費者のための被服材料 1988, p. 10-11.
  8. ^ a b c d e f g h i j 消費者のための被服材料 1988, p. 11.
  9. ^ 被服材料 1988, p. 11.
  10. ^ 糸の太さを表す単位”. 日本化学繊維協会. 2023年3月10日閲覧。
  11. ^ a b 素材で異なる「番手」の話 糸の太さの目安を考える 「切」や「掛」についても解説”. 両毛繊維技術研究会. 2023年3月10日閲覧。
  12. ^ a b 英式番手と仏式番手”. 両毛繊維技術研究会. 2023年3月10日閲覧。
  13. ^ 消費者のための服材料 1988, p. 11.
  14. ^ JIS L 0101日本産業標準調査会経済産業省
  15. ^ JIS L 0104日本産業標準調査会経済産業省


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