真夏の夜の夢 (1935年の映画) 製作

真夏の夜の夢 (1935年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/05 08:22 UTC 版)

製作

オーベロンを演じるヴィクター・ジョリーの使われなかったテイク

オーストリア生まれの監督マックス・ラインハルトは映画の撮影時に英語を話せなかった。役者やスタッフにはドイツ語で指示を出し、それをウィリアム・ディターレが通訳した。この映画はラインハルトと作曲家のフェリックス・メンデルスゾーンがユダヤ系であるということでナチス・ドイツでは禁止された。

ミッキー・ルーニーがスキーをしていて片足を骨折したため、撮影スケジュールが変更になった。ルーニーの回顧録によると、ジャック・L・ワーナーは激怒してルーニーを殺し、もう片方の足も折ってやると脅したという。

この作品はオリヴィア・デ・ハヴィランドの映画デビュー作である[4]

公開と配給

上映中止

この時代の映画館は、ある映画を上映するという契約をしても、一定期間内であれば上映を取りやめにできるという権利を持っていた。上映中止は通常20館から50館程度であった。この映画は2,971館の中止という新記録を打ち立てた。契約交渉担当者の手違いのためであるという[5]

上映時間

本作は当初132分の映画であったが、一般公開にあたって117分に編集された。132分の完全版は1994年にケーブルテレビで放映されるまで見ることができなかった。最初に発売されたビデオは編集された版であったが、完全版がVHSで再発売された。のちにターナー・クラシック・ムービーズがクレディット前の序曲と終曲がついている版を復元して放映したが、これは1935年にロードショーで上映された後公開されたことのなかったバージョンであった。2007年8月にDVDが初めて発売された。この作品のみのDVDのほか、「シェイクスピア・コレクション」というボックスセットの一部としても入手できるようになった。

評価

本作は興行収入が悪く、批評は毀誉褒貶両方があったが、撮影、メンデルスゾーンの音楽の使用、ダンスは高く評価された。ジェームズ・キャグニーの演技は非常に好評であったが、映画批評家のリチャード・ワッツ・ジュニアはワーナー・ブラザースのキャスティングを批判した(ディック・パウエルはこの当時「ハリウッドのクルーナー」という位置づけで良い興行収入を叩き出していたが、自分はライサンダー役には全く向いていないことに気付いてやめることを申し出たものの、それができなかったという)[6]

1935年の『スペクテイター』で、グレアム・グリーンは封切り当時の毀誉褒貶半ばする批評について議論し、自分としては楽しめる映画と思ったということを書いている。グリーンはこれを原作戯曲に対して自分が愛着を抱いていないからではないかと推測している。グリーンは演技の特徴について「きちんとしたシェイクスピアの台詞回しと身ぶり」がないゆえに「フレッシュで生き生きしている」と評しているが、一方で映画の演出については批判的で、監督は「新しいメディアに確信を持って対処できない」ようであり、「ラインハルト氏は自分のアイディアが銀幕でどう働くか視覚化できていないため、映画の大部分はばかげたものになりそうなところで宙ぶらりんといったふうだ」と述べている[7]

今日では本作はおおむね良い評価を得ている。エマニュエル・レヴィは「ラインハルトがハリウッド・ボウルでのシェイクスピア上演を映画化したこの作品は大胆で印象的であったため、アカデミー作品賞の候補にもなったのだ[8]」と述べている。2016年9月2日時点で、ラインハルトの『真夏の夜の夢』については映画批評集計サイトRotten Tomatoesで89%の評価を獲得している[8]


  1. ^ a b H. Mark Glancy, “MGM Film Grosses, 1924-1948: The Eddie Mannix Ledger,” Historical Journal of Film, Radio, and Television , 12, no. 2 (1992), pp. 127-43
  2. ^ Charles W. Eckert, ed., Focus on Shakespearean Films (Prentice-Hall, 1972).
  3. ^ A Midsummer Night's Dream (1935): Trivia”. 2016年9月2日閲覧。
  4. ^ Brown, Gene (1995). Movie Time: A Chronology of Hollywood and the Movie Industry from its Beginnings to the Present. New York: MacMillan. p. 125. ISBN 0-02-860429-6 
  5. ^ Wallechinsky, David; Amy Wallace (2005). The New Book of Lists. Canongate. p. 50. ISBN 1-84195-719-4 , originally in Robertson, Patrick (2001). Film Facts. p. 221. ISBN 9780823079438. https://books.google.co.jp/books?id=4PnEvNC_F9oC&pg=PA221&lpg=PA221&dq=2,971+cancellations%2Bmidsummer&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=2%2C971%20cancellations%2Bmidsummer&f=false 
  6. ^ Study Guide for A Midsummer Night's Dream”. 2016年9月2日閲覧。
  7. ^ Greene, Graham (18 October 1935). “A Midsummer Night's Dream”. The Spectator.  (reprinted in: John Russel, Taylor, ed (1980). The Pleasure Dome. pp. 28–29. ISBN 0192812866 )
  8. ^ a b A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM (1935)”. 2016年9月2日閲覧。
  9. ^ Film Notes -A Midsummer Night's Dream”. www.albany.edu. 2022年11月27日閲覧。
  10. ^ Julist Sanders, Shakespeare and Music: Afterlives and Borrowings (John Wiley & Sons, 2013).
  11. ^ Paul Harris (2003年9月16日). “Review: ‘Shakespeare in Hollywood’”. Variety. 2016年9月2日閲覧。
  12. ^ ハリウッドでシェイクスピアを”. 加藤健一事務所. 2016年9月2日閲覧。


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