査読 プロセス

査読

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/27 10:09 UTC 版)

プロセス

一般的な学術雑誌の査読プロセスに関わる人物は、著者: author)、編集者 (editor)、および査読者 (reviewerrefereejudge) である。

著者 自分の研究成果を発表したがっている個人またはグループである。
なお、ほとんどの雑誌では投稿資格といったものを設けておらず、誰でも投稿できる。
編集者 学術誌以外を含めた雑誌の編集を行う職業を編集者と呼び、商業誌ではたいてい専任者がいる。
学会誌では大学教員が兼任していることが多い[要出典]
査読者 著者と同じ分野で研究活動を行っている人物の中から、編集者によって選ばれた人物である。
これも大学の教員などが務めることが多い[要出典]

以下、一般的な査読プロセスについて概説する。

投稿

著者は、自分の仕事を論文にまとめ、分野や内容の良し悪し、審査の厳しさなどを勘案して、投稿する雑誌を選び、編集部宛に送付する。現在ではほとんどの雑誌が電子投稿を受け付けており、電子投稿に限定している場合もある[5]。また、情報科学などの一部の分野では、研究の再現性を確保するため、研究に利用した実際のデータやプログラムコードの提出も求められる場合がある。

原稿を受け取った編集者は、著者に受け取ったことを知らせる (received)。これ以後の段階では、その論文は投稿中 (submitted) であるといわれる。ただし、この段階では論文が雑誌に掲載されるかどうかは全く決まっていないため、業績として書くことはできない。

また、『ネイチャー』などの一流雑誌では、受け取り時に編集者によるレビューが行われ、価値が低いと判断されるとこの時点で掲載拒否となり、査読に回される前に原稿が返却されてしまう[4]

査読者の選定

原稿を受け取った編集者は、その内容を評価できる(であろう)専門家から、ふさわしい査読者を探し依頼する。通常、査読者が誰であるかは、著者には知らされない[5][1]

査読者は、通常、著者と同じ研究分野で活動している研究者から1名以上[注 1]が選ばれる[4][5][6]。通常、著者との独立性が重視され、共同研究者・同僚等も避ける[4][5][6]。通常、その雑誌に過去に投稿したことがある人物や、引用文献として名前が挙げられている人物に依頼することが多い。

場合によっては、著者は査読者としてふさわしい人物、あるいはふさわしくない人物[注 2]の名前を挙げるように求められる[6]

ただし、査読者は、報酬は支払われず、時間的にも負担が大きいため、嫌がる人も少なくない。それゆえ、査読者になりうるのは自ら論文を投稿したことがあって、査読制度に理解がある人でなければならない。また、分野によっては研究者の数が非常に少なく、ほとんどが著者の利害関係者であったり、あるいは匿名性が維持できなくなってしまうこともある。

ふさわしい査読者が決定したら、編集者は査読者に締切などを記した依頼状とともに原稿を送付する。

査読

原稿を受け取った査読者は、内容について審査を行う。このとき、査読者同士も他に誰が査読者かは明かされず、完全に独立した立場で仕事を行う。

最終的には論文に対しての疑問点・改善点をまとめ、編集者に返送する。このとき、同時に原稿に対しての具体的な評価をつけることが求められる。たいていの場合は以下の4つの選択肢からどれかを選ぶように依頼される[9][10][11]

accept
論文をそのまま受理してよい。
minor revision
若干の修正の必要あり。正しく修正されれば、掲載しても良い。
major revision
大幅な修正の必要あり。著者による修正後、再度査読される。修正後の査読でもmajor revisionになると自動的にrejectされる場合もある[10](もっと基準が緩い場合もある[9])。
reject
掲載拒否すべきであり、同じ内容での再投稿も認めない。再投稿を認めるかどうかの指定がなされる場合もある[5]

"Willing Rejection"等、上記以外の分類をする著名論文誌もある[12]

採否の決定

編集者は、査読者の意見を元に、原稿を採用するかどうかを決定する。形式上、編集者の権限は独立であって、査読者の意見を受け入れる義務はないが、たいていの場合は査読者の評価がすべてmajor revision以下であれば掲載拒否になる。あまりに査読者間で評価が分かれていて採否決定が難しいときは、もうひとり別の査読者を選定することもある。また、内容的には優れているものの、分野的に雑誌内容にそぐわない場合などは、他の雑誌への投稿を勧めることもある。

結果の通知

編集者は、著者に採否を告げる。

採用の場合、通常、査読者のコメントが同時に返却される。たいていの場合、論文は多かれ少なかれ訂正を要求される。著者は示された疑問点・改善点にしたがって、原稿の訂正 (revise) を行い、編集者に返送する。もし訂正が十分でないと再び査読に回るおそれがあるため、この訂正は慎重に行うべきである。

不採用の場合は、掲載拒否 (reject) を告げる。この場合、査読者のコメントも返却されないことがある。不採用の場合はここでこの雑誌への投稿プロセスは終了であり、著者は他に原稿を採用してくれそうな雑誌を探し再投稿するか、あるいは発表を諦める。

受理

編集者は、著者による訂正が十分なものであると判断したら、著者に受理 (accept) を告げる。これ以降はその論文はほぼ発表したのと同じ価値を持ち、正式な業績にも印刷中 (in press) として書くことができる。

訂正が不十分であると思ったら、原稿は受理されず、再び査読に回される。

出版

受理された原稿は、編集者によって誌面用の構成に直され、著者による校正が行われた後、出版される。投稿から出版までの時間は分野により大きく異なり、数週間程度から1年を超えることもあり、雑誌によっては2年近くかかる場合もある。一方で近年は電子化が進んだことを利用して、速報性の観点から素早い査読プロセスを特色とする例[13]や、査読通過後に最終校正が済む前の論文をオンラインで公開する例[14]も見られる。

著者には自分の論文の部分だけを抜き出し、簡単な表紙をつけた別刷り(もしくは抜き刷り)が渡される。有料・無料は雑誌による。別刷りは就職・転職活動時などに同封する場合もあり研究者にとって重要であるが、提出はコピーでよい場合も多い。近年は論文のPDFファイルを著者に無料で送付し、別刷り購入はオプションという場合もある。


注釈

  1. ^ 通常2-3名程度で論文誌ごとに人数はほぼ決まっている。
  2. ^ 例えば、研究上の競争相手(competitor)など。

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