有賀敏之 有賀敏之の概要

有賀敏之

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/05 03:59 UTC 版)

世界経済論・グローバリゼーション論の、今日の日本における第一人者と目されている[1]

この間2016年から2019年にかけて、社会科学系大学院として学生定員数が日本最大、社会人大学院としても日本最大規模であった大学院 創造都市研究科(准教授以上の専任教員数30余名) [2]の研究科長の任にあった。

伯従父(いとこおじ、母の従兄)に作曲家の小林亜星がいる。小林の父、利政は青雲の志から小学校の代用教員を辞して郷里の新潟から上京した。そこで信州佐久出身の新舟塩子と入籍するが、利政が逓信省に職を得るまでの期間に、有賀の母方の祖父に当たる塩子の実兄、新舟勇司宅に、利政が転がり込む形で夫婦で居候していたという[3]。またその後に生まれた長男の亜星は、戦時下での信州佐久への学童疎開中に、従妹に当たる有賀の母修子と兄妹同然に過ごした。

経歴

長野県飯田市生まれ。同郷の太宰春臺(春台)菱田春草日夏耿之介に倣ってか「信州飯田の人」と自称[4]

京都大学経済学部卒業後、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(経済学)。京都大学経済学部で渡辺尚に、同大学院法学研究科修士課程(政治学専攻)で高坂正堯、経済学研究科博士課程(経済政策学専攻)において杉本昭七に師事。杉本昭七最後の高弟。

国際経済学・国際関係論・多国籍企業論の3つの学を駆使する独自の学際的研究で知られる。叙述における歴史的、空間的パースペクティブのスケール感を持ち味とする。

学位論文[5]に結実した、現代帝国主義論を脱構築的に論じた一連の研究で世に出[6]、その後ミレニアム前後に隆盛となった多国籍企業の国際的再編のミクロレベルでの検証に軸足を移す。近年は国内外の巨大都市の経済圏に着目した広域経済の実証研究に新境地を示している[7]

一連の中国都市経済研究の集成として、2012年12月に『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』が刊行された。

2022年6月、初の一般向けの著作として『中国の危機と世界 ―強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊』が刊行された。数ある反中国本とは一線を画し[8]、中国不動産バブルの崩壊から中華人民共和国の崩壊までを学際的な学術的分析を踏まえて予言した[9]同書は、刊行前の予約段階からAmazonの関連ジャンルにおいて第一位を獲得する[10]など、注目を集める。

同年11月に至り、あらかじめ同書に記されていたとおりに現実の歴史が動いて[11]、首都北京を始めとする中国各地の主要都市において政府のゼロコロナ政策に抗議する「白紙運動」と呼ばれる広汎な大衆運動が起こる。これに対して中国共産党は史上初めて、人民からの要求に対して譲歩する形で、翌23年1月初めにかけての期間に、都市封鎖・区域封鎖とPCR検査証明の義務付けを基礎とした、習政権の看板政策であるゼロコロナ政策の放棄に追い込まれた[12]

その結果として、感染者の実数が把握されていない状況下で水面下の感染爆発が続いており、中国当局が過小に見積もって公表している死者数と感染の実態との乖離が拡大している[13]。1月22日から始まった春節では近年にない大規模な国内外の移動が生じており、春節明けの情勢の緊迫化が懸念されている[14]

著書

単著

  • 『グローバリゼーションの政治経済学』(同文舘, 1999年)
  • 『グローバリゼーションの政治経済学 第二版』(同文舘, 2002年)
  • 『グローバリゼーションの政治経済学 第三版』(同文舘, 2005年)
  • 『グローバル企業再編』(同文舘, 2007年)
  • 『中国日系企業の産業集積〔上海・長江デルタ・天津篇〕』(同文舘, 2012年)
  • 『中国の危機と世界』(同文舘, 2022年)

共著

  • 『岐路に立つグローバリゼーション―多国籍企業の政治経済学』(ナカニシヤ出版, 2008年)

共編著

  • 関下稔)『東海地域と日本経済の再編成―地域経済、グローバル化、産業クラスター』(同文舘, 2009年)

  1. ^ Amazon、著者紹介ページ
  2. ^ 創造都市研究科”. 大阪市立大学. 2023年1月23日閲覧。
  3. ^ 「徹子の部屋」(テレビ朝日)2017年3月2日放送分。
  4. ^ 『東海地域と日本経済の再編成』2009年, 奥付
  5. ^ 『グローバリゼーションの政治経済学』1999年
  6. ^ 長田浩「グローバリズムの進展とそれへの対抗」(関東学院大学『経済系』第216集) 2003年47,50ページ。ここでは有賀の1990年代における理論的貢献が当時の欧米の研究水準に対しても先行していたか、少なくともいくつかの重要な論点については同時発見であったことが示されている。
  7. ^ 『東海地域と日本経済の再編成』2009年 第1章・第4章ならびに,吉田健太郎・石井誠行「現代中国における日系企業の経営課題(『立正経営論集』第43巻第1・2号)2011年66,102ページ。
  8. ^ 『中国の危機と世界』同文舘出版、6月15日 2022、iv頁。 
  9. ^ 『同上』同文舘出版、6月15日 2022、ix-xii頁。 
  10. ^ Amazon、「中国」カテゴリ書籍の「売れ筋ランキング」「新着ランキング」より。
  11. ^ 『前掲書』同文舘出版、6月15日 2022、48, 175-176, 203-205頁。 
  12. ^ 死者の激増と、年明けそして春節にかけての「中国の危機」”. 中国政治経済総合note: 有賀敏之(あるがとしゆき)大阪公立大教授 公式I. 2023年1月23日閲覧。
  13. ^ 同上”. 同上. 2023年1月23日閲覧。
  14. ^ 春節明けの中国の正念場”. 同上. 2023年1月23日閲覧。


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