日本の特許制度 特許権

日本の特許制度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 20:05 UTC 版)

特許権

特許すべき旨の査定又は審決の後、所定の期間内に特許料を納付することにより、特許権の設定登録が行われて特許権が発生する(66条)。

この特許権は、特許発明を独占排他的に実施できる権利である(68条)。つまり自らの発明の実施を独占でき、許諾等をしていない(権原のない)第三者の業としての実施を排除できる。そのため、このような第三者の実施に対しては、その違法な実施行為、つまり特許の侵害行為を中止させる権利(差止請求権、100条)およびそのような侵害行為により発生した損害の賠償を求める権利(損害賠償請求権、民法709条)を行使することができる。

特許権の存続期間は、特許査定後、特許として設定登録(66条)されたときに始まり、原則として出願日から20年である(67条1項)。なお、農薬取締法または医薬品医療機器等法に規定される特定の行政処分を受けたことで、特許発明を実施できる期間が短縮された場合は、最大5年を限度として存続期間が延長されることがある(67条4項、特許法施行令2条)。

特許権の権利が及ぶ範囲は、特許発明の技術的範囲と呼ばれる[14][15]

特許法70条1項は、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定している。特許発明の技術的範囲、すなわち、特許権の権利範囲を判断する基準となるのは、当該特許発明に係る特許公報の特許請求の範囲に記載された内容である。

一般に、特許請求の範囲に記載された内容は、当該特許発明の権利範囲を広く確保するため、単に文理的に読み取るだけでは理解することが出来ないことが多い。特許発明の内容が理解できないと、特許権がいかなる権利を有するのか確定することが出来ず、特許権の及ぶ範囲が規定し得ないこととなり、不都合である。そこで、特許法では、「特許請求の範囲の記載に『基づいて』」と規定して、特許請求の範囲に記載された内容を単に文理的に判断するのではなく、特許発明を説明する明細書及び図面の内容も参酌して、特許発明の技術的範囲を定めるよう規定している(同条2項)。

また、均等論によって、特許請求の範囲に記載された範囲を超えて特許発明の技術的範囲が認められることがある。

特許発明の技術的範囲について、特許庁に判定を求めることも出来る(特許法71条)。なお、判定は鑑定的なものであるので、判定で示された内容に法的な拘束力はない。


  1. ^ コンピュータなどの物理的装置やCPUなどの物理的要素をいう。
  2. ^ ここでいう「出願日」は国内優先権出願、パリ条約(第4条C(4)、同条A(2))による優先権出願を主張した場合には、その基礎とした出願日(36条の2第2項)。さらに2つ以上の優先権の主張を伴う特許出願の場合は、それらのうち最初の出願日と認められたものを指す(36条の2第2項かっこ書)。
  3. ^ 外国語書面出願が出願の分割による子出願(44条第1項、詳細後述)、実用新案登録や意匠登録からの変更出願(46条)又は実用新案登録に基づく特許出願(46条の2第1項)の場合は、この期間が経過した後であっても、これらの出願を行った日から2月以内なら、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出できる(36条の2第2項)。
  4. ^ 図面は除かれる(36条の2第5項かっこ書)図面について日本語の翻訳文を提出しなかった場合、出願が取り下げたものとみなされず、ないものとして(すなわち、願書に添付しなかったとして)取り扱われる。
  5. ^ 弁理士など知財業界では、出願審査請求を単に「審査請求」と呼ぶことが多いが、法律上、単に「審査請求」といった場合は、行政不服審査法に基づく請求(行政不服審査法3条、5条等)を指す。
  6. ^ ただし、分割出願の子出願、実用新案登録や意匠登録からの変更出願、実用新案登録に基づく特許出願の場合、(原出願日ではなく分割等を行った方の)新たな出願日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる事が定められている(48条の3第2項)。これは、「出願日」は遡及効により原出願日になってしまう為逐条20版(p208)、分割等を行った時点ですでに3年が過ぎている事もありうるため、出願審査請求を可能にするためである。
  7. ^ なお、出願審査の請求期間は、2001年9月30日以前の出願については、出願日から7年以内であった。
  8. ^ なお、出願が取り下げられた旨が特許公報に載ってしまうので、これを見た第三者が出願が取り下げを信じてその出願発明を実施(若しくはその準備を)してしまう事が起こりうる。しかし、その後、出願人がこの期限延長制度を用いて出願審査請求を行った場合、実際には取り下げにならず、その後特許が成立してしまっうことがある。こうした場合、上記の発明実施(準備)者は、所定の条件を満たせば、通常実施権が与えられ(審査請求期間徒過後で救済が認められるまでの間の実施による通常実施権、48条の3第8項)、権利侵害を回避できる。
  9. ^ 平成23年8月1日から当面の間
  10. ^ 調査業務実施者
  11. ^ 検索者または特許サーチャーとも呼ばれる。
  12. ^ 検索指導者ともいう。
  13. ^ 実務上、明細書等の補正のうち、当初明細書等の範囲内にない事項のことを新規事項new matter)という。
  14. ^ "特許権が及ぶべき範囲(特許発明の技術的範囲)" 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許戦略計画関連問題ワーキンググループ. (2003). 特許請求の範囲と明細書の役割について.
  15. ^ "特許発明の技術的範囲とは、特許権の効力が及ぶ客観的範囲として一般に理解されている概念です。" 湘洋内外特許事務所. (2018). 特許発明の技術的範囲とは、何ですか?.





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「日本の特許制度」の関連用語

日本の特許制度のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



日本の特許制度のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの日本の特許制度 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS